昨夏に米国で流行したはしかの感染源が、野球の遠征試合に出場するため訪米した日本人の少年(12)だったことが、米疾病対策センター(CDC)の報告書で21日、分かった。
 
日本では未成年者のMMRワクチン接種率が低いのに対し、米国は接種を徹底しており、はしかの流行は激減している。CDCは今回の発生を「日本がウイルスの感染源」と断定。世界保健機関(WHO)にも報告した。
 
CDCによると、この少年は昨年8月、東京から航空機でミシガン州デトロイトに入国。ペンシルベニア州で開かれたリトルリーグ・ワールドシリーズに参加した。少年が現地でのどの痛みや発熱、発疹などの症状を訴えたことから、はしかとわかり、隔離された。
 
その後、飛行機で少年の前列に座っていた女性(53)、デトロイト空港勤務の男性(25)、試合を見学に訪米した別の少年(12)に加え、ペンシルベニア州で少年に会ったビジネスマン(40)と、男性が訪れたテキサス州の男子大学生2人が2次感染していた。感染者はすでに全員回復している。
(日本の野球少年が感染源 米で流行のはしか)


日本は、かねてから「麻疹(はしか)輸出国」として、海外から問題視されているということが指摘されています。この背景として、定期接種世代の時点で使用されていた、MMRワクチン(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹の三種混合生ワクチン)の副反応の影響による接種率の低迷や、ワクチンを接種していても抗体価が低下して発症した(1度ワクチン接種を受けたが、抗体価が低下し、発症した場合など)、といったことがあると考えられます。

2006年4月からは、麻疹風疹混合生ワクチン(MRワクチン)の2回接種(第1期は生後12〜24か月の間、第2期は5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間)が開始されています。そのため、今後は麻疹発生数はさらなる減少に向かうと期待されますが、その実際の予防効果が出るまでには、さらに数年を要することも予想されます。

上記のように、飛行機に一緒に乗り合わせたというだけでも感染することがあります。というのも、麻疹の特徴として空気感染する点があげられるからです。空気感染は、病原微生物を含む飛沫核(直径5μm以下)で長時間空中を浮遊し、空気の流れにより広く伝播されます。結核菌や麻疹ウイルス、水痘ウイルスなどがこの形をとります。

また、麻疹ウィルスはヒトに対する感染力が、きわめて強いといわれています。ですので、感染=発症という経過をとる例が多いと考えられています。ゆえに、「麻疹の既往がない」「予防接種を受けていない」「周囲に麻疹患者がいた」という人は、要注意なわけです。

麻疹は、潜伏期は10〜12日であり、感染可能期間は前駆期と発疹出現後の5日間くらいであり、合計9日間であるといわれています。そのため、学校保健法により麻疹は解熱した後3日を経過するまで出席停止となります。

他にも、以下のような点について重要なポイントがあると思われます。
上記のように、麻疹ウィルスはヒトに対する感染力が、きわめて強いといわれています。そのため、こうした心当たりがあり「もしかして、麻疹に罹ったかも」と思われる方は、病院に電話されてから受診されることが望ましいと考えられます。

なぜなら、待合室に抗体価の低下した人がたまたまいて、その人たちに感染させてしまう恐れがあるからです。電話をした上で、指示を仰いでから受診した方がいいかと思われます。病院側の配慮として、免疫力の低下している患者、新生児などは昼休みの前後など患者が途切れる時間帯に予約で診療を行う、といった方策をとることも重要であると思われます。

兄弟姉妹や家族が感染症にかかったとき、潜伏期間と最初の症状、受診の方法について詳しく説明を受けることも重要であり、同様に保育園や幼稚園、学校などでどのような病気が流行っているのかなど、情報を共有し、感染を広めないことも重要です。

最近では、外来に「発疹が出ていたり,感染する病気の方は受付にお知らせください」という掲示が出ている所や、流行期に入ったら潜伏期間・症状・合併症などに関するパンフレットが配布されることもあると思われます。

患者さんサイドから言えば、こうした情報をしっかりと集め、感染予防や予防接種を行うことが重要であると思われます。

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