非浸潤性乳管癌(DCIS)と診断された女性の多くが、再発や浸潤性癌となるリスクは低いにもかかわらず、自身の予後について強い不安を抱いていることが、医学誌「Journal of the National Cancer Institute」オンライン版で2月12日に報告され、同誌印刷版2月20日号に掲載された。米国立癌研究所(NCI)によると、DCISは乳管内に異常細胞が生じるもので、乳管の外には浸潤しない。米国では、2006年に診断された乳癌の20%以上、約6万2,000例がDCISであったという。

米ダナ・ファーバー癌研究所およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院(いずれもボストン)の癌専門医Ann Partridge博士が率いた今回の研究は、新たにDCISと診断された女性487人を対象としたもの。研究の結果、被験者の約39%が、5年以内に浸潤性癌を発症するリスクが中程度以上あると考えており、53%がDCISに関する侵入的(intrusive)または回避的(avoidant)思考があると回答した。被験者の34%が乳腺摘出術を受けており、50%が放射線治療、43%が乳癌リスクを軽減するためのタモキシフェン投与を受けていることも判明した。

患者が自身の健康リスクについて著しく誤解している場合、治療に関するインフォームド・デシジョン(情報を受けての意思決定)に関与する能力が損なわれるのは間違いないと研究著者らは述べている。このほか、うつ状態と誤ったリスク認識との間に強い関連がみられることも明らかになった。

Partridge氏によると、現在の医学では、再発や浸潤の可能性のある乳癌とない乳癌とを区別することができないため、DCISの治療不足や過剰治療を予測するのがますます困難になっているという。別の専門家は、マンモグラフィーによってさらに小さなDCISを検出できるようになっているため、過剰治療の傾向があると指摘しており、DCISの診断基準として直径1cm以上の病変に限り生検を実施することを提案している。

同誌に掲載された別の研究では、早期乳癌と診断された後、5年以上生存した高齢女性は、乳癌と無関係の原因により死亡する可能性が高いことが示された。対象となった乳癌患者約5,000人のうち、4年の研究期間中に計256人が死亡したが、死亡例の60%は乳癌によるものではなかったという。
(非浸潤性乳管癌の予後を不必要に心配しすぎ)


乳癌とは、乳房にある乳腺組織に発生する悪性腫瘍のことです。現在、年間約35,000人の女性が乳癌に罹患しており、女性の20人に1人が乳癌に罹患する計算となります。女性が罹患する悪性腫瘍の第1位が乳癌です。

乳癌罹患者数は1970年の約3倍で、食事内容の変化(脂肪摂取量の増加や初経年齢の低年齢化などで)今後も増加し、2015年には年間約48000人の女性が乳癌に罹患すると予測されています。年々増加の一途をたどり、現在、年間約1万人が死亡しています。

こうした背景もあり、「働き盛りの女性の罹患する癌の中で乳癌は罹患率,死亡率とも第1位」、さらに「手術などにより乳房の外見を損なう恐れがある」といったこともあり、患者さんが恐れる理由も分かると思われます。

乳癌は、まず浸潤巣の有無から非浸潤癌と浸潤癌に大別されます。

非浸潤癌は,細胞の形態から非浸潤性乳管癌と非浸潤性小葉癌に分類されます。一方、浸潤癌は全乳癌の80%くらいを占める浸潤性乳管癌と頻度の低い特殊型に分類されます。

乳管癌とは、乳管を構成する乳管上皮細胞より発生する癌です。この乳管上皮細胞由来の癌細胞が、乳管や小葉内に留まっている状態が非浸潤性乳管癌であり、間質浸潤を伴ってくると浸潤性乳管癌となり、悪性度が高いと考えられます。

非浸潤性乳管癌の特徴としては、以下のようなものがあります。
非浸潤性乳管癌と診断される頻度は、スクリーニングマンモグラフィーが広く使用されるようになって以来、特にアメリカでは顕著に高くなっているそうです。触知可能な腫瘤として発見される症例はきわめて少ないため、ほとんど(80%程度)はマンモグラフィー単独で診断されている、とのことです。

乳がん以外の原因で亡くなった女性を解剖したアメリカの報告では、6〜16%の人から非浸潤性乳管がんが見つかった、ということもあり、非浸潤性乳管癌は浸潤しないまま、一生を終える場合もあります。

ただ、非浸潤がんが見つかっても、将来に浸潤するかどうかを見極める手立てがないため、原則として手術となります。以前は、非浸潤性乳管癌に対する治療法は、多くが乳房切除術であったそうです(切除術後の局所再発と遠隔再発をあわせた再発率は、1〜2%)。

ですが最近では、浸潤性乳癌に対して乳房への放射線を併用する乳房温存手術が成功したことと同様に、この温存方法が非浸潤癌にも拡大されつつあります。乳房温存手術+放射線療法が行われているところもあるそうです。

たしかに、「乳癌です」といわれて平静でいられる人は少ないでしょうが、過度に心配になりすぎず、リスクや治療成績など、しっかりと見極めた上で手術に臨まれることが重要であると思われます。

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