病気腎移植に絡み宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が診療報酬を不正請求したとされる問題で、愛媛社会保険事務局(松山市)は25日、病院側の弁明を聴く聴聞会を開いた。

厚生労働省と社保局は、病気腎移植が省令で禁止された「特殊医療」に当たると判断しており、同病院に保険医療機関の指定を取り消す方針を伝える。病院側は、病気腎移植の正当性を主張するとみられる。

午後には同病院の万波誠医師(67)ら2医師に対する聴聞会も開かれ、保険医登録の取り消し方針が伝えられる。万波医師の代理人が出席する可能性が高いという。万波医師は、宇和島徳洲会病院で11件の病気腎移植を実施。病院側はこれまで記者会見などの場で、患者を救うためで治療として有効だと主張している。

病院の聴聞会で社保局は、病気腎移植のほかにも、手術前に文書による患者への説明がなかったケースなど、問題点を指摘する。

保険医療機関指定と保険医登録の取り消し期間は原則5年。社保局は聴聞会後、処分案を愛媛地方社会保険医療協議会に諮った上で正式に処分を決める。
(病腎移植の万波医師、聴聞会で正当性主張)


国内では実験的な側面がクローズアップされ、批判されることが多く、その上に「病院に対する保険医療機関指定と、万波医師への保険医登録取り消し」という処分まで下される結果になってしまっています。

その一方で、アメリカの移植外科学会では、移植を進めてきた万波誠医師らの論文に高い評価を与え、表彰されるという全く異なった評価になっています。アメリカ移植外科学会会長であるゴーラン・クリントマム氏は、「今までにない勇気のあることで、私たちに新たな可能性を与えた」と評し、そのフロンティア精神とも言うべき試みに賛辞を送っています。

そもそも病気腎移植とは、疾患を持つドナーの腎臓をレシピエントへ移植するものであり、海外ではレストア腎移植と呼ばれます。たとえば、腎癌患者からの病腎移植などを行っています。

どうして腎癌患者がドナーとなりうるのかというと、再発のリスクを考えて、片側腎の全摘出を望む人が多いからです。4cm以下(T1:腫瘍の最大径が7cm以下で腎被膜を越えることなく腎に限局)の癌が見つかった腎臓から、癌の組織だけを部分切除して腎臓を温存した場合(部分切除)、癌が再発する割合は5%前後であるといわれています。

腎臓は人体に左右一対あり、片方を摘出しても機能は失われないため、多くの患者さんは、「部分切除より再発リスクの低い腎臓摘出を」と希望するわけです。

一方で、「どうして癌が残存して、腎癌になる可能性があるのに、どうして移植するのか」とレシピエント側で考えると、以下のようなことがいえると思われます。
移植待機中の透析患者の年間死亡率は平均16%程度であると考えられています。この数字は、60歳以上だと25%にも達します。多くは、透析による合併症によって亡くなってしまいます。

透析患者さんの死亡原因を見ると、脳卒中や心筋梗塞、心不全などの心臓血管系の死亡が46.3%が最多であり、次は感染症の18.8%、悪性腫瘍の9.0%と続いています。

故に、腎癌の再発リスクと移植待機中の死亡リスクを天秤にかけ、その上で病気腎移植を望む、ということになるのでしょう。しかも、透析から解放され、生活の質(QOL)を向上できる、という利点もあります。

血液透析の場合、一般的には毎回、最低4時間を必要とします。さらに、腎機能が廃絶している場合は、週に3回程度、透析療法が必要となり、多くの時間を治療に用いなくてはならないという状況になります。

現在、透析患者は約28万人おり、毎年新たに約3万人が透析導入を余儀なくされています。その原因の第一位は、糖尿病性腎症による腎不全です。今後もさらに増え続け、腎移植を望む声は高まっていくことと思われます。病気腎移植の芽を潰してしまっている国内の現状が、果たして医療界や患者さんにとって歓迎すべきものなのか、もう一度しっかりと考え直す必要があるのではないでしょうか。

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