ジェネリック薬は研究開発に巨額の費用がかかる先発薬に比べ価格は3〜8割も安い。ただ、日本では医薬品全体に占めるシェアは2006年に数量ベースで17%にとどまっており、6割近くに達する欧米に比べ際立って低いのが実情だ。

国は医療費削減を進めるため、このシェアを12年までに30%に引き上げる目標を掲げている。普及促進の「仕組みづくり」として注目されるのが、調剤薬局などで薬をもらう際に必要な医師が作成する処方箋の様式変更だ。

国は06年に「後発薬への変更可」という欄をつくり、医師が署名・捺印した場合は、薬局がジェネリック薬を処方できるようにした。ただ、ジェネリック薬の使用に抵抗がある医師が多く、署名・捺印は進まず、「大騒ぎした割にほとんど実態は変わらなかった」(長野健一・医薬品工業協議会理事長)という。

このため、国は4月から署名欄の表記を「ジェネリック薬変更不可」に変えることにした。こうすれば、よほどの理由で変更を認めないケースを除けば、「今度こそ変更を認める処方箋が増えるのでは」(同)と期待されている。

様式変更をにらみ、ジェネリック薬メーカー各社も準備に余念がない。もっとも、各社の思惑通りに普及が進むかは不透明だ。

処方箋の様式変更についても、「ジェネリック薬への変更不可のサインがない処方箋が増えたとしても、どれだけの患者が薬剤師の説明を受けて使用を選ぶかはわかならい」(医薬品工業協議会)との懐疑的な見方は多い。

大手の新薬メーカーからは「日本人の先発薬への信頼はそうそう揺るがない」との声も聞かれ、“ブランド信仰”も普及の壁となりそうだ。
(メーカーは営業強化 ジェネリック薬、普及なるか)


ジェネリック(後発)医薬品とは、製造方法などに関する特許権の期限が切れた先発医薬品について、特許権者でない医薬品製造企業がその特許内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ医薬品を指します。

先発医薬品の特許が切れるとゾロゾロたくさん出てくるのでゾロ等と呼ばれていたが、商品名でなく有効成分名を指す一般名(generic name)で処方されることが多い欧米にならって、近年、「ジェネリック医薬品」と呼ばれるようになりました。

厚生労働省は新薬と成分は同じだが価格が安い後発医薬品の普及を目指し、2008年春にも薬の処方せん書式を変更する方針を固めている、と発表していました。さらに、ジェネリック医薬品を一定数量以上、品ぞろえした薬局には調剤報酬を上乗せする検討もなされていました(具体的には現状の1回420円の調剤基本料に加算する、というもの)。

上記の通り現在は、まだまだ処方箋は新薬が基本です。2006年度の診療報酬改定で、「後発品への変更可」という欄が追加されました。欄に、医師の署名があれば、薬局などで後発医薬品の処方が増えると期待されていたわけです。ですが、実際に後発医薬品が処方されたケースは全体の1%未満の約9,500件にとどまったそうです。普及効果は、あまりなかったと考えられています。

その背景として、以下のようなものがあります。
新薬の特許は、おおむね20〜25年で、その間は開発した製薬会社の利益が守られます。ですが、新薬の開発費は数百億円とも言われ、世界の巨大製薬会社との開発競争が激化していることから、大手製薬会社には、「国は後発医薬品の普及よりも、新薬に高い薬価を認め、画期的な新薬の開発を促進するべきだ」という意見も根強い状態です。

その一端として、アメリカの医科大学や医学部、および教育病院の学科長の半数以上が製薬会社と金銭的に結びついていることが、米国医師会誌「JAMA」10月17日号で報告されています。

この報告を行ったマサチューセッツ総合病院およびハーバード大学医学部医療政策研究所のEric Campbell氏による研究では、125の医科大学・医学部および15の大規模教育病院の学科長688人を対象に調査を実施し、459人(67%)が回答。その結果、60%が企業と個人的な関係をもち、有給で顧問を務める(27%)、科学諮問委員会の一員である(27%)、企業の創設者である(9%)、役員ないし幹部を務める(7%)、役員会のメンバーである(11%)、有給で講演を行う(14%)などの回答がみられたそうです。こうした背景もあり、現場の医師は製薬会社の意向を無視できない、ということも言えるでしょう。

ジェネリック(後発)薬に移行するには、こうした製薬会社との関係性も障壁となっています。また、薬剤師との関わりが少ない日本での医療のあり方(医師との相談はあっても、薬剤師と相談する場面は少ないと思われます)や、開発される先発薬への信頼性なども問題となると考えられます。

ふくらみ続ける医療費の問題は、少子高齢化に伴い、今後も議論されつづけるでしょう。その中で、ジェネリック(後発)薬への移行は不可避であると思われます。

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