この春、念願の一戸建てを郊外に購入し、引っ越してきたO・Tさん(41)。10年来のスギ花粉アレルギーに悩まされてきた彼は、花粉が飛ぶ時期は完全防備で乗り切っていました。

5月に入り、ようやく悩ましい季節から抜け出したと思っていましたが、それからまもなくして、なぜか身体のだるさに襲われます。

数日後、だるさもすっかり取れたO・Tさんは、お気に入りの河川敷を通って元気に出勤しますが、会社に着くとなぜか突然くしゃみや鼻水が出て、喉の奥がヒリヒリと痛むように。その後も気になる異変が加速していきました。具体的には、以下のような症状が現れていました。

1)倦怠感
河川敷を通い、会社に着く頃に、何故か風邪を引いたときのような倦怠感を感じていました。
2)くしゃみ・鼻水
倦怠感の他に、くしゃみや鼻水が生じていました。
3)喉の痛み
上記の症状に加え、喉の痛みを感じていたため、「風邪でも引いたのか?」と思っていました。
4)皮膚の赤み
会社から帰宅すると、妻から「首の辺りが赤い」と指摘されます。見てみると、下顎の直下辺りの頸部に、紅斑が生じていました。
5)めまい
会社の健康診断で「血糖値が高く、高脂血症気味」といわれ、ダイエットを開始しました。食事量を制限し、ジョギングを開始しました。河川敷を走り始めると、急に足下がふらつき、めまいを感じて、その場に座り込んでしまいました。
6)呼吸困難
座り込むと、今度は呼吸困難が起こり、息が吸えないような状態になってしまいました。
7)全身の腫れ
呼吸困難と同時に、全身の皮膚が赤く腫れ、その場に倒れてしまいました。

こうした症状が現れ、O・Tさんは病院に運ばれました。彼に起こった状態は、以下のようなものでした。
O・Tさんは、アナフィラキシーショックという状態に陥ってしまいました。
アナフィラキシーとは、外来物質の侵入が原因となり、それに対する急激な生体反応の結果、循環器系や消化器系、呼吸器系、皮膚などの広範な臓器が障害を受ける状態を指します。これが重篤となり、循環・呼吸不全に陥る場合をアナフィラキシーショックといいます。

もともとは、IgE抗体による即時型アレルギー反応によって起こるものとされていましたが(狭義としては、こちら)、同様の症状・経過をとるそれ以外の病態(こちらは、アナフィラキシー様反応と呼ぶこともある)も、広義のアナフィラキシーショックと呼ぶようになっています。

簡単に言ってしまえば、劇症型のアレルギー反応であり、入ってきた異物に身体が過剰に反応し、あらゆる場所が腫れ上がってしまい、最悪の場合、呼吸困難で死に至ることもあります。

♂)秧勝↓気管支喘息様症状、7谿議祺爾典型的な症状であり、原因となる食物、薬剤、ハチ毒などの抗原侵入後、数分以内(抗原侵入5分以内)に症状が発現することが多いです。食物摂取後の体操や、ジョギングなどの運動が誘発する場合もあるため、こうした情報をしっかりと鉢合わせた周囲の人が伝えることが救命において重要です。

初期症状として、皮膚の痒み、口唇や手足のしびれ感、四肢の冷感、心悸亢進、喉頭違和感、悪心、腹痛などが起こります。さらに進展して、ショック症状を呈すると、顔面蒼白、喘鳴、呼吸困難、意識消失、血圧低下などをきたし、非常に危険な状態になります。

O・Tさんの場合、スギ花粉症に加え、新たにイネ科の花粉症になっていたことが原因となりました。河川敷などに多いカモガヤなど、イネ科の植物はスギ花粉が治まる5月頃から花粉をまき散らします。O・Tさんが訴えた、倦怠感、喉の痛み、皮膚の赤みなどは、そのイネ科の花粉に反応したために起こっていました。

ただ、これだけがアナフィラキシーショックを起こした原因ではありません。実はパンに使われている小麦も、イネ科の植物です。でも彼の小麦アレルギーは軽く、普段は特に症状は出ませんでした。

しかし、この日はパンを食べた上に、ジョギングをしていました。運動すると、呼吸が激しくなり、吸い込む花粉の量も増えます。さらに激しい運動をすることで、アレルギー反応が激化することが指摘されています。大量のイネ科の花粉、小麦の摂取、運動、この3つが重なり、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性が非常に高まっていました。結果、激しいアレルギー反応を起こし血圧が低下し、呼吸困難、そして体中が真っ赤に腫れあがってしまったと考えられます。

診断・治療は緊急を要します。何が外界から原因物質として入ったかを確かめ、各種症状から即座に診断し、すぐに治療を行います。
1)気道の確保、および呼吸の管理
2)循環状態の維持、および改善:輸液の開始とともにエピネフリンの反復注射を行う。必要であればドパミン注を追加
3)アナフィラキシー反応の抑制、終息:即効性ステロイド剤の大量投与

こうした処置をただちに行う必要があります。

O・Tさんは幸い、すぐに病院に運ばれ、一命をとりとめました。スギ花粉症の人は、その他の花粉アレルギーを始め、様々なアレルギーを引き起こす可能性が高いといわれています。自身がどのようなアレルギーをもっているのか、病院などで調べて知っておくことも重要であると思われます。

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