福岡市博多区のさく病院(朔寛院長)で、入院中の男性(68)に、血液製剤と間違えて麻酔薬を点滴し、男性は8日後に死亡していたことが27日、分かった。病院は死亡と点滴の因果関係は分からないとしながらも「投薬ミスは明らか。取り返しのつかない事態を招き、申し訳ない」として、遺族に謝罪。
 
病院によると、男性は直腸がんで、人工肛門をつける手術を受けた翌日の今月14日、術後管理のための血液製剤を点滴されるべきところを、誤って全身麻酔薬を点滴された。男性がいびきをかき始めたため、不審に思った家族が病室の看護師に告げ、投薬ミスが発覚。男性は意識が戻らず、22日夜に死亡した。
 
病院によると、医師は血液製剤の点滴を指示しており、医師の指示後の過程でミスがあったとみられるという。同病院は病床数が172、内科や外科、泌尿器科などがある。
(麻酔薬を誤って点滴、男性死亡)


S状結腸との境界部(直腸S状部という)下縁から肛門管上縁(恥骨直腸筋上縁)までを直腸と呼び、直腸に発生する癌(ほとんどが腺癌であり、稀に扁平上皮癌)を直腸癌といいます。癌以外の悪性腫瘍(肉腫など)はきわめて稀です。

大腸癌の中では、直腸癌が大腸癌全体の約40%と最も多く、次いでS状結腸癌に頻度が高くなっています。男性に多いといわれ、40歳以上に多く、50〜60歳台に最も高率であるとのことです。

食生活と深い関連があると指摘されており、大腸癌の発生率は西欧食の特徴である高脂肪・高蛋白、かつ低線維成分の食物と正の相関関係にあると考えられています。

その理由として、高脂肪・高蛋白食は、消化管を通過するうちに胆汁酸や腸内細菌などによって、発癌性をもった物質に転換されると言われ、一方、高繊維食は糞便量を増やし、その大腸内通過を速めるために発癌率が低いと考えられています。

症状としては、肛門に近いため、早くから症状が出現します。排便時の不快感や糞便の狭小化や通過障害、テネスムス(炎症などにより直陽壁が刺激され、直腸内に便塊がないのに持続的に便意のある状態であり、しぶり腹ともいう)、粘血便などが見られます。

癌の多くはポリープを経由して発生しますが、表面型と呼ばれる非隆起型病変から発生するものもあります。腺腫から癌に発育・伸展するためには、複数の遺伝子異常の蓄積が必要であることも明らかになっています。

必要となる検査や治療としては、以下のようなものがあります。
早期発見のスクリーニングとして便潜血反応があります。他にも、直腸診が重要であり、腫瘤の位置、大きさと辺縁の状態、表面の性状(隆起,陥凹)、硬さや圧痛の有無などを調べます。

また、内視鏡検査が行われ、生検により組織的診断可能であり、確定診断に有用です。大腸癌では病変が多発することも多く、併存する病変の発見に有用です。

腫瘍マーカーではCEAが上昇してきます。CEAは、大腸癌全体の陽性率は40〜60%ですが、進行するにつれ高くなり、肝転移,肺転移の指標ともなります。

腹部超音波検査は、肝転移やリンパ節転移の有無に有用であり、CT検査では肝転移やリンパ節転移の診断、隣接臓器への浸潤、直腸癌の再発、骨盤内進展の程度を知るのにも有用です。

鑑別としては、血便・便通異常をきたす疾患が重要です。潰瘍性大腸炎やCrohn(クローン)病、腸結核、虚血性大腸炎、悪性リンパ腫などが挙がってきます。40歳以上の成人で、血便を伴う便通異常・鉄欠乏性貧血を認めたら、大腸癌を疑って精査を行うことが重要です。

治療としては、粘膜内に限局している場合には、内視鏡的ポリペクトミーが行われることがあります。ただし、粘膜下層に浸潤している疑いがあっても軽度であると判断した病変で、2cm未満の大きさであれば、内視鏡的摘除を行うこともあります。根治手術は、原病巣の切除とリンパ節の廓清が行われます。

行われる術式としては、一般的に
・Rs(岬角〜S2下縁…直腸S状部):高位前方切除
・Ra(〜腹膜反転部…上部直腸):低位前方切除
・Rb(〜恥骨直腸筋付着部上部…下部直腸):腹会陰式直腸切断術(Miles手術)

このように分類できます。肛門括約筋とともに直腸を切除する場合を「〜切断術」といい、肛門括約筋を残す場合を「〜切除術」といいます。故に、肛門に近い直腸がんや肛門にできた癌では、直腸切断術を行わなければならず、人工肛門を造設する必要が出てきます。

上記のケースでは、投薬ミスが問題となっています。どうしてこうした事故が起こってしまったのか、しっかりと調査がなされ、再発防止などが行われることが望まれます。

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