プロ野球史上唯一の両リーグ首位打者に輝き、中日、ロッテなどで活躍した江藤慎一氏が28日午後3時38分、東京都内の病院で肝臓がんのため死去した。

最期をみとったのは三女の忍さん。前夜の10時まで病院で見舞っていたという実弟で元巨人の江藤省三氏(65)は「5年間の闘病はきつかったと思う。意識があるのにしゃべれない。僕の呼び掛けには応じるのに…。見ていてつらかった」と悲しみとともに振り返った。

03年07月に脳梗塞で倒れて入院。その後、肝臓にがんが見つかるなどして、長い闘病生活が続いた。最近では関係者の見舞いはすべて断り、闘病で弱った姿は誰にも見せなかったという。気骨あふれる九州男児。気迫を前面に出し「闘将」といわれた現役時代そのままの最期だった。
(また「昭和」が一人…江藤慎一さん逝く)


肝癌とは、肝臓に発生する悪性腫瘍の全てを指し、原発性肝癌と転移性肝癌に大別されます。原発性肝腫瘍では、肝細胞癌と胆管細胞癌が95%を占め、中でも肝細胞癌が最も頻度が高くなっています。

原発性肝癌は、年々増加の一途をたどっており、1990年には年間2万人を突破し、年間死亡者数は約2万7千人と推定されています。肝癌患者数の男女比は 3:1 で男性が多いですが、近年女性患者の増加がみられます。また、肝癌発生年齢の高齢化傾向もみられています。

原因としてはB型肝炎ウイルス(HBs Ag陽性15%前後)およびC型肝炎ウイルス(HCV陽性75%前後)の長期にわたる持続感染が大多数を占め(肝炎ウイルス感染の関与が9割以上を占めている)、原発性肝細胞癌の9割がなんらかの肝病変を併発しています。

肝癌は、B型、C型肝炎ウイルスが正常肝細胞に作用して突然変異を起こさせて発生するものと推定されています。したがって、B型、C型肝炎ウイルスに感染した人は、肝がんになりやすい「肝癌の高危険群」と言われています。

肝癌に特有の症状は少なく、肝炎・肝硬変などによる肝臓の障害としての症状が主なものです。わが国の肝癌は、肝炎ウイルスの感染にはじまることが大部分であり、肝炎・肝硬変と同時に存在することが普通です。

早期肝癌では、特有の症状は乏しく、併存した肝病変の症状を呈します。肝炎・肝硬変のために医師の診察を受ける機会があり、肝癌が発見されるというケースが多くみられるようです。進行肝癌となると、全身倦怠感や上腹部〜右季肋部痛、腹部腫瘤。発熱、ショック(肝癌が壊死に陥り出血した場合)などが起こります。

また、腫瘍随伴症候群として、稀ですが低血糖や赤血球増加症、高コレステロール血症、高Ca血症(腫瘍のホルモン様物質の産生、腫瘍代謝の異常など)をきたすことがあります。

必要となる検査や治療は、以下のようなものがあります。
肝細胞癌では慢性肝炎や肝硬変の病態を反映し、ASTやALTなどの酵素が上昇していることが多いです。白血球や血小板は肝障害に伴う脾機能亢進症の状態を反映します。肝細胞癌が進行すると血清ビリルビンやALP、LDHが上昇することがあります。

肝細胞癌の腫瘍マーカーとしては、AFPとPIVKA-?があります。AFPは肝硬変でも上昇しますが、時間経過とともに上昇するようであれば肝細胞癌が疑われます。AFPとPIVKA-?は、ともに陽性率は約半数であり、両者の併用が望ましいと考えられます。

腹部長音波検査は、小腫瘍の検出に優れており、1cm前後またはそれ以上の径をもつ実質性の限局性異常を認めれば、悪性腫瘍を疑います。腹部単純CT検査では、low densityな腫瘍として描出されます。肝細胞癌は、急速静注法(ダイナミック CT)の早期相では腫瘍内部の結節が種々の濃度に造影され、後期相では腫瘍全体が再度low densityとなります。

MRI検査では、一般にT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示すことが多くなっています。血管造影が行われた場合、腫瘍血管の増生や腫瘍濃染が認められます。

治療としては、手術適応は遠隔転移がなく、肝障害度AまたはBで腫瘍の占拠範囲が術前評価により耐術可能な切除範囲内にあること、となっています。腫瘍数や腫瘍径、占拠部位、血管侵襲の有無とともに、術前の肝機能評価が重要となります。他にも、以下のような治療法があります。

経皮的エタノール注入療法(PEI)は、超音波映像下に細径針を用いて腫瘍を穿刺し純エタノールを直接注入することにより,癌部を瞬時に凝固壊死させる治療法です。腫瘍径3cm以下の小肝細胞癌で、3病巣以内の場合に適応となります。

経皮的ラジオ波照射熱凝固療法は、穿刺針を用いてラジオ波照射による熱凝固作用により腫瘍を凝固壊死させる療法のことです。腫瘍径3cm以下の肝細胞癌に対して治療回数1回で完全壊死が高率に得られる利点があります。

経カテーテル肝動脈塞栓療法(TAE)は、カテーテルを腫瘍支配動脈に選択的に挿入し、ゼラチンなどで塞栓して、腫瘍を阻血性壊死に至らせる治療法です。通常、門脈本幹ないし一次分枝に腫瘍栓がなく、多発病巣を有する症例に適応となります。

肝細胞癌は当初にはあまり症状もなく、定期的な健康診断などを受けられることが早期発見のために重要であると思われます。

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