諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)院長の根津八紘医師は29日、子宮がない娘夫婦の受精卵を使い、50代後半の母親が代理出産を実施し男児1人が生まれたと明らかにした。

出産した母親にとって、男児は遺伝的に孫に当たる。根津医師によると、同クリニックで手掛けた代理出産で子供が生まれたケースはこれで8例目となり、うち今回のような「孫」の出産は四例目という。

娘夫婦と出産した母親は同日、根津医師とともに同クリニックで記者会見。母親の産後の回復は順調といい、娘は「心配もあったが子供ができて幸せ」などと語った。

発表によると、3人は西日本在住で、娘は生まれつき子宮がなく、現在20代後半。代理出産のテレビ報道を見た母親が娘夫婦に代理出産を申し出、昨年3月にそろって根津医師を訪ねた。娘夫婦の卵子と精子を体外受精させ、母親の子宮に移植する方法を2回実施したところ妊娠し、今月上旬に帝王切開で約2200グラムの男児を出産した。

母親の名前で出生届を提出したが、母親が高齢であるとして、まだ受理されていないという。
(「孫」の代理出産また実施 根津医師、国内4例目)


代理出産とは、妻の生殖器に異常があるため妊娠や出産ができず(先天的に子宮を欠損している女性や子宮摘出を受けた場合)、第三者の女性と代理母契約を結び、夫の精子で人工授精し子供を生んでもらうことを指します。

人工授精や体外受精といった生殖補助技術が発達したため、夫婦以外の第三者の精子、卵子、子宮を使い子供をもつことが可能となってきたため、こうした医療についての議論が生じてきました。

代理母出産については、生殖補助医療の進展を受けて日本産科婦人科学会が1982年10月に決定した「会告」により、自主規制が行われているため、国内では原則として実施されていません。また、代理母契約そのものが民法90条の公序良俗違反かどうかの決着はついていません。

国内での動向としては、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、国内初の代理母出産を実施し、2001年5月にこれを公表しています。また、向井亜紀さんが国内の自主規制を避ける形で海外での代理母出産を依頼することを大々的に公表し、これを実行したことにより、社会的な注目を集めることとなりました。

こうした代理出産を推進する動きとして、不妊患者らでつくる「扶助生殖医療を推進する会」は2007年11月、生殖医療の在り方を検討している日本学術会議に対し、代理出産などの実施を認めるよう求める申し入れ書を発送したと発表しています。

不妊症とは、「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間(通常は挙児希望のあるカップルが2年以上妊娠しなければ、不妊症として検査します)、性生活を行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない状態」といわれています。

その原因としては、女性不妊,男性不妊,両性に原因がある複合不妊がそれぞれ約1/3の頻度で存在します。女性不妊には排卵障害、卵管性不妊(通過障害や卵管采のpickup障害など)、子宮性不妊(筋腫、腺筋症、内膜発育不全、内腔癒着など)、精子・頸管粘液不適合(免疫因子を含む)、子宮内膜症などがあります。

また、上記のように子宮奇形が原因となることもあり、以下のように分類されています。
子宮奇形とは、胎生期におけるミュラー管の低形成ないし無形成、あるいは左右ミュラー管の癒合、発育または管腔化の不全により起こります。ミュラー管は、人間では胎児期のみに男女ともにみられる構造で、女性では卵管や子宮、腟上部に分化します(男性では、精巣から分泌されるミュラー管抑制物質の影響によって退化します)。

国際的分類(American Fertility Society)によれば、
class機低形成/無形成
class供単角子宮
class掘Ы妬子宮
class検Я亞兒匍
class后中隔子宮
class此У歉子宮
class察Д献┘船襯好船襯戰好肇蹇璽襦DES)関連子宮(T字形子宮)

の7型に分けられています。

頻度は多いですが、外陰や腟の奇形を伴わないものが多く、小児期には発見されにくいため、成人して不妊などの場合に発見されるのが一般的です。小児期に発見された場合、必要がない限り放置されることもあります。

現在、代理出産に関しては厚生労働省の審議会が2003年にとりまとめた『精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書』および、日本産科婦人科学会の会告によって、(営利目的での代理出産の禁止、という前提はあるようですが)規制の方向に乗り出されています。

もちろん、上記のように高齢になっての分娩は、母体が危険なだけではなく、流産・早産する危険性が増加したり、代理出産を巡る「生物学的な母親、出産を行った母親、戸籍上の母親」など、複雑な法的・倫理的問題を抱えているのも確かです。その一方で、「子供がほしい」という切なる願いも存在しています。

今後の生殖医療は、どうあるべきかといったことを含め、社会全体で話し合っていく必要があると思われます。

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