ポルトガル南部のアルガルヴェ地区で、ある若い女性が痩身手術を受け死亡した。この種の医療事故が起こるのは同地では初めてだという。

同国で最大の発行部数を誇る新聞が28日に伝えたところによると、死亡したのは25歳の語学教師。彼女は太りすぎだったためあるクリニックで痩身手術を受けた。その後傷口から感染を引き起こし合併症をわずらって死亡したという。

伝えられたところによると、このクリニックは局部麻酔を使い、腰の部分から脂肪を吸引する手術を行った。女性は手術が終わり帰宅してから、嘔吐やめまい、腹部の痛みといった症状を訴えた。女性はすぐに診察を受け、ビタミン複合剤や痛み止め、抗生物質などを処方されたが、術後3日目の朝、自宅で死亡しているのが発見された。

遺体解剖の結果、女性は肺血栓塞栓症で死亡したことが確認された。腹部には火傷のあともあったという。女性の家族は、すでに訴訟を起こし、政府に対しこの事故について調査を行うよう求めているという。
(25歳の女性、脂肪吸引手術を受けた後に死亡)


肺動脈内腔に形成された血栓により閉塞された病態を肺血栓症、静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞された病態を肺塞栓症といい、両者をまとめて肺血栓塞栓症と呼びます。

男女比は5:4で、あらゆる年齢層に発症する可能性があります。ただ、高齢になるほど多く、60歳以上が患者全体の約50%を占めます。

臨床的には、後者である肺塞栓症が大半です。急性肺血栓塞栓症は、その90%以上が下肢あるいは骨盤内の静脈に生じた血栓が原因であり、遊離して肺動脈を閉塞することにより生じます。

「エコノミークラス症候群」としても知られるように、長時間、同じ姿勢のまま過ごすと起きやすいことで知られています。新潟県中越地震では、被災地で車中泊をしていた人が多く発症したことが報告され、有名になりました。

一方で、病気や出産で入院したときなどにも起きやすく、手術で病気が治った直後の突然死、といったことが起こる可能性もあります。保険適応がなされるようになってから、術後に「間欠的空気圧迫法」と呼ばれる対策(空気圧で下肢に圧迫するもの)をとる病院が多くなってきたようです。

症状としては頻度の高いものとして、急に発症する呼吸困難(約80%)、多呼吸(約80%)、頻脈(約60%)などがあります。広範な塞栓の場合にみられる場合、不整脈や狭心症様の胸部重苦感、失神などが起こります。肺梗塞・肺水腫を伴う場合は、胸膜炎様胸痛、咳嗽、発熱などが起こることもあります。

診断に必要な検査や治療としては、以下のようなものが行われます。
上記のような症状や身体所見、危険因子(Virchowの3徴:血流停滞,凝固能亢進,血管内皮障害)、発症状況(安静臥床解除後の歩行など)より本疾患を疑います。

時間的余裕のある場合には、心電図や胸部X線、動脈血ガス検査、凝固線溶系マーカー(D-dimer)を他疾患との鑑別を行います。

心電図では、古典的にはSIQT轡僖拭璽鵝右軸偏位、右胸部誘導のT陰転、肺性Pなどの急性右心負荷、多くは非特異的ST-T変化、洞性頻脈などの所見がみられます。胸部X線では、多くの症例では肺野に異常を認めません。肺動脈影の拡大、右心影の拡大などがみられることもあります。造影CTや肺動脈造影で診断を確定でき、造影CTはほぼ必須であると考えられます。

治療としては、呼吸循環管理や血栓塞栓の溶解除去、塞栓源への対処を中心とした迅速な治療が必要となります。抗凝固療法を早急に開始し、血栓の拡大・新生を防止します。血栓溶解療法〔組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)、ウロキナーゼなど〕や、基礎疾患の治療も必要となります(下肢静脈血栓症については、発症後10日以内であれば外科的に血栓除去術を行う)。

上記のニュースでは、痛みなどのために、あまり動くことができず、そのために肺血栓塞栓症が起こったとも考えられます。術後には肺血栓塞栓症が起こる可能性があると、しっかりと認識して対処する必要があると思われます。

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