骨髄は、骨の中にあって血液を作る組織。急性骨髄性白血病は、骨髄の細胞ががん化する病気で、10万人に5〜6人が発症する。かつては不治の病とされたが、健康な人から提供された骨髄を移植する治療などで、治る患者が増えた。抗がん剤治療でも、65歳以下なら30〜40%が治る。

血液や骨髄を顕微鏡で見て、がん細胞が確認できなくなった時点で「寛解」とされる。しかし、ごくわずかにがん細胞が残っている場合もあり、これらの細胞が再び増え、再発することも少なくない。

そこで、注目を集めているのが、がん細胞の増殖に関係する遺伝子「WT1」だ。
WT1は、米国で小児の特殊な腎臓がんから発見されたが、大阪大医学部教授の杉山治夫さん(病態生体情報学)は、急性骨髄性白血病患者の骨髄では、WT1の量が健康な人の1000倍、血液では10万倍もあることを突き止めた。寛解したと診断された患者でも、健康な人より多い場合は、高い確率で白血病を再発することもわかった。

こうしたWT1の性質を利用し、白血病の再発予測検査が開発された。
検査は、患者の血液を健康診断で採る程度の量(3〜7mL)採取し、遺伝子を増幅する機械と検査試薬を使ってWT1の量を測定する。約4時間で結果が出るという。

実際に患者に使って効果を調べる臨床試験では、抗がん剤治療などで「寛解した」とされた患者191人の血液について、WT1の量を月1回、1年間計測した。WT1の量が「50未満」の状態が1年間続いた患者は、この間に再発しなかったが、寛解直後から量が多いまま経過したり、急増したりした人は、高い確率で再発した。

群馬県済生会前橋病院白血病治療センター長の宮脇修一さんは、こうした結果などを参考に、治療方針を決めている。抗がん剤治療で寛解と診断された後、再発予測検査で血液中のWT1の量が50以上と測定された場合に限って、再発防止のため、骨髄移植など強力な治療を患者に勧めている。

宮脇さんは「骨髄移植は治療効果は高いが、放射線治療の併用などで激しい副作用が起きることも多い。検査で再発の可能性を探ることで、無理に厳しい治療をしなくても済む」と話す。
(白血病の再発予測検査)


急性骨髄性白血病とは、骨髄系の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失う疾患です。本来ならば、こうした造血細胞が分化や成熟し、血球になっていきます。ところが、この疾患ではそれが障害されてしまっているわけです。

具体的には、骨髄の造血細胞(骨髄性前駆細胞)に遺伝子異常が生じ、腫瘍化したクローンがさまざまな段階で分化能を失い、幼若な芽球(白血病細胞)が勝手にどんどん増殖してしまう状態です。

増殖の主体は芽球であり、骨髄中有核細胞分画の中で30%以上を超えるものを急性骨髄性白血病と定義しています(FAB分類による)。芽球とは、完全に成熟していない血球で、本来ならば血液の中に流れ出さず、骨髄の中にある状態のものです。ですが、急性骨髄性白血病では末梢血に芽球が数多く出現してきます。

白血病細胞の中には自己複製能を有する「白血病幹細胞(LSC)」が存在することが明らかになっています。この白血病幹細胞が元となり、急性骨髄性白血病が起こると考えられています。

マウスによる実験で、普通の白血病細胞を移植しても発症しませんが、幹細胞を移植したときだけ発症することが判明し、さらに抗がん剤を投与すると、普通の白血病細胞は死滅するが、幹細胞は生き残り、これが再発の原因であると理化学研究所、九州大付属病院などの共同研究チームは発表しています。

幹細胞の性質を詳しく調べたところ、増殖のスピードが普通の白血病細胞より遅く、正常な細胞とほぼ同じだったそうです。既存の抗がん剤は副作用を減らすため、増殖が速い細胞だけを攻撃する仕組みになっており、これでは幹細胞には効果がなく、再発を防げない理由もここにあるのではないか、と指摘されています。

ちなみに、白血病性幹細胞は、ある程度分化成熟するので白血病細胞には幼若芽球から成熟血球まで認められますが、一方で増殖力が分化成熟能より強いため、幼若芽球が優位となっています。

治療と再発の関係としては、以下のようなものがあります。
治療の基本としては、最終的に白血病細胞をすべて根絶する“total cell kill”にあります。そのため、まず寛解導入療法で発症時10の12乗個存在するとされる白血病細胞を、10の9乗個程度に減少させ、完全寛解を目指す寛解導入療法、次いで地固め・維持療法から成る寛解後療法を複数回行い、白血病細胞の根絶を図ります。

寛解とは、永続的一時的を問わず、病気による症状が好転または消失することを指します。つまり、一般的な意味で完治せずとも、臨床的に「問題ない程度」にまで状態がよくなることを指します。

白血病の場合は、検査で白血病細胞が検出されない状態を指しているわけです。特に、完全寛解状態という、骨髄中の白血病細胞が5%以下で、かつ末梢血・骨髄が正常化した状態をいうこともあります。故に、再発してしまうこともあります。

寛解後早期には、地固め療法が行われることもあり、有効性が認められているようです。地固め療法は、寛解導入療法で使用された同じ薬剤の組み合わせで行われることが最も多いです。最近では、シトシンアラビノシド(CA)の大量療法が試みられ、有用性が確認されつつあります。

ですが、こうした化学療法を行う以上、骨髄抑制などの副作用が出てくることは避けられません。そのため、再発の可能性が少ないのであれば、出来れば行わないほうが患者さんにとっても望ましいでしょう。

そこで重要となるのが上記のWT1です。WT1(Wilms tumor 1)は、すでに急性骨髄性白血病の治療モニタリング用測定試薬(WT1 mRNA測定キット)として、保険適応となり、残存する白血病細胞の変動を知る手掛かりになると考えられます。

以前は「いつ再発するか…」といった微小残存白血病細胞に怯えるしかなかった状況が、変わりつつあると思われます。現在では、骨髄移植後の拒絶反応を抑えるために使う免疫抑制剤の量を調節する(WT1が増えてきたら減らす)目的としても使用されているそうです。より患者さんに負担が少なく、効果のある治療が提供できるようになっているようです。

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