英BBC放送は7日夜(日本時間8日朝)、マーガレット・サッチャー英元首相(82)がロンドン市内の病院に検査入院したと伝えた。元首相は自宅から病院に移り、「予防のための医療検査」を受けているという。

元首相は05年に脳卒中が続き、公の場で演説しないよう医師団に言われていた。元首相は保守党党首を辞任した90年までの11年間、政権を率いた。
(サッチャー元英首相が入院)


「卒中」とは、突然に現れる症状を意味しています。ですので、脳卒中となると脳血管の病的過程により急激にそれに該当する精神・神経症状を呈するものを指します。簡単に言ってしまえば、「脳の病気で、突然何かに当たったように倒れる状態」を指すわけです。

現在では、脳血管障害という言葉の方が一般的なように思われます。具体的には、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、脳動静脈奇形に伴う頭蓋内出血などを含みます。

脳卒中患者は、頭痛や片麻痺、意識障害などで発症することが多いです。他にも、めまいや感覚障害、歩行障害、けいれん、尿失禁、視力・視野障害、言語障害なども生じやすく、障害を残すこともあり、その後の生活において問題となる疾患です。国内の死亡原因のトップの座にあった脳血管障害は、1970年ごろより減少傾向をみせはじめ、1980年ごろには悪性腫瘍に抜かれています。

ただ、死亡率が低下しても決して病気そのものが著明に減少したのでなく、有病率あるいは受療率は決して減少傾向を示していません統計データとしては、脳出血による死亡が減少しているわりには、脳梗塞による死亡は横ばい状態が続いており、この背景としては、脳出血発症の減少および軽症化があると思われます。

以前は、「東高西低」などと呼ばれ、脳血管障害死亡率は東北地方から北関東、中部地方に高く、東海から近畿、山陰地方および東京、大阪などの大都市で低いとされていました。ですが、現在はこの地域差は減少しつつあります。

原因となるのは、まず高血圧が挙げられ、脳血管障害発症の危険因子として最も重要であると言われています。収縮期・拡張期血圧いずれの上昇も、脳出血、脳梗塞両方の発症頻度を増加させます。少なくとも高度の高血圧に対する降圧療法は,脳卒中の発症率を低下させることが証明されています。

また、心疾患をもつ患者は、もたない患者に比べ脳卒中発症の危険が2倍以上高く、特に心房細動を伴う弁膜症は脳塞栓症の危険因子となります。他にも、糖尿病患者は、非糖尿病患者に比べて脳梗塞発症率が約4倍高いといったことや、高脂血症が脳梗塞とは関係があり、その治療が脳梗塞発症を低下させることが証明されています。

一度脳梗塞を経験した患者さんは、1年間に平均5〜10%の割合で再発を起こすということもあり、脳塞栓症例は再発時も塞栓症を呈することが多いといわれています。やはり、上記のようなリスクファクターがある場合は、しっかりと治療なさることが重要であると思われます。

こうした脳血管障害が起こった患者さんに、記憶障害が起こる場合というのは、以下のようなものがあります。
脳血管障害に起因する認知症を、脳血管性認知症といいます。
国内では脳血管性痴呆がやや多かったという状況にありましたが、現在では急速な高齢化とともにAlzheimer病が増加傾向にあります。

具体的には、多発性の大きな完全梗塞による多発梗塞性認知症、認知症の成立に重要な部位の単発梗塞によるもの、小血管病変による多発梗塞に伴うもの、脳の低灌流によるもの、脳出血による認知症などがあります。

特に、前頭前野機能が障害されることが特徴で、認知症の重症度が進むにつれて前頭部での血流、代謝の低下が明らかになってきます。ただ、記憶障害はAlzheimer病に比べて軽度なことが多いといわれています。

必要となる検査としては、MRI検査で多発性脳梗塞やびまん性白質障害、脳萎縮などを認めたり、SPECTによる脳血流検査で、前頭葉優位の低下がみられます。

治療としては、高血圧などの脳卒中の基礎疾患がある場合は、その治療を行います。うつ状態が高度な場合は抗うつ薬を投与し、病態により抗血小板薬や塩酸アマンタジン、脳代謝賦活薬を投与することもあります。また、メンタルリハビリテーションを行うこともあります。

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