読売新聞の医療相談室に、以下のような相談が寄せられていました。
数年前から陰部が委縮しかゆみが伴います。ほてりも強く、性交痛で夫婦生活ができず困っています。何らかの治療法はあるのでしょうか。(茨城・64歳主婦)

この相談に対して、小山嵩夫クリニックの院長は、以下のようにお答えなさっています。
女性は閉経のころ(50歳くらい)から、卵巣からの女性ホルモンの分泌がほとんどなくなります。女性ホルモンが出なくなると、ほてりやのぼせなどの更年期障害、骨量減少のほか、血圧が変動しやすくなり、血中総コレステロール値が上昇するなど心身に様々な変化が起こることが知られています。

同時に、今回の質問の原因となる皮膚や粘膜の乾燥もみられ、子宮、乳房、膣は委縮してきます。

性交痛は、外陰部、膣粘膜の委縮に加え、膣内の自浄作用の低下により、炎症が起きやすくなったためと考えられます。加齢現象の一つであるため、仕方がないとのとらえ方もできますが、不快で困っているなら、症状を改善する治療法があります。

粘膜が乾燥して弱くなっているので、外陰部、膣へ潤いを与えることがまず考えられます。膣への保湿剤と同時に、症状の緩和の目的で性交時にゼリーなどを併用するとより効果的です。

更年期とは、女性における性成熟期(生殖期)から老年期(生殖不能期)への移行期にあたり、加齢に伴い卵巣機能が低下し安定するまでの閉経周辺期の数年間を指します。

大半の女性が、卵巣機能の低下で50歳前後で閉経し、卵巣機能の低下およびエストロゲンの欠乏状態となります。結果、症状としては大別して自律神経失調症状と、精神神経症状が現れてきます。

自律神経失調症状には、熱感(ほてり)やのぼせ、心悸亢進(動悸)、発汗、不眠などが現れてきます。精神神経症状としては、不安感や抑うつ、恐怖感、疲労感などが現れてきます。

エストロゲン欠乏は自律神経失調症状の出現との関連性が強く、精神神経症状は心理的、環境的要因が強く関与します。後者は特に、子供の巣立ち、夫の定年、老後の生きがいなど、環境や精神面でも変化の激しい時期であり、症状に大きく影響してきます。

また、エストロゲン産生低下に伴い、泌尿生殖器の萎縮が起こってきます。このことにより、上記のような症状(萎縮性腟炎による)が起こってきます。長期にわたりエストロゲン低下が続くと腟粘膜は菲薄化し、腟および外陰部に萎縮がみられるようになってきます。結果、腟内pHは上昇し、感染が起こりやすくなります。

こうした症状に関連し、上記の治療の他に以下のようなものが紹介されていました。
保湿剤やゼリーの効果が不十分なら、不足している女性ホルモンを飲み薬や張り薬で補うホルモン補充療法(HRT)をする選択があり、より効果的です。通常は、開始後数か月くらいで、かなり改善されてきます。

ホルモン補充療法、その名の通りエストロゲンを補充するものです。

ただ、子宮摘出後の女性の場合にはエストロゲン単独投与でいいですが、子宮がある場合には、子宮内膜過形成の発症を予防する目的で、エストロゲンに黄体ホルモンを併用する必要があります。実際の方法としては両者を持続併用投与する方法と、周期的に黄体ホルモンを併用する周期的投与法があります。

一つ注意しなくてはならないのは、ホルモン補充療法で、骨折(骨粗鬆症による)や大腸癌の予防効果がある一方で、乳癌、血栓症や動脈硬化性疾患のリスクを上昇させることが明らかになっています。そのため、こうしたリスクとの兼ね合いをしっかりと考える必要があります。

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