3月9日名古屋市瑞穂陸上競技場発で行われた、名古屋国際女子マラソンは、21歳の新鋭、中村友梨香(天満屋)が2時間25分51秒のタイムで初優勝を果たした。

注目を集めた、2000年シドニー五輪金メダリスト高橋尚子は、北京五輪代表枠を懸けた決意のレースに挑むも、9キロ付近でまさかの失速。結果は、2時間44分18秒の27位に終わった。

レース後には、昨年8月に右膝半月板の切除手術を受け、満足な練習が出来なかった悔しさを明らかにした。
(手術を隠した高橋尚子に「Qちゃんらしい」)


半月板は、大腿骨と脛骨の間に存在する軟骨を指します。機能としては、荷重の伝達分散、膝安定性の確保および潤滑の促進などです。

最も重要なのは、荷重の伝達分散機能です。膝は人体最大の荷重関節であり、体重などの大きな荷重を、分散させてより広い面積で受け止めることで、骨同士にかかる圧力を軽減している役割があります。荷重のおよそ50〜70%を伝達しているとされています。

半月板損傷や半月板切除などにより、半月板の機能障害があると関節面に異常負荷が起こり、二次性の変形性関節症が生じてきてしまいます。

半月板損傷はスポーツなどによる膝関節外傷の中で、最も頻度の高いものの1つであるといわれています。活動期である10歳代後半から20歳代に頻発します。マラソンなどでは、大きな荷重が膝に掛かり続けるために損傷する恐れも高いのではないか、と思われます。

急性期には、突然の激痛と運動制限が生じ、脱臼感(「膝がはずれる」「ずれる感じ」など)や、軽度の関節血症、膝関節の嵌頓であるロッキングなどを生じます。慢性期は安静時痛は通常軽度ですが、スポーツをするときや階段の昇降時、長時間の歩行などの運動時に痛みを生じることがあります。また、轢音(クリック)、ひっかかり感(キャッチング)といった特徴的な感覚も生じてきます。

必要となる検査や治療としては、以下のようなものがあります。
まず、理学的所見として、関節裂隙に一致した圧痛が生じます。
McMurrayテスト(下腿を屈曲外旋位から、または屈曲内旋位から伸展させ、関節裂隙のクリックの有無と疼痛の有無を検査する)や、Jones & Fischerテスト(膝関節を過伸展させ疼痛の有無を検査する方法)などが行われます。

膝部のMRIは、高い診断率や無侵襲性から、もはや半月板損傷の診断に必須の検査となったといえると思われます。関節鏡は、関節内の構成体を直接観察でき、ほぼ確定診断となりますが、侵襲を伴うため(開けて診るわけですから)、通常鏡視下手術による治療を前提として行います。

半月板は損傷があるからといって、全部が全部、手術適応となるわけではありません。痛みに加えてひっかかり感などの症状があり、伸展制限や関節水腫が見られるケースでは手術となります。また、スポーツで疼痛や水腫を生じる例も、手術の適応となることが多いようです。

手術としては、半月板切除術や半月板縫合術などがあります。

半月板切除術では、関節鏡手術の進歩により、現在では半月板の損傷部位のみを切除し健常部分は温存する部分切除術が一般的となっているようです。術後1か月でスポーツ活動復帰は可能とあんるようですが、その後の十分な大腿四頭筋訓練などのリハビリが必要となります。

保存療法としては、大腿四頭筋の筋力強化を含めたリハビリテーションが主体となり、痛みなどには消炎鎮痛剤を投与します。

今回は残念な結果となりましたが、これからもマラソン選手として頑張り続けるそうで、今後とも応援したいと思います。

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