横綱・白鵬(23)が、場所後にも腰の精密検査を受ける可能性が出てきた。この日は西前頭2枚目の雅山(30)を上手出し投げで破り4勝目を挙げたが、育ての親でもある部屋付きの熊ケ谷親方(元幕内・竹葉山)は場所前から訴えている腰痛に関し「軟骨が欠けている可能性がある」と話し、場所後にも検査する意向を示した。

今年、初場所前から慢性的な腰痛に悩まされてきた。01年春の入門時はわずか68Kgしかなかったが、細い体にムチ打って7年間で155Kgにまで大きくさせ、横綱にまでなった。同親方は「やせていた体を一気に太らせたから腰に計り知れない負担がかかっている」と表情を曇らせた。
(白鵬、腰痛重症、場所後精密検査へ)


腰痛とは、背中から殿部付近までである腰部に、痛みを訴える状態を指します。患者さんは、「腰が痛い」「背中が重だるい」などと訴えます。整形外科外来患者のなかでは、腰痛を訴える患者さんは30〜40%程度であるといわれ、腰痛を訴える人はかなり多いと考えられます。

腰痛は症状名であって、病態や疾患の名称ではありません(腰痛はさまざまな疾患で引き起こされる)。そのため、まずは他臓器や他科疾患の除外が重要となります。ただ、その原因をはっきりと特定することが難しいことも少なくありません。

そのため、患者さんが腰痛を訴える場合、それが脊椎(傍脊柱筋を含む)から生じているものなのか、または腹部(消化管や後腹膜腔)に原因のある疾患であるのかをまず考える必要があります。腹部に原因のある疾患ならば、泌尿器系疾患や産婦人科系疾患、消化器系疾患を中心に精査していきます。

脊椎が原因で腰痛が引き起こされる場合としては、二足歩行をするヒトの宿命として、脊柱は絶えず負荷を受けることが関わっています。中でも椎間板が上下方向での大きな力を受け、比較的早期から変性や損傷が生じ、腰痛の原因となりやすいと考えられます(いわゆる椎間板ヘルニア)。このように、脊椎に原因のある場合は、外傷や変性疾患などの脊椎そのものの精査をしていきます。

こうした生理的な理由に、老化に伴う脊柱変形、姿勢の異常(猫背であるなど)、筋力の低下(運動不足が大きく関わってきます)、高齢化社会に伴う骨粗鬆症の増加など、腰痛の原因はさまざまと考えられます。

職業上で原因となるのは、重量物の運搬や中腰姿勢での作業などがあります。腰椎に過大負荷をかけ、腰痛が起こります。相撲をとるとなれば、やはり腰の負担は非常に大きなものになると思われます。

腰痛の検査や治療としては、以下のようなものがあります。
どの疾患でもそうですが、まずはしっかりと問診することから始まります。腰痛は自覚症状であるだけに、医療面接が診断に重要な役割を果たします。経過や誘因などを中心に、病歴情報を丹念に聴取し、何が原因なのかを特定していきます。その中で、腹部や後腹膜腔の症状なのか、脊椎由来の腰痛なのかを考えていくわけです。

身体診察では、疼痛部位である腰部の局所の診察や、放散痛を考えての脊椎の診察を行います。また、同様に腹部の診察を行い、鑑別診断を行っていくことも重要です。

腰痛の原因としては、脊椎疾患が多く、特に傍脊柱筋由来の筋肉痛が、頻度は一番多いと考えられています。

そこで、脊椎の検査を行います。腰椎単純X線撮影(前後および側面の2方向撮影)を撮ることが多いようです。ここからは腰椎配列の異常、骨棘形成などによる椎体変形や椎間板高の低下、骨粗鬆症、圧迫骨折、転移性腫瘍による骨融解像などをみることができます。炎症や感染症が疑われるときは、血液検査によって異常がないか調べます。

確定診断のためには、基本的には単純X線で脊椎骨折の診断がつきますが、疑わしいときはMRIやCT検査も行います。

MRIによって椎間板や椎体の輝度変化による変性や、炎症性疾患、椎間板突出による神経根や馬尾の圧迫、脊椎脊髄腫瘍の診断などを行います。CTスキャンによっては、脊柱管の狭小化や椎体の破壊の有無を見ることができます。

治療としては、就業中に休憩を時間ごとにとって、その間にストレッチなどの運動をすることや、短期間の腰椎装具(コルセットなど)も有効です。患部の温熱療法(ホットパック,極超短波など)を行うこともあります。急性腰痛ではあまり効果がありませんが、慢性腰痛では腰痛体操なども勧められます。

薬物療法として非ステロイド系鎮痛消炎薬(NSAIDs)や筋弛緩薬が基本となります。心因性要素の強いで例では、患者に説明のうえ、抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方することもあります。

急激に体重を増やし、なおかつ厳しい稽古に耐え続ける必要があるとなれば、やはり非常に大きな負担が体にはかかっていると思われます。しっかりと精査なさって、これからも息の長いご活躍をされることを期待しております。

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