黒沢明監督の「赤ひげ」「どん底」などの映画やテレビドラマで活躍した女優、根岸明美さんが11日、卵巣がんのため死去したことが12日、分かった。73歳だった。葬儀は近親者のみの密葬で行う。

日劇ダンシングチーム在籍中の1953年、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督に抜てきされ日米合作映画「アナタハン」に主演。黒沢明監督の「どん底」(57年)、「赤ひげ」(65年)などに出演した。蜷川幸雄さん演出の「近松心中物語」など舞台やテレビでも活躍した。
(根岸明美さんが卵巣がんで死去)


卵巣癌とは、卵巣に発生する悪性上皮性腫瘍のことを指します。卵巣腫瘍は、悪性と良性、その中間の低悪性(または境界型悪性)腫瘍に分類されます。卵巣にできる腫瘍の85%は良性となっています。

卵巣癌は、悪性卵巣腫瘍の中での76%を占め、組織学的には漿液性、粘液性、類内膜そして明細胞が主として発生します。

悪性卵巣腫瘍のうち、卵巣癌の好発年齢は40〜60歳代と、比較的高いと考えられます。卵巣がんの罹患率は40歳代から増加し、50歳代前半でピークを迎えてほぼ横ばいになり、80歳以上でまた増加します。家族性卵巣癌症候群や乳癌卵巣癌症候群など癌家族集積性を認める場合は、さらに若年発生です。また、悪性胚細胞腫瘍の場合は20〜30歳代に好発し、妊娠合併例や妊孕性温存に関して問題になります。

卵巣癌の発生は欧米諸国に比べて半分といわれていましたが、最近では生活様式の変化伴い増加しているといわれています(卵巣がんの死亡率の年次推移では1990年代後半まで増加傾向、それ以降は横ばい状態)。

癌の危険因子として比較的可能性の高いものは、未婚、未妊、未産、卵巣癌の家系、高脂肪食の摂取などが挙げられています。婦人科疾患では骨盤内炎症性疾患、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症がリスク要因と考えられています(ただ、強い関連性を示す単一の要因は、現在のところはありません)。

卵巣は生殖のための臓器で、ホルモン産生に関与する臓器です。腹腔内でも、骨盤腔の最も深いところに位置しています。そのため、卵巣の腫瘍性病変は良・悪性を問わず、かなり大きくなるまで自覚症状がないことが多いです。

悪性の場合、進行例として発見される症例が約半数を占めるということで、早期発見が難しい疾患といえると思われます。無症状のことが多いですが、比較的みられる症状としては、下腹部痛、腹部膨満、腹部腫瘤、不正性器出血、異常帯下などがあります。

大部分がぼんやりした不特定の症状、たとえば消化不良、腹部の膨隆、すぐに満腹感を覚える食欲不振、ガス痛、腰痛などをもっています。腫瘤の増大に伴い、下腹部痛や圧迫感も訴えることがあります。

最も一般的な初期発見は付属器の腫瘤で、腫瘤はしばしば固く不規則で固定されている状態になっているそうです。新生児頭大以上になると、自分で下腹部腫瘤として触れます。臨床進行期郡・鹸の進行癌で発見される場合、癌性腹膜炎による腹水や腸閉塞症状、胸水による呼吸困難を訴えて来院することがあります。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
内診では、腫瘍の大きさ、硬度、可動性、表面の状況、さらには子宮との連続性について診断し、腹水の有無も重要となります。表面粗造で固く、可動性に乏しく、腹水を伴う下腹部腫瘤を認めた場合には、卵巣悪性腫瘍が疑われます。

超音波断層法は、簡便かつ診断的価値が高いといわれています。卵巣腫瘍のスクリーニングに適しているとされています。また、充実性か嚢胞性かの鑑別診断を行うことができます(充実性腫瘍の約70%は悪性であり、嚢胞性腫瘍はそのほとんどが良性といわれている)。

腫瘍マーカー値、および画像診断(超音波断層法,MRIなど)の両者によって悪性の推定はおおよそ可能であるといわれています。表層上皮性卵巣癌関連した腫瘍マーカーとしては、CA125・CA19-9・CA72-4・STNなどがあります。最終診断は、腫瘍の外科的切除による病理組織学的診断で行います。

国際産科婦人科連合(FIGO)による原発性卵巣癌の進行期分類は、以下の通り。
鬼 卵巣内限局発育
a期 一側の卵巣に限局するもの
b期 両側の卵巣に限局するもの
c期 卵巣に限局するが、皮膜破綻がある/腹水細胞診で悪性細胞が認められるもの

挟 骨盤内への進展
a期 子宮・卵管に進展/転移を認めるもの
b期 他の骨盤内臓器に進展するもの
c期 腫瘍発育が僑甦・僑盍で皮膜破綻がある/腹水細胞診で悪性細胞が認められるもの

郡 腹腔内への進展
a期 腫瘍は骨盤腔内に限局しているが腹膜表面に顕微鏡学的転移を認めるもの
b期 直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
c期 直径2cmを超える腹腔内播種認める/後腹膜または鼠径リンパ節に転移を認めるもの

鹸 遠隔転移を伴うもの
胸水が存在する場合は、胸水中に悪性細胞を見とめること
肝実質への転移は鹸とする

こうした進行期を参考に治療方針が決定されます。

早期癌症例の場合、卵巣癌根治手術と補助化学療法が基本となります。進行癌症例では、腫瘍減量手術と寛解導入化学療法が基本となります。

早期癌に対する卵巣癌根治手術としては、原則として「子宮全摘術+両側付属器切除術+大網切除術+骨盤および傍大動脈リンパ節廓清術」となります。

また、進行癌症例に対してはこれらに加え、できるだけ多くの腹腔内腫瘍を除去する「腫瘍減量手術」を行い、場合によっては腸管をはじめとする他臓器の合併切除を行います。

卵巣腫瘍疑いと診断した場合は、原則として腫瘍を摘出することになります。術中迅速病理診断が境界悪性、または悪性となった場合は、基本術式として単純子宮全摘術、両側付属器切除術、大網切除術を行います。

また、進行期の確定のために横隔膜下面以下の腹腔内の視触診、腹腔細胞診、腹腔内生検、後腹膜リンパ節の郭清術または生検を行います。次に、腹腔内に腫瘍が広がっている場合は、可及的腫瘍縮小術を行います。

国立がんセンターの治療成績によると、5年生存率は鬼91% 挟72% 郡31% 鹸12%となっています。やはり郡以降になると急激に低下してしまっています。

【関連記事】
有名人の症例集

入院後、肺炎で亡くなる−市川崑監督