読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
6歳の子供が最近、頻繁に「見ている物が急に遠くに(小さく)見える」と言うようになりました。しばらくすると元に戻るようですが、何か悪い症状ではないか心配です。何が原因でしょうか。(福岡・30歳母)

この相談に対して、梶田眼科院長の梶田雅義先生は以下のようにお答えになっています。
ご質問の症状は、変視症の中の小視症の可能性が考えられます。変視症とは、物の形状などが実際と異なって見える症状で、通常よりも小さく認識される場合を小視症といいます。

原因は、遠視や近視、斜視など、目の異常の場合もあれば、心理的な影響による場合もあります。遠視や近視などの屈折異常では、ピントが合わない状態で見る時はぼんやりと大きく見えますし、ピントが合った時には鮮明に小さく見えると感じます。

左右の目の近視や遠視の程度が異なると、左右の目で見る物の大きさが異なることがあります。左右を交互に隠すと、大きく見えたり小さく見えたりします。

斜視は左右の目の向きが異なる状態です。通常は両目ともまっすぐ向いているのに、力を抜くと斜視のようになる目もあり、その状態になると立体感、距離感が変化します。左右の目を交互に隠し、黒目の動きを観察すれば判断できます。

心理的な影響としては、ストレスが重なるなどして発作が起きたときに、物が変に見えることがあります。

変視症とは、実際のものより大きくあるいは小さく見えたり歪んで見えたりすることの総称を指します。大視症、小視症、歪曲視症などが含まれます(狭義の変視症は大視症、小視症を除いたものを指す)。

原因による分類としては、
中間透光体、結像系:角膜、水晶体などに起因するもの
網膜に起因するもの
・これらよりも中枢側に起因するもの

とがあります。年齢により原因となる好発疾患が異なります。変視症を示す代表的な疾患は、若年者では網膜剥離、中心性網脈絡膜症、特発性または近視性新生血管黄斑症などがあります。老人では加齢黄斑変性、黄斑円孔などがあります。

小視症とは、上記のように実際のものよりも小さく見えることを指します。上記のように遠視や近視、斜視、精神状態の異常(たとえば、ヒステリー状態のときも一過性に小視症を訴えることがある)などが原因になったり、網膜の異常によって起こることもあります。

網膜が原因になる場合、黄斑部(網膜の中心にあり、水晶体を通して入ってきた光線が映像を結ぶ所)が剥離したりして、視細胞の配列が正常の状態よりも伸展された場合などにみられます。

このような状態になった場合、網膜に投影される像は同じでも、認識する視細胞数が少なくなり、像が小さく見える、というわけです。

では、こういったケースの対処としてはどうするべきか、以下のように梶田先生はお答えになっています。
いろいろなことに興味を持ち始めた子供では、目がピントを合わせる時のなにげない自然現象を、特別に意識して口にすることがしばしばあります。その場合は、そのまま放置しても大丈夫です。

心配でしたら、弱視、斜視や小児眼科の分野に明るい眼科医に相談されることをお勧めします。近視や遠視が原因なら、眼鏡などで改善することもあります。

症状を訴えているのが子供ということもあり、どのようなことが原因になっているのか、現段階では判断しかねるようです。ただ、原因疾患があればそれに対する治療を行います。

遠視や近視、斜視などの他に、変視症は眼底疾患でも生じるため、眼底検査が必要となります。特に視神経や眼底中心部(黄斑部)に注目して検査します。網膜中心部の断層像は、光干渉断層計によりとらえることができます。電気生理学的検査を行うことで、網膜疾患か視神経疾患かが確定的に診断されます。

他にも、変視症の特徴をチャート(アムスラーチャートAmsler Chartsなどが代表的)に記録してもらいます。また、周辺視野に異常がないか、ゴールドマン視野計による検査も重要となります。

お子さんの目の状態が、どのようなものなのかなど気になる場合、やはり専門家に相談されることが望ましいと思われます。

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