ほとんど場合はストレスを感じるレベルではないけれど、実は耳鳴りのメカニズムはよくわかっていないところが多いそう。音を感じる耳そのものに原因がある場合や、耳から伝わってきた音を認識する脳に原因がある場合、さらに“キーン”と聞こえる人や“ジージー”と聞こえる人など、症状も原因も千差万別…。しかし、ここで意外な事実に遭遇。なんと、耳は自ら音を“発する”ことがあるらしいのだ!

「耳の中にある蝸牛といううずまき型の器官が音を発することを“耳音響放射”といいます。蝸牛は基本的に鼓膜から伝わってきた音を感じる役割を担っていますが、集音マイクを近づけるとわずかな音を発していることが確認できる。つまり、耳鳴りは決して主観的な現象とは言いきれないんですよ」(耳鼻咽喉科医の柳田雅治氏)

まさか自分の耳が発信源にもなるなんて…しかし、なんで音が出るんでしょう?

「まず、蝸牛の中には外有毛細胞という音の伝わり方を調節する細胞がおよそ1万も並んでいます。役割は音の伝わり方を調節することですが、特徴は、音を感じるとまるで80年代に流行ったフラワーダンスのようにブルブルと振動すること。そして近年、この振動が耳音響放射の発信源であることがわかったんです」(同氏)

静かなところでは、わずかな音をキャッチして約1,000倍に変換するという外有毛細胞。こいつが激しいダンスを踊った結果、くだんの“キーン音”が発生することがあるのだ…イライラの犯人、見つけたり! でも逆に、騒がしい場所では音の伝わり方を抑えるそう。たとえばパーティー会場でも会話がクリアに聞こえるのは外有毛細胞のおかげなんだとか。なんだか憎むに憎めない、オチャメなやつだ。
(耳鳴りの“キーン音”意外な発信源を発見!?)


耳鳴りは、一般的には「身体の内部以外には音源がないにもかかわらず、何らかの音の感覚が生じる異常な聴覚現象」と定義されています。「キーン」とか「ジー」という音で表されていることが多いようです。

ところが、患者さんの中には「頭の中が鳴っているという訴えをする人がいる」と表現される方もいらっしゃいますが、これを"頭鳴"と区別することもあるようです。ですが、一般的にはこれも広義の耳鳴りとして考えられています。

耳鳴は、大きく分けて他覚的耳鳴と自覚的耳鳴に分類されています。
他覚的耳鳴:身体内部に耳鳴となる明らかな音源がある場合で、患者の耳もとで耳鳴音を聞くことができる例もある。以下のような原因によって分けられる。
ゞ收耳鳴:軟口蓋痙攣に同期して聞こえるものが多い。他にも、耳管周囲筋やアブミ骨筋や鼓膜張筋などの中耳筋が原因となる例もある。普段は鳴らないが、歯をくいしばったり、開口したときなど下顎を一定の位置にすると耳鳴音が聞こえる。
血管性耳鳴:中耳や中耳近傍にある、血管の血流音を耳鳴として感じることがある。また、グロムス腫瘍や高位頚静脈球症など中耳腔の血管性病変や血管の走行異常が原因となることもある。
その他:上咽頭雑音や顎関節の雑音を耳鳴として感じることがある。

自覚的耳鳴:耳鳴りを訴えるほとんどの患者さんが、こちらに分類される。音源となる病変は、内耳や蝸牛神経などにあると考えられているが、第三者が聞くことができず、録音することもできない。

耳鳴りを伴う疾患としては、以下のようなものがあります。

感音難聴(内耳以降の感音器の障害が原因である難聴)をきたす疾患は耳鳴りを伴いやすく、50〜70%に耳鳴が合併すると考えられています。

たとえば、突発性難聴、Meniere(メニエール)病、低音障害型感音難聴などの急性内耳性難聴では、高率に耳鳴を合併します。ほかにも、騒音性難聴、音響外傷、ストレプトマイシンやカナマイシンなどの薬物中毒など、こうした内耳性難聴でも耳鳴りを合併することがあります。

ほかにも、伝音難聴(外耳・中耳のいずれか、または両方が原因で起こる聴覚障害)に伴う耳鳴があります。伝音難聴に合併する耳鳴症例の頻度は、感音難聴に比べるとやや低いですが、およそ20〜40%の症例に合併するといわれています。

たとえば、慢性中耳炎術後例や外傷性鼓膜穿孔例ではやや耳鳴合併例が多く、そのほか慢性・急性中耳炎、滲出性中耳炎などが原因となることもあります。

また、純音聴力検査(耳鳴を訴える患者さんには、ほとんどの症例で聴力検査が実施されます)では異常がみられないにも関わらず、耳鳴りを訴える場合を無難聴性耳鳴といいます。頻度は、すべての耳鳴症例の5〜15%程度であるといわれています。

こうした原因に対する分類があり、以下のように診断していきます。
耳鳴りの訴えがある場合、まず聴力の低下を伴うかどうかを確認します。聴力低下がない場合には血管雑音、さらには精神疾患の有無も考え、診断していきます。

問診をする上では、連続性、拍動性の有無、高音性か低音性かを訊くことが重要であり、鑑別に役立ちます。聴力低下を伴う耳鳴りは、耳性のものである可能性が高いと考えられます。特にそのようなめまい発作を繰り返す場合はMeniere(メニエール)病が考えられます。

治療は、それぞれの疾患について行います。たとえば、急性漢音性難聴の場合、難聴が軽快するにつれて耳鳴音も減弱し、難聴が治癒すると耳鳴も消失することが多いようです。

ただ、難聴が治癒した後も、耳鳴がしばらくの間消失せずに持続し、数か月かけて次第に減弱ながら消失する例も少なくありません。そうした例では、聴力の改善後も定期的な経過観察が重要となります。

上記のように、耳鳴の病態・発生機序が必ずしも明確ではなく、心因的要素の強いこともあり、いまだに基本的な治療法として確立されたものはありません。現在までの一般的治療としては、リドカイン静注、抗不安薬、循環改善薬、代謝賦活薬、筋弛緩薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬などが用いられているようです。

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