米フロリダ州のマイアミ大ジャクソン記念病院は21日、患者の胃や肝臓、小腸など6つの臓器を体外に取り出して腹部のがんを切除、その後体内に戻すという世界初の難手術に移植外科の加藤友朗医師らのチームが成功したと発表した。

同病院によると、患者は63歳の女性で、内臓の筋肉にがんの一種の平滑筋肉腫を発症。薬や放射線による治療で改善せず、太い動脈を巻き込んでいるため通常の手術では切除できなかった。

加藤医師らは、がんとともに胃と肝臓、膵臓、脾臓、小腸のすべてと大腸の3分の2を体外に取り出し、保存液で冷却してがんを除去。この後、必要な部分に人工血管をつなぐなどの措置をして臓器を体内に戻した。手術は15時間だった。加藤医師は6臓器を同時に移植したこともある移植専門医。
(日本人医師、世界初の6臓器取り出しがん切除)


平滑筋肉腫とは、平滑筋細胞に由来する悪性腫瘍のことです。平滑筋とは、構造的に横紋を示さず(横紋筋と異なる)、意志とは無関係に収縮、弛緩する筋のことを指します。消化管、気道、泌尿生殖道、脈管などの管壁の主要な構成成分となっています。

成人の軟部肉腫の発生率は10万人に2人と、稀な腫瘍です。軟部肉腫の種類は多く、30種類以上あります。たとえば、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫および脂肪肉腫の発生率が高く、他に横紋筋肉腫、皮膚線維肉腫、血管肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍などがあります。

平滑筋肉腫は、悪性軟部腫瘍の5〜10%を占めており、成人に好発します。脂肪肉腫や悪性線維性組織球腫に次ぐ発生率で、子宮、後腹膜、四肢発生、皮膚、下大静脈に発生します。後腹膜や下大静脈発生は中年の女性に多く、妊娠や女性ホルモンとの関連が指摘されています。

平滑筋肉腫は、後腹膜や腸間膜に発生することが多いといわれています。症状としては、無痛性の腫脹、腫瘤形成がほとんどです。痛みがないために放置されていることも多く、大きな腫瘤になってから受診することもあります。骨盤,大腿静脈に発生すると、下肢浮腫で発症することがあります。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
まず、MRIや造影CTにより、局所診断(腫瘍の性質や、広がりを調べる)を行います。

また、軟部肉腫は血行性転移しやすく、多くは肺に転移します(種類によっては、まれにリンパ節転移が起こります)。そのため、転移を調べるために、胸部、腹部のCT検査などを行います。特に、全身転移精査の目的で肺、肝臓CTなどが重要になります。

さらに、組織診断のための生検術をおこないます。切開生検をして、病理組織学的に調べ、腫瘍の種類(組織型)や組織学的悪性度(細胞の形や増殖能力から判断)を診断します。

こうした検査により、UICC/AJCCによるがんの病期分類がなされます。軟部肉腫は、組織学的悪性度、腫瘍径、腫瘍が発生した部位(表在性か深在性)、遠隔転移の有無により、病期が判断されます。

治療としては、根治的広範切徐が基本となります。悪性度の高い腫瘍では、化学療法や放射線療法を組み合わせて治療を行うこととなります。

上記のように、多くの臓器に腫瘍が存在しており、治療を行うことは大きな侵襲性を覚悟しなければならないと思われます。ただ、腫瘍のみを切除し、再び元に戻すということが可能になれば、それを軽減できるのではないか、と思われます。

手術の結果、再発の危険性なども高くなると考えられますが、はたしてどのような結果になるのでしょうか。化学療法単独などと比べ、どのような違いがあるのかなど、気になるところです。

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