読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
23歳の娘が会社の健康診断で「房室ブロック」と指摘されました。放っておいてよいのか、検査を受けた方がよいのか、迷っています。低血圧で時々立ちくらみがある以外は異常ないのですが……。(埼玉・57歳母)

この相談に対して、榊原記念クリニック副院長である伊東春樹先生は以下のようにお答えになっています。
心臓は電気刺激によって拍動していますが、「房室ブロック」とは、心房から心室への刺激の中継地点(房室結節)の障害です。

刺激が通過するのに時間がかかる「1度房室ブロック」、時々刺激が伝わらず、心房が収縮しても数回に1回は心室が動かない「2度房室ブロック」、さらに全く刺激が伝わらなくなる「3度(完全)房室ブロック」の3種類があります。

1度は、心室の収縮開始が若干遅れるだけで実害はありません。

2度には2種類あり、房室結節の上部で刺激がとぎれるウェンケバッハ型は、健康な若い方の特に睡眠中に見られることもあり、ほとんど問題ありません。ご質問の方は若いので、おそらくこれに相当すると思われます。一方、下部で刺激がとぎれるモービッツ型は、虚血性心疾患などが原因の場合が多いとされます。

3度は心室への刺激は全く伝わらないため、心室が独自に動いている状態です。脈は毎分20〜40回と非常に遅くなり、息切れやめまいなどの症状や、意識がなくなって倒れたり、突然死する危険もあります。

房室ブロックとは、「心房から心室への伝導が途絶または伝導遅延している状態」と定義されます。日常診療で、最も接する心電図異常の1つです。

原因としては、房室伝導系(房室接合部、ヒス束、左脚と右脚の両者)の器質的障害によるものや、副交感神経過緊張などによる機能的伝導遅延などがあります。簡単にいってしまえば、電気刺激の通り道が、何らかの原因で障害されて房室ブロックが起こる、というわけです。

洞調律時(リズムが規則正しい状態)の心電図で掬戞↓凝戞↓慧挧室璽屮蹈奪に分類されます。また、凝挧室璽屮蹈奪はさらにウェンケバッハ(Wenckebach型と表記する。モビッツ儀燭箸盡世錣譴)型とモビッツ(Mobitz)況燭吠けられます。

上記にある通り、掬戮亘室偲粗鎧間の延長のみを示します。

凝戮蓮∨室偲粗鎧間が徐々に延長し、心房興奮が1拍心室に伝導されず、その後これを繰り返すウェンケバッハ型ブロック、そして房室伝導時間の延長を伴わずに突然心室への伝導が途絶するモービッツ況織屮蹈奪があります。

慧戮蓮完全房室ブロックと呼ばれ、心房興奮がまったく心室に伝導されず、心房が補充調律(本来、電気刺激が起こるはずの洞結節より下部から興奮が発生し、心臓全体のリズムを支配している状態)となっているものを指します。

房室ブロックでは、徐脈となっています(心拍数は毎分50以下となることが多く、少ないほど重症)。心拍数が毎分40以上で、QRS幅が正常であれば、血行動態は比較的安定していることが多いようです。その場合、あまり治療を焦る必要はないようです。

掬挧室璽屮蹈奪では、ほとんど異常所見を認めません。
モービッツ型凝挧室璽屮蹈奪、慧挧室璽屮蹈奪などでは、徐脈による低拍出性状態(心臓がはたらきが弱く、血液が上手く送り出されない)となり、全身倦怠感、体動時息切れ、易疲労感、めまいをきたすこともあります。

また、房室ブロックから心停止を生じ、一過性の脳虚血発作による失神を起こすことがあります。これを、Adams-Stokes(アダムス・ストークス)発作といい、危険な状態です。

診断や治療としては、以下のようなものがあります。
診断は24時間測定のホルター心電図検査で比較的容易にできます。もし、2度のモービッツ型または3度の場合、または脈が遅くなってめまいや失神などの症状があれば、急いで循環器専門医を受診すべきです。

1度や2度のウェンケバッハ型で症状がなければ、通常は治療の必要はないので、様子を見ていてよろしいと考えます。

このように、12誘導心電図またはHolter(ホルター)心電図、モニターにて得られる心電図所見により、診断がつきます。ブロックの程度診断は心電図やホルター心電図によりなされ、ブロックの部位診断はHis束電位図記録(カテーテル電極を房室弁輪部に留置し、心腔内電位を記録することにより検査する)によりなされます。

発作性房室ブロックなどでは、その存在が疑われても心電図所見が一過性であれば、繰り返しホルター心電図を記録したりします。また、運動負荷試験やアトロピン負荷試験、心房ペーシング、クラスIa抗不整脈薬負荷試験など、房室ブロックを誘発して行う検査もあります。

薬物治療は効果不確実であり、副作用も懸念されます。伝導障害の治療の原則は、ペースメーカーとなっています(徐脈が、明らかに自覚症状の原因であれば)。

モービッツ(Mobitz)況織屮蹈奪は、原則としてペースメーカーの適応で、慧挧室璽屮蹈奪ではめまい、失神などの徐脈による自覚症状があればペースメーカーの適応となります。

上記のケースでは、恐らく自覚症状などもなく、問題も少ないのではないか、と思われますが、ご心配ならば循環器内科などを受診されることが勧められると思われます。

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