原因不明の心臓病「拡張型心筋症」と診断され、ドイツでの心臓移植手術を希望している秋田県横手市の岡部美里さん(30)を救おうと、美里さんの夫、武さん(33)がかつて所属したボクシングの大阪帝拳ジムの選手やOBが23日、大阪市都島区のJR京橋駅前で募金活動を行った。同ジムの元世界チャンピオン、辰吉丈一郎さん(37)も加わり、道行く人たちに協力を呼びかけた。

美里さんは昨年6月に突然体調を崩し、移植手術以外に助かる道はないと診断された。現在は症状が悪化し、東京都内の病院に入院している。

1人娘の沙耶乃ちゃん(4)がいる美里さんの「娘のために生きたい」という切実な願いをかなえようと、友人らが1月に「美里さんを救う会」を結成。今年5月までの渡航を目指して手術費用など計7,000万円を目標に秋田や東京で募金活動を続けている。

辰吉さんは「ボクも網膜剥離になったときはいろんな人に助けてもらった。何とか助かってほしい」と話し、首から募金箱を下げ、寄付してくれた人たちと丁寧に握手した。

問い合わせは同会0182-23-8270。募金の郵便局振替口座は18690−11255331、口座名「美里さんを救う会」。
(辰吉さんも協力、心臓病女性救う募金活動)


拡張型心筋症とは、左室あるいは両心室の拡張と収縮不全を呈する心筋疾患です。簡単に言ってしまえば、心筋が縮めずに、伸びきったゴムのようになってしまう状態になる疾患です。

そのため、心室の拡張と収縮不全によるうっ血と心拍出量の減少(心室、特に左心室のポンプ機能障害が起こり、血液を全身に送る機能が障害される)が起こります。

人口10万人に対して3〜8人の割合でおこると言われ、女性より男性のほうが多いようです。

原因は不明ですが、病因としてはウイルス感染との関連が注目され、心筋からPCR法など分子生物学的方法により、エンテロウイルスやC型肝炎ウイルスなどのウイルスゲノムが検出されています。

また、家族性の拡張型心筋症は20〜30%にみられ、連鎖解析により1q32,3q24,9q23,10q24との連鎖が報告されています。他にも、X染色体Xp21に存在するジストロフィン遺伝子異常、筋緊張性ジストロフィやミトコンドリア脳筋症でも拡張型心筋症の合併が知られ、異常遺伝子が同定されており、変異遺伝子産物が心筋異常をきたすものと考えられています。

臨床的には、主に心不全および不整脈に起因する症状が問題となります。他にも、左心室内血流うっ滞のため、左室内に血栓が形成されやすく、また心房細動の合併も多いため、血栓・塞栓症状をきたすことがあります。

心不全症状(左心不全、あるいは両心不全の身体的所見が観察される)としては、呼吸困難、心悸亢進、易疲労性、浮腫などが高率に現れます。重症例では安静時呼吸困難、起座呼吸、皮膚蒼白、チアノーゼ、頸静脈怒張、下肢浮腫を認めます頻脈や脈拍の微弱がみられます。

診断や治療としては、以下のように行います。
拡張型心筋症の診断には、心筋収縮不全と心室拡大を証明すること、ならびに特定心筋疾患を除外することが必要となります。

具体的には、脈拍は小さく速く(房室ブロックのない場合)、心電図でST-T異常を認め、心室性期外収縮が頻発し、聴診で非特異的全収縮雑音と奔馬調律、心エコー図で心内腔拡大と壁運動のびまん性低下をみるが弁膜の病変を欠く、といった場合に疑いは濃厚となります。

特定心筋症との鑑別としては、重症左室機能不全を伴う虚血性心疾患が重要となります。なぜなら、重症3枝病変を有する冠動脈疾患では、虚血が広範かつ徐々に起こった場合などでは、胸部痛などの症状があまり表面化せず、うっ血性心不全を主徴とする心拡張を示すことがあるからです。他にも、心筋炎や筋ジストロフィ、内分泌疾患、膠原病などの鑑別が必要になります。

拡張型心筋症の自覚症状などは、心不全と不整脈に起因するものが多いので、その治療も心不全と不整脈に対するものが中心となります。

心不全治療の原則は、まず危険因子の除去と生活指導に始まります。たとえば、高血圧やメタボリック症候群などの危険因子を治療し、喫煙やアルコール摂取の制限を行います。

薬物療法としては、症状がなくても、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与、およびβ遮断薬(初期に心不全増悪例があり、注意)の投与を考慮します。浮腫などの症状があれば、利尿薬を投与することもあります。

不整脈治療としては、心房細動、心室性不整脈などの合併例で主だった治療が必要になります。前者ではジゴキシンやワーファリン、後者ではメキシチールやアンカロン使用を考えます。心室頻拍に対しては、植込み型除細動器の有効性が認められています。

こうした治療に反応せず、重症となったケースでは、外科的治療が行われます。拡大した心臓の一部を切除して心室を縮小させることにより、心機能を改善させる左室部分切除術といった方法もありますが、今のところ明らかに有効な治療法は心臓移植しかありません。

適応条件としては、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA慧戮覆い鍬古戮ら改善しない心不全や、現在の治療で無効な致死的重症不整脈、長期間または繰り返し入院治療を必要とする心不全、などがあります。

岡部美里さんの「娘のために生きたい」という気持ちが理解され、多くの人の善意によって支えられて移植手術が実現されれば、と願っております。

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