脳死を宣告されてから4カ月、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、ザック・ダンラップさん(21)は意識を取り戻した。

三輪バギーで交通事故に遭ったダンラップさんは、11月19日、テキサス州ウィチタフォールズのユナイテッド・リージョナル・ヘルスケア・システムで脳死を宣告された。彼の家族は彼の臓器を提供することに同意した。

親族が最後の別れを告げにきたとき、彼は足と手を動かした。彼はポケットナイフによる足や爪への刺激に反応を見せ、48日後、家へ帰ることができた。現在も自宅で回復中だ。

ダンラップさんは、事故の記憶は何もないと発言している。
「事故が起こる1時間のことは少しだけ覚えています。6時間前のことは、ちゃんと覚えています」と、彼は言った。ダンラップさんは、自分が死んでいると医師が宣告したのを聞いたのを覚えているという。

CTスキャンの結果を見た父親のダグさんは、「活動が全くありませんでした。血流も」と証言している。

ダンラップさんの母親は、息子が「驚くほどよい調子」だというが、まだ脳外傷の回復に伴う記憶傷害が残っているという。「彼が完全に回復するには1年以上かかるかもしれません。でも、それは構いません。 どれだけ長くかかろうと、私たちは彼がここにいることを感謝しています」と彼女は語った。
(脳死宣告から4カ月後、意識を取り戻した青年)


脳死とは、脳全体が不可逆的に機能を喪失した状態を指します。自発呼吸はなくなり、人工呼吸器によらなければ呼吸は維持できません。

換気が保たれれば、自律性の高い心臓はしばらくの間拍動を続けますが、1〜2週のうちにこれも停止し(脳死状態は慢性化することはなく、通常、脳機能停止から1〜5日以内に心機能も停止する)、死の三徴候(心停止・呼吸停止・瞳孔散大)に合致する状態に移行します。

このように、心拍動があり体温も保たれている状態となっていても、これまでに脳全体の不可逆的な機能喪失状態から、生還した例はありません。ですので、脳死とは「蘇生限界点point of no return」を超えた状態と言え、脳死=個体の死と考えられています。

一方で、「植物状態」は,脳幹にある呼吸、循環などの植物性機能の中枢は生存しながら、両側大脳皮質が広範囲に重篤な障害を受けた状態です。簡単に言ってしまえば、「大脳皮質の死」と言えると思われます。

ただ、こちらの場合は精神活動は高度に障害されていても、呼吸は自力で維持されている状態です。つまり、蘇生限界点point of no returnはまだ越えていない状態です。

故に、上記のケースでは、4ヶ月もの期間が経過しており、脳死(brain death)というよりは植物状態(vegetative state)であったのではないか、と思われます。

脳死では脳に強い浮腫が生じ、脳幹部には小脳テントヘルニアによる二次性の出血がみられ、病理学的に血管内外で同時に赤血球の自己融解像が認められます。

赤血球の自己融解は、赤血球が血管外に漏出した場合と血管内で血流が停止した場合に限って生じる現象と考えられており、脳幹部に二次性出血が起こるのとともに、血流が停止していると考えられます。こうした血流停止に伴い、神経細胞が次第に死滅していくと考えられます(ただ、脊髄は心停止まで血流が保たれ、生存している)。

脳死の判定法としては、以下のようなものがあります。
前提条件としては、以下のようなものがあります。
・深昏睡である。
・原疾患が確実に診断されており、回復の見込みがない。

さらに、以下のような場合は、除外条件として脳死の適応からは除かれます。
・6歳未満の小児(ただし、法的な意思確認の関係上、15歳未満が事実上の除外条件となっている)
・急性薬物中毒
・低体温
・代謝・内分泌障害
・妊産婦
・完全両側顔面神経麻痺のある時
・自発運動、除脳硬直、除皮質硬直、痙攣が認められる時

上記の二条件を考慮した上で、以下の判定基準に従って脳死は判断されます。
脳死判定は移植に関係のない、脳死判定の経験のある2名以上の医師で行い、6時間後にも同所見であることが必要です。なお、脳死判定に先立って臨床的脳死判定する場合は1〜4を確認します。
1.深昏睡(JCS300またはGCS3)である。
2.瞳孔固定 両側4mm以上。
3.脳幹反射(対光反射、角膜反射、網様体脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳嗽反射)の消失。→よって失明、鼓膜損傷などでこれらが施行できない場合は脳死判定はできない。
4.平坦脳波(刺激を加えても最低4導出で30分以上平坦)
5.自発呼吸の消失(100%酸素で飽和したのち呼吸器を外し、動脈血中二酸化炭素分圧が60mmHg以上に上昇することを確認。脳に影響を与えるため、必ず最後に実施する)

2回目の判定が終了した時刻を死亡時刻とします。

脳死の患者は死亡したものと解釈すれば、生命の維持に必須の臓器を生体移植に準じた条件で摘出することが可能となります。ただ、そこに至るには脳死なのか、それとも植物状態なのかなど、上記ケースのようなことが起こらないよう、しっかりと検査や判断をする必要があると思われます。

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