以下は、三十万人からの奇跡〜二度目のハッピーバースディ〜で放送されていた内容です。

ラジオ局に勤務する直子(内山理名)は、仕事に追われる日々を送っていた。
ある日、直子は歯磨き中に口内から大量に出血してしまう。診察を受けた結果、医師の田村(渡辺いっけい)から、「慢性骨髄性白血病」と診断される。命を救うには、白血球の血液型・HLAの適合者から、健康な骨髄液を提供してもらう骨髄移植しかないことを告げられた。

しかし、当時の日本には骨髄バンクがなく、適合者を探すのは困難だった。そのため田村は、親子ではほぼ適合しないが、兄弟間なら4分の1の確率で適合することから、姉の検査を薦める。そして、慢性期から急性転化に移行すれば、移植はできず死を待つしかないことも付け加えられた。

直子は自覚症状がなく、病魔に侵されていることを受け止められず、愕然としていた。緊急入院した直子は、白血病の小学生・由美(美山加恋)と出会う。中学入学を控えた由美は、本当の病名を知らないまま治療に耐えていた。2人は、すぐに仲良くなった。

そんな中、職場の先輩・門脇(永井大)が見舞いに訪れる。門脇は、直子の元気な様子に安堵し、以前から彼女に想いを寄せていたことを告白。直子も同じく彼を好きだったことから、2人は付き合うことに。

さらに嬉しい出来事は続き、アメリカに住む看護師の姉・桂子(原千晶)が、骨髄検査のために帰国。検査の結果、直子のHLAと適合することが判明して、移植ができることに一同は喜ぶのだった。

そんなある日、由美のもとに三沢(内藤剛志)が見舞いにやってきた。
彼もまた白血病患者で、抗がん剤治療を終えて自宅療養中だという。驚くことに、白血病に苦しむ人々を救いたい一心から、日本初の骨髄バンク設立に向けて尽力していた。直子は、自分だけ移植できることに割り切れなさを感じ、由美のドナー探しのために、運動を手伝うことを決意。病院を抜け出しては、設立運動の会合に参加した。

ところが、不運な出来事が起こる。
桂子の髄液を精密検査した結果、わずかなズレが見つかり移植を見合わせることになったのだ。直子は生きる希望を失い、自暴自棄になる。骨髄バンク設立運動も投げやりになるが、白血病に侵されながらも、白血病患者全体のことを考えて骨髄バンク設立に向けて奮闘する三沢の姿に励まされ、再び行動を起こす。

そして、HLAを研究している医師・柿沢(中村梅雀)と出会い、直子は両親とHLAが適合している可能性があることを知る。 さっそく母・智代(竹下景子)が検査したところ、直子のHLAと適合して喜びに沸く。

ところが直子は、発熱とだるさを覚え、急性転化したことが判明。母は、適合したのに移植ができないことを嘆く。田村医師は、移植しても99%助かる見込みがないことを告げるが、他に命を救う方法がないことから、わずか1%の可能性にかけて移植を決断する。

そして直子は、移植に備えて投薬を受ける日々に入る。家族と恋人の門脇に支えられて治療に耐えるが、抗がん剤治療で髪は抜け落ち、激しい嘔吐に襲われて肉体はおろか、精神的に弱くなる自分と闘っていた…。

いよいよ骨髄移植の日がやってきた。直子は、HLAが適合した母親の骨髄液を移植されて手術は成功。術後の経過も順調で、3ヵ月後には退院できるまで回復した。直子は、生きていることに喜びを感じ、同じ病に苦しむ人々の為に、骨髄バンク設立に向けて奮闘する。

しかしその先にも、恋人・門脇との破局、由美のドナーが幸運にも見つかるものの家族の反対により断念、設立運動の中心的存在だった三沢の死…など、様々な出来事が様々な出来事が待ち受けていた…。


白血球や赤血球、血小板などの血液細胞を作る細胞を造血幹細胞といいます。この造血幹細胞が腫瘍化し、異常に増殖したものが慢性骨髄性白血病(CML:Chronic myelogenous leukemia)です。

頻度は10万人に1〜2人と比較的まれで、成人における白血病全体の約20%を占めます。中年以降(中央値は50歳代前半)に多くみられ、男女比は1.3:1でやや男性に多くなっています。

慢性骨髄性白血病は、白血病の発見のもとになった疾患でもあり、各種の成熟段階にある顆粒球(細胞のなかに顆粒とよばれる微粒子をもつ白血球を指す)を含む著しい白血球の増多と、脾腫が特徴的です。

つまり、分化能(未熟な細胞が成熟した細胞になる力)を持ちつつ、ゆっくり増殖するという特徴があります。慢性骨髄性白血病では、正常細胞のように分化して限りなく殖えるため、血球数が非常に増加します。一方、急性型の白血病は分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)傾向に乏しく、増殖が速いです。そのため、骨髄に芽球のままとどまるため、血液中の細胞は減少するという違いがあります。

発症の原因としては、DNAに傷がつきその修復がうまくいかないことがあります。結果、自然界にはない融合染色体ができ、増殖のスイッチが入って、その後、多段階に進行していきます。この融合染色体をフィラデルフィア染色体といい、転座によって、2つの染色体(9番染色体と22番染色体)の位置が入れ替わります。

その結果、22番染色体における BCR(breakpoint cluster region)遺伝子の一部は、9番染色体のABL遺伝子と融合してしまいます。こうして融合遺伝子が生まれるわけです。この融合遺伝子は、Bcr-Abl融合蛋白を生み出します。そうなると細胞増殖のシグナル伝達に異常が起こり、過剰な細胞増殖が引き起こされ、慢性骨髄性白血病となってしまいます。

症状は、慢性期、移行期、急性期(急性転化)で分けられます。慢性期の場合は無症状であり、「白血球数が異常に多い」といった健康診断による結果で偶然に発見されることが多くなっています。病気の進行とともに、血液中の白血球数と血小板数は増えます。その後、赤血球が減少し、次第に貧血になります。白血球数が増加するに従って、全身の倦怠感や、脾腫および腹部の膨満感などが現れます。

急性転化とは、大多数の慢性骨髄性白血病の末期に出現する、急性白血病に酷似した臨床症状、血液像を示す病態をいいます。骨髄、末梢血中の芽球が30%以上に増加します。急性転化時には、発熱や腹部膨満感(脾腫)の進行、四肢の神経痛様疼痛、骨痛、出血傾向、貧血などの症状をきたします。白血病細胞が骨髄以外の場所、たとえば骨やリンパ節に腫瘤を形成することもあります。
慢性骨髄性白血病の治療としては、以下のようなものがあります。
慢性期CMLの治療法には、薬物療法と造血幹細胞移植があります。特に、「グリベック」という薬により、治療選択が大きく変化しました。

グリベック(メシル酸イマチニブ)は、慢性骨髄性白血病の病因となるBCR-ABLチロシンキナーゼという酵素のはたらきを阻害(Abl蛋白に結合し、Bcr-Abl融合蛋白の機能を阻止する)します。その結果、骨髄のがん細胞の異常増殖を止めることができると考えられています。1日1回の内服を行い、主な副作用は投与初期の血球減少です。

ただ、このグリベックが利く場合と、そうでない場合があります。イマチニブ耐性の機序は大きく分けて二つあり、一つはBCR/ABL非依存性に起こるもので不可染色体異常によって引き起こされます。もう一つはBCR/ABL依存的な機序でBCR/ABL蛋白の増加、BCR/ABLキナーゼ領域内の点変異などがあげられます。多くは後者の「BCR/ABL依存性」で、BCR/ABLキナーゼ領域内の点変異によりBCR/ABL自体がイマチニブに耐性となって生じる場合が大部分であることが最近明らかにされています。

病気がグリベックに耐性を持って薬が効かないと考えられる場合は、同種造血幹細胞移植が適応となります。
同種造血幹細胞移植とは、(血縁者・非血縁者をドナーとして)採取した正常な骨髄液を、患者さんの静脈から輸血のように体内に入れ、破壊された造血幹細胞と入れ替えます。一般的には、骨髄移植によって、造血幹細胞を多く含む骨髄を採取・輸注することで行います。ただ、最近では、末梢血あるいは臍帯血もその細胞ソースとして用いられており、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植とよばれています。

造血幹細胞移植に先だっては、前処置が必要となります。前処置とは、7−10日前から患者には腫瘍細胞の根絶と拒絶の防止を目的に行われます。ただ、同種移植では、移植後に起こる移植免疫反応に伴う抗腫瘍効果があることが確認されており、最近では従来の造血幹細胞移植のように骨髄(造血)を破壊するような強力な化学療法、放射線照射も盛んに行われています(骨髄非破壊的前処置)。

同種移植では、移植後の免疫反応に伴う合併症(拒絶や移植片対宿主病:GVHD)を回避するため、組織適合抗原(HLA抗原)が完全にあるいはほぼ完全に一致したドナーを必要とします。ドナーになる方は、原則として兄弟姉妹または肉親(約30%の割合で適合)ですが、血縁者にドナーになる方がいなかったり、適合しない場合、骨髄移植推進財団による「骨髄バンク」でドナーの方を探すこともできます。

移行期/急性期になると、上記のように急性白血病に準じた化学療法が施行されます。多くの場合は無効で効果が得られても一時的なことが多いです。造血幹細胞移植を用いても長期生存率は5〜30%と低いといわれています。

現在、日本臍帯血バンクネットワークを介して、オンラインで全国11か所の臍帯血バンクに保存されている臍帯血の適合度と細胞数を検索することができます(2008年03月26日現在の総公開本数:29,193)。

今後も、より多くのドナー登録者数が増え「二度目の誕生日」を迎えられることを願っております。

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