三重大病院(津市)は3日、先天性の混合型総肺静脈還流異常という心疾患を抱えた生後1カ月余りの赤ちゃんの難手術に成功したと発表した。赤ちゃんは女の子で手術時に体重1574グラムと非常に小さく、病院は「これほどの低体重で、複雑な心疾患の乳児を救えた例は極めてまれ」としている。

術後経過は良好で、自力呼吸しミルクが飲めるまでに回復。母親も抱くことができる状態という。

執刀した心臓血管外科の新保秀人教授らによると、赤ちゃんは2月14日に別の医療機関で生まれたが、チアノーゼや呼吸不全などの症状があり三重大病院に転院。肺で酸素を取り込み心臓の左心房を通って動脈に送られ全身に循環するはずの血液が、静脈に混ざり込み循環しなくなる心疾患と判明し、3月中旬、異常のあった血管を左心房につなぎ合わせる手術をした。
(先天性心疾患の乳児、難手術成功 三重大、回復しミルク飲む)


総肺静脈還流異常症(TAPVC)とは、すべての肺静脈が、本来は左心房に還流するのですが、別の場所である上大静脈、門脈、右心房など体静脈に還流している先天性心疾患です。全先天性心奇形の1〜2%にみられます。

酸素化された血液が流れる肺静脈のすべてが、最終的に右心房に還流するため、体・肺循環すべての血流が右心房に集まることとなります。

したがって、生存には酸素化された血液が全身に送られることが必要であり、右心系と左心系の間に交通があることが必須となります。心房間交通が比較的保たれている場合は、生後の肺血管抵抗の低下に伴い徐々に肺血流が増加し、体血流も徐々に制限されてきます。心房間交通が狭い場合は、さらに体循環維持が困難となってしまいます。

ダーリン(Darling)分類で、肺静脈の還流部位によって次のように分けられています。
・上心臓型(無名静脈、上大静脈、奇静脈)
・傍心臓型(右房、冠状静脈洞)
・下心臓型(門脈、肝静脈、下大静脈)
・混合型(上記の3型の混合)

この4つに分類されており、上記では混合型にあたる症例のようです。

総肺静脈還流異常症の多くは、乳児期早期に多呼吸、チアノーゼで発症します。これは、上記のような血行動態があるため、十分に酸素化された血液が流れていないことにより起こります。

また、総肺静脈還流異常症では、肺静脈の狭窄を伴う場合が多く、肺静脈圧上昇からの肺うっ血と、反応性抵抗血管収縮がもたらす肺高血圧による肺血流低下の2つの状態が混在する状態となります。結果、非常に不安定な循環動態となり、著明なチアノーゼとなってしまいます。

治療としては、以下のようなものがあります。
手術の前では、’戮Δ歎譴侶攜困函↓∈舷看鐔侘未粒諒櫃基本となります。

肺うっ血の軽減には、適度な利尿薬投与、呼吸症状の強いものには適度なPEEP(呼気終末陽圧型人工呼吸)による人工呼吸管理が必要となります。

酸素投与は肺血管抵抗を下げ、肺血流増加を助長するといわれているので、原則禁忌となっていますが、肺静脈狭窄が強くチアノーゼが著明な症例では救命的に酸素投与が必要となることもあります。

体血流維持のため、狭小化した動脈管を開かせる目的でプロスタグランジン製剤投与が必要になることもあります。体血流の確保には、α作用を有するドパミンのほか、強心薬としてドブタミンが適応になります。

ただし、診断をつけ、患者を安定化した後、あるいは安定化が困難と判断した場合、できるだけ速やかに外科的治療を行うことが重要となります。手術は、肺静脈と左房の吻合術を行います。簡単に言ってしまえば、肺静脈を本来あるべき左心房につなぎ直す手術を行います。

手術も無事終了し、術後の経過も良好のようです。低体重、しかも先天性心疾患の乳児を救うことができた、ということであり、幸運なこの赤ちゃんが、これからも健やかに育って欲しい、と思われます。

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