3月31日発売の米誌ニューズウィークが、第三者の子供を産む「代理母」に、軍人を夫に持つ女性が志願するケースが急増していると報じた。テキサス州やカリフォルニア州では、代理母の半数を占めるという。

「米兵は給与も格安で、新兵の年間基本給は最高でも約2万9000ドル(約290万円)。自衛隊員の平均給与の半分以下で、中には年収2万ドル未満の兵士もゴロゴロいます。これに対し、代理母への報酬は、2万〜2万5000ドル(約200万〜250万円)」(在米ジャーナリスト)

仲介業者も心得ており、米軍向け新聞などに代理母の募集広告が目立つという。
(代理母の半数は「米兵の妻」稼ぎは夫の年収分)


2008年01月、日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」の作業部会が、代理出産を新法で禁止すべきだとする報告書素案をまとめました。

素案では、夫婦の精子と卵子を用いた代理出産について検討し、代理母となる女性が被る身体的・精神的負担や、生まれてくる子供の心に与える影響などの問題があり、代理母が危険を承知で引き受けたとしても「自己決定が十分といえるか疑問がある」としています。結果、営利目的での代理母出産に対して、実施に処罰を検討する、といった内容になっています。

代理母出産については、生殖補助医療の進展を受けて日本産科婦人科学会が1982年10月に決定した「会告」により、自主規制が行われているため、国内においては「原則」として実施されないことになっています。

ところが、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、国内初の代理母出産を実施し、2001年5月にこれを公表しています。こうした代理母出産を巡る動きを受け、厚生労働省の審議会が2003年にとりまとめた『精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書』および、日本産科婦人科学会の会告によって、規制の方向に乗り出しています。

代理出産とは、妻の生殖器に異常があるため妊娠や出産ができず(先天的に子宮を欠損している女性や子宮摘出を受けた場合)、第三者の女性と代理母契約を結び、夫の精子で人工授精し子供を生んでもらうことを指します。

方法としては、体外受精(IVFと略されます。In Vitro Fertilizationのことです)にあたり、通常は体内で行われる受精を体の外で行います。卵子を採取し(採卵)、体外で精子と受精させ(媒精,顕微授精)、培養した胚を子宮腔に戻す(胚移植)という作業が行われます。

一般的な妊娠同様に、子宮外妊娠が起こる可能性もあります。子宮外妊娠とは、受精卵が本来着床すべき子宮の内腔以外の場所に着床し生育した状態を指します。発生部位は卵管妊娠がほとんどで、98%以上を占めています。中でも80%は卵管膨大部妊娠であるといわれています。

さらに、体外受精の問題点として、以下のようなことが指摘されています。
まず、妊娠異常をめぐっては米疾病対策センターが約16万人の調査で、体外受精では胎盤早期剥離の割合が自然妊娠の約4倍との結果を発表しています。さらに、聖路加国際病院の酒見智子医師らがまとめた研究によっても、同様のことが指摘されています。

国内における調査では、平成15年8月から18年3月に出産した、自然妊娠の2,454人(妊婦は平均約33歳)と、体外受精による妊娠195人(同約38歳)が対象。同病院での体外受精は40人で、残りは外部での実施だった。

胎盤早期剥離は自然妊娠の0.53%に対し体外受精では2.56%。通常は子宮の上部にある胎盤が下の方にできてしまう「前置胎盤」は、同0.57%に対し5.64%。へその緒が胎盤ではなく、卵膜につく「臍帯卵膜付着」という異常は、0.53%に対し5.67%だったそうです。体外受精の妊婦の方が高齢のため、その影響もあり得ますが、年齢差を補正して分析しても異常は体外受精の方が有意に多かったようです。

こうした事柄が、しっかりと代理出産を行う女性に伝えられているのかといったことや、その補償はどうあるのかといったことなど、やはり大きな問題がそこにはあるように思われます。

一方で、「子供が欲しい」という妊娠・出産が難しい女性の強い希望もあるでしょうが、代理出産が一般的に行われる段階にはないようにも思われます。

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