パナマの3名の医師が3日、7時間かけて、10歳の男の子の左手と左腕の接合手術を行った。男の子は6年前、転んだ衝撃で、腕と左手が切断された状態になっていたという。
執刀医の1人によると、彼らは男の子の腹部の腱を、すでに退化している男の子の腕と手の部分の筋肉として移植し、関節は直径2ミリの鉄製の釘で固定した。

この男の子は4歳のとき、転んだ衝撃で左手の腱が裂け、靭帯が萎縮、腕と手の指の骨も砕けてしまい、腕と手はほとんど切断された状態となっていたという。
(腕と手を切断した少年、6年後に接合手術成功)


手指を切断した外傷には、完全に遊離している完全切断と、一部でも軟部組織の連続性があり、かつ血行再建の必要な不全切断とに分けられます。上記のケースでは、完全に切断されていたわけではなく、不全切断の状態であると思われます。

不全切断の場合には、損傷創部から末梢の手の動きや知覚神経分布などから、手術などで局所麻酔を行う前に、損傷されている部位がどこなのかといったことを解剖学的に想定することが重要です。駆血によって出血を十分に止めてから、創部を展開して、合併損傷の有無を確認します。

こうした場合、手術(切断指・肢再接着術)により治療が行われます。1960年代に臨床に応用され、すでに40年近くが経過しており、「どこまで機能指・肢に戻せるか」といったことが重要視されています。

切断指・肢再接着術は、日本ではおよそ年間6,000例近い手術が行われ、その生着率はおおむね85〜96%と報告され、広く普及したといえると思われます。ただし、切断指・肢再接着術には、microsurgery(マイクロスコープ下に行う非常に微細な部分の外科的手術)の技術が不可欠であるため、専門医への転送が必要となります。

治療としては、以下のようなことが重要となります。
完全切断の場合、まずは生理食塩水に浸したガーゼに切断指を包みビニール袋に入れ、氷の入ったビニール袋に直接切断指が触れないようにして、冷却して専門医の所へ搬送します。

上記のケースのように、一部でも軟部組織で連続し、血行再開を要する場合は、不全切断と呼びますが、こうした場合には、血行の途絶した部分をビニール袋に入れた氷で間接的に冷やし、中枢部を確実に止血して、接合面を乾燥させないように生理食塩水で浸したガーゼに包んで専門医の元へ搬送します。

一刻も早く搬送することが重要ですが、一般的には10時間以内が手術適応となります。長時間、阻血状態にあった後には(特に筋肉を多く含む切断肢では)、高カリウム血症、ミオグロビン血・尿症、急性腎不全、アシドーシスが進行するため、集中治療管理を要します。

6年経過したということもあり、機能の回復は難しいのではないか、と思われますが、自分の手が再び戻った、ということは心理的に大きな意味があるのではないか、と思われます。

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