女優の大場久美子さん(48)が、8年間もパニック障害に悩んでいたことを女性誌で告白した。治療薬の副作用でひどい鬱症状になり、自傷行為にも走ったのだという。誰にでも起こり得る障害のようだが、パニック障害とは、いったいどんなものなのか。

大場さんが告白したのは「婦人公論」(中央公論新社刊)の08年4月22日号。異変に気付いたのは8年前の40歳のときで、突然動悸が激しくなり、ひどい倦怠感に襲われた。一度不安状態に陥ると体が硬直し、人ごみが怖くて街を歩くことができず、電車にも飛行機にも乗ることができない。車で渋滞にはまると叫びたくなり、美容院で顔にタオルをかけられるのもダメだった。個室で空調の音を聞いただけで動悸が始まり、冷や汗が出て呼吸ができなくなってしまうこともあったのだという。

心療内科医を知人から紹介され、パニック障害という診断を受ける。医師から「焦らずに少しずつ治していきましょう」という言葉をかけられ、マネージャーの助けなどもあって07年夏ころには克服の1歩手前まで来たそうだ。しかし、早く完全に直したいという焦りから、他の病院にも通院。副作用のある薬を飲んだためにひどい鬱になってしまった。自分をコントロールすることができなくなり、自傷行為を起こしてしまったこともあったのだという。現在は、その薬を止め「すっかり元気」になっているのだそうだ。

テレビ朝日系「スーパーモーニング」(08年4月7日放送)では大場さんの話題が取り上げられ、医学博士の中原英臣さんがコメンテーターとして登場。パニック障害は誰にでも起こり得るもので、女性が男性の2倍も発症していると説明した。

動機、吐き気、めまいなどが突然起こり、一度訪れた場所に行くとまた起きるのではないかという「予期不安」が繰り返されるとパニック障害に至るのだという。自分が自分で無いような感じや、自分はこのまま死んでしまうのではないか、という恐怖感に見舞われても、

「どんな感じになっても命に関わることではない。数分から数十分で(そうした感覚は)消えていく。専門医やカウンセリング、薬もあり、時間が掛かることもあるが、基本的に直ります」と中原さんは話していた。
(大場久美子8年間も悩んだ 「パニック障害」って何?)


パニック障害とは、パニック発作が特別の原因なしに、突然出現する(予知できずに起こり、反復性)障害と言うことができると思われます。

パニック発作は、動悸・頻脈、息苦しさ・過呼吸、死の恐怖が最も多く、そのほか悪心、めまい感、手足のしびれ、冷汗、気が狂う恐怖なども起こりえます。大きく分けて、突然の強い不安感(死ぬのではないか、気が狂ってしまうのではないかという恐怖)と自律神経症状(動悸、頻脈、呼吸困難、発汗、息切れ、胸腹部不快など)が起こる、と考えられます。

こうした発作は反復性に生じ、慢性に経過していきます。症状の再発を恐れる「予期不安」を伴うことが多く、さらに発展して広場恐怖に至ることも多いです。

広場恐怖とは、助けが容易に得られない場所にいることへの恐怖です。1人で戸外や混雑の中にいたり、バスや電車で移動しているときに起こることが多いようです。このような状況を回避するため、1人では外出をしなくなったり、重度になると家にこもりっきりになってしまうこともあります。

1回の発作は通常数分〜30分、長くとも1時間以内に自然に消失します。発作が反復するうちに予期不安が形成されます。

一般人口における生涯有病率は、岩田昇らによる地域調査では0.9%であり、患者さんの約7割は発作で救急外来を受診しているようです。男女ともに起きますが、女性の罹患率が2倍程度高いといわれます。好発年齢は、20〜40歳であるとのことです。俳優の岡田義徳さんや長嶋一茂さんも、パニック障害を抱えていたと告白しており、決して稀な病気ではないといえるでしょう。

治療法としては、以下のようなものがあります。
治療としては、まず疾患教育を十分に行い、発作そのものに生命の危険はないことを保証する(しっかりと納得してもらう)ことが重要です。それでも不安状態がなかなか治まらない場合は抗不安薬(ジアゼパム)を静注することもあります。こうした発作が出現する時のために、抗不安薬(ワイパックスなど)を持参してもらうことも、安心につながるようです。

他には、薬物療法と精神療法があり、様々な治療が有効性を認められています。薬物療法では、発作の抑制を目的に抗うつ薬(SSRIや三環系抗うつ薬・スルピリド)が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系抗不安薬が用いられます。精神療法としては、認知行動療法などがあり、

これらの薬物には明確な有効性があり、特に適切な患者教育と指導と併用した場合の有効性は極めて高いといわれています。また最近は、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いです。基本的に、パニック発作が治療されれば、広場恐怖も時間とともに改善されることが多いようです。

いくら精神科への敷居が下がりつつあるとはいえ、精神的な問題を口にしたり、病気に向き合うことにはやはり抵抗があると思われます。そうした中、メディアに登場する人たちが声を上げてくれることは、同じ病気に悩む方々にとって、励みになるのではないか、と思われます。

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