以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

高校生の頃、大笑いした時にごく少量の尿漏れを経験したK・Tさん(40)。でもそれは年に1回あるかないかという程度のごくささいなものでした。

それから18年、結婚し出産を経験した3年後、くしゃみや咳をした時に小さじ一杯程度の尿漏れが始まったK・Tさん。病状は瞬く間に悪化。1週間に3、4回と尿漏れを繰り返すようになり、3ヶ月後にはトイレに向かう一歩一歩ごとに漏れ、自分の意思ではどうにも出来ない状態になってしまいます。

こうした症状は、腹圧性尿失禁といいます。
腹圧性尿失禁とは、咳、くしゃみ、笑った時、重いものをもった時など、急に腹圧が加わった時、不随意に尿が漏れる状態を指します。簡単に言ってしまえば、自分の意思に反して、お腹に力を入れた時などの腹圧で尿が漏れ出してしまう病気です。

多産婦や高齢女性にみられることが多く、40代〜50代の女性に特に多いといわれています(男性では稀)。そもそも、膀胱を始め子宮・直腸などの臓器は、「骨盤底筋」という腹部の一番下にある筋肉や靱帯によって支えられています。女性の骨盤底筋が、お産(経腟分娩)や内分泌環境の変化によって脆弱化し、弛緩することが原因であると考えられています。

本来ならば、膀胱はしっかり支えられ、尿道も締め付けて尿が漏れることはありません。弛緩が進行すると、膀胱や尿道が不安定に動くようになり、ささいな圧力がお腹にかかっただけで尿が漏れるようになってしまいます。

腹圧性尿失禁では、膀胱や尿道を固定することが出来ずに下がってしまい、大きく変形してしまいます。尿道を締め付ける力もしっかり伝わらず、尿道を閉じることが出来ずに漏れ出てしまう、というわけです。さらにこの状態を放っておくと、膣口から子宮が飛び出す「性器脱」と呼ばれる状態になってしまいます。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
まず、腹圧性尿失禁の特徴としては、女性に多く、咳や歩行、運動などで腹圧がかかったとき失禁します。夜間睡眠中には失禁がみられない、ということも特徴的です。

尿失禁の鑑別を進める上で、一般的に尿検査や膀胱の超音波検査などがありますが、特に腹圧性尿失禁では、パッドテストなどが行われます。

パッドテストとは、腹圧性尿失禁に対して行われる失禁定量テストです。患者さんには、重量を測定したパッド(生理用ナプキン)を装着した後、膀胱に腹圧がかかるような運動(階段の昇降,ジャンプ,速足歩行,咳)を約1時間やってもらいます。

終了後に再びパッド重量を測定します。運動負荷前後のパッド重量の差が、失禁量となります。この失禁量によって腹圧性尿失禁の重症度が判定され、治療方針が決定されます。2.0g以下が正常であり、2.1〜5.0gで軽症、5.1〜10gで中等症、10g以上で重症となります。

軽症から中等症までは保存的療法が適応となり、これには骨盤低筋強化体操、電気刺激療法およびクレンブテロール(β2受容体刺激薬)の内服などがあります。重症例(失禁量が10g以上)には、一般に手術療法が選択されます。

手術は、経腟的膀胱頸部吊り上げ術および経腟的スリング術が主流となっています。また、高齢者や括約筋不全をもつ症例には、コラーゲン注入療法が行われることもあります。

成人女性の約20%、高齢者の10〜15%が尿失禁を有するといわれてますが、恥ずかしいと思って、なかなか受診することもできないで悩まれている患者さんもいらっしゃるようです。ですが、お困りの場合は、思い切って泌尿器科や産婦人科などを受診されることが重要であると思われます。

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