鬱病や鬱状態の可能性がある人の4人に1人しか医療機関にかかっていないことが、ファイザー社のインターネット調査で分かった。受診への抵抗感がいまだ根強いことが浮き彫りになった形だが、家族や友人らに相談することで、受診率は大幅に向上した。

調査に協力した中込和幸鳥取大教授(精神行動医学)は「自分が鬱だという判断は難しく、家族や同僚、かかりつけ医など周りの人が気付くことが重要」としている。
 
調査は、鬱の認識などに関する一般の人を対象とした調査と、治療実態や満足度に関する患者調査の2種類。昨年2月と3月、それぞれ4000人、1000人を無作為抽出し実施した。

質問表によるチェックでは、一般の人の約12%が鬱病・鬱状態に該当。このうち実際に受診した人は24%で、重症者でも53%と約半数が未受診だった。未受診の理由は「必要性を感じない」のほか、「医療機関への不信感」「周囲に知られたくない」「病気と診断されることが不安」が多かった。誰にも相談しなかった人の受診率が15%なのに対し、相談した場合は83%と6倍近い差が出た。

患者調査では、約7割が精神科や心療内科などの専門医、約3割が非専門医を受診。治療の満足度は、治療全般や病気・薬剤についての説明で専門医の方が高いものの、副作用の少なさでは非専門医の方が高かった。

かかりつけ医を受診している人は、非専門医でも比較的満足度が高かった。
(「鬱」受診は4人に1人! 大幅に向上)


うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します。

最近の疫学研究によると、生涯有病率20%などと報告されています。女性2:男性1と女性に多く、更年期に発症する頻度が高いという特徴があります。

うつ病の病因はまだ明らかではありませんが、これまでの研究からは神経伝達系、特にセロトニン神経系とノルアドレナリン神経系の関与が考えられてきました。これら脳内におけるアミン代謝の異常が想定されています。

治療を要するうつ状態(うつ病)の診断には、国際疾病分類の診断基準(ICD-10)や米国精神医学会診断基準(DSM-?)があります。

DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。

DSM-犬梁腓Δ追促┘團宗璽匹旅子としては
〕泙Δ諜な
興味または喜びの喪失
B僚展詐
ど毀
ゾ覗腓泙燭論止
Π徃莽性または気力の減退
無価値感または罪責感
┿弭洋呂篏乎耄呂慮座爐泙燭老菽悩て
希死念慮、自殺企図

の9つの症状のうち5つが2週間の間に同時期に存在し、かつそのうち少なくとも1つは?または?であることとされています。

最近の傾向としては、身体症状を前景とする軽症うつ病(仮面うつ病)が増加しているそうです。うつ病の8割が、一般診療科を受診するという報告もあります。身体に多彩な症状がみられ、症状の部位によって、多くの診療機関を受診(いわゆるドクター・ショッピング)しています。

よくある症状は、「睡眠障害」「全身倦怠・疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」の3つです。うつ病と診断された患者が初診時にどのような身体症状を訴えていたかを調べた結果(新臨床内科学第8版)、消化器症状が63%と最も多く、次に循環器症状20%、呼吸器症状14%、泌尿・生殖器症状6%、運動感覚器症状4%でした。

中でも、うつと消化器症状はきわめて関連が深いそうです。うつ病に伴う消化器症状として食欲不振78%、体重減少56%、便通異常44%、ガス症状33%、悪心・嘔吐29%、咽喉頭部・食道の異常感26%、腹痛23%、胃部不快感20%、口内異常感14%、胸やけ・げっぷ10%などが認められています。

治療としては、以下のようなものがあります。
うつ病とは、いわばエネルギーが枯渇し、疲弊した状態であるといわれています。そのため、消耗を避け、エネルギーの蓄積・回復を図るのが治療の基本となります。

まずは、希死念慮の程度を確認し、必要なら行動制限・行動監視を行います。危ないものを身辺に置かない、家族に付き添ってもらう、といったことが必要です。身体管理としては、脱水・低栄養状態などに必要な補液・栄養補給を行います。

休養は重要であり、安静や睡眠の確保を行います。焦燥感が強い場合は、鎮静作用の強い抗精神病薬であるレボメプロマジンなどを適宜併用して、安静・睡眠確保を図ります。

薬物療法としては、抗うつ薬により抑うつの改善を図ります。また、精神療法として病気としてのうつ状態の説明、予後の保証、治療の必要性、経過の見通し、治療内容・薬物の説明を繰り返しわかりやすく伝えることが重要です。

抗うつ薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるマレイン酸フルボキサミン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である塩酸ミルナシプラン、モノアミン再取り込み阻害薬である塩酸アミトリプチリンなどがあります。

抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

注意点としては、「がんばって元気を出すように」との叱咤激励や安易な気分転換・旅行をすることを勧めるのはしてはなりません。また、重大な決断(退職・離婚など)はできるだけ先送りすることなども重要です。その点も、ご家族や周囲の人に理解していただく必要があります。

「腹痛や片頭痛、耳鳴り、腕のしびれなど、症状はあるのに原因がわからず、治療をしても症状が改善されない」といったことの原因が、実はうつ病にある、ということもあります。睡眠障害をはじめとして、疲れやすい、食欲不振、頭痛などの症状が現れた場合、精神科を受診してみる、というのもいいかもしれませんね。

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