JR岡山駅で2008年3月、岡山県職員假谷国明さん(38)をホームから突き落とし死亡させた少年(18)は、広汎性発達障害の一種「アスペルガー症候群」だった、と各紙が報じた。これに対し、「障害名を出すことはいらぬ誤解を生む!」と関係団体は激怒。ネット上には「発達障害児(者)を犯罪予備軍みたいに言うのはやめて」などのカキコミが出ている。

「アスペルガー症候群」とは自閉症の一つで、高機能自閉症、高機能広汎性発達障害と殆ど同じ意味で使われることがある。症状は人様々だが、知的に問題はないものの、他の人との社会的関係をもつことが難しいのが特徴だ。周りから浮いてしまったり、社会的ルール(暗黙の了解)がわからず素直に「本当のこと」を言ったりもする。想像力に欠けるものの、集中力が高く、機械的記憶力が優れていることも多い。
(「アスペルガー症候群」って何?)


自閉症とアスペルガー障害は、ともに広汎性発達障害に属する障害です。自閉症は、
ー匆馘相互反応における質的異常
▲灰潺絅縫院璽轡腑鵑亮租異常
制限された常同的で反復的な興味や活動

の3つを必須症状とします。アスペルガー障害の場合は、この3つの症状のうちで、言葉の文法的側面には遅れはほとんど認められませんが、言葉の使い方やイメージ機能に遅れや偏りがあることが特徴的です(ICD-10の診断基準では、2歳までに単語、3歳までに意思伝達に2語文を使うなど、早期の言語発達はほぼ正常でなければならない、とされています)。

ー匆馘相互反応における質的異常は、自閉症と同様の診断基準であり、以下のようなものを含みます。
(a)視線・表情・姿勢・身振りなどを、社会的相互関係を調整するための手段として適切に使用できない。
(b)機会は豊富にあっても精神年齢に相応した)友人関係を、興味・活動・情緒を相互に分かち合いながら十分に発展させることができない。
(c)社会的・情緒的な相互関係が欠除して、他人の情動に対する反応が障害されたり歪んだりする。または、行動を社会的状況に見合ったものとして調整できない。あるいは社会的、情緒的、意志伝達的な行動の統合が弱い。
(d)喜び、興味、達成感を他人と分かち合おうとすることがない。(つまり、自分が関心をもっている物を、他の人に見せたり、持ってきたり、指し示すことがない)。

▲灰潺絅縫院璽轡腑鵑亮租異常とは、
(a)話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない)
(b)十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著名な障害
(c)常同的で反復的な言語の使用または独特な言語
(d)発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性をもった物まね遊びの欠如

制限された常同的で反復的な興味や活動は、
(a)強度のまたは対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること
(b)特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである
(c)常同的で反復的な衒奇的運動(例:手や指をパタパタさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き)
(d)物体の一部に持続的に熱中する

といったことを含みます。自閉性障害および、アスペルガー障害の主な診断基準には共通する部分も多く、社会性の発達の欠如や、物・行為への固執などがみられます。

診断は2歳過ぎより可能となりますが、知的に遅れのない高機能自閉症や、アスペルガー障害では小学校低学年以降と遅れることがあります。その後、年齢とともに社会生活に適応できることが多くなるようですが、一方で合併症が出現したり、いじめの対象となったり、不登校などの原因ともなってしまうようです。

治療方針としては、以下のようなものがあります。
年齢と認知の発達段階を考慮して治療計画を立て、主に家族や本人の悩みを受け止めることが基本となります。適応を達成するためにはTEACCH(Treatment and Education of Autistic and Related Communication-handicapped Children)も効果があるといわれています。

TEACCHとは、「自閉症及び関連するコミュニケーション障害の子どものための治療と教育(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped CHildren)」のことであり、自立を目指したプログラムを一般的には指すようです。自閉症の人達の特性を文化ととらえ共に生き、共同治療者として親の立場・意見を尊重し、連携することを基本理念においています。主に行動療法によって、自立する道を探っていくようです。

異常行動を標的として、薬物療法が行われることもあります。標的となる随伴症状には、興奮、不穏、不眠、こだわり行動、多動、自傷、常同行動、パニック(かんしゃく)などがあります。また、思春期以降では、対人関係の困難に伴う適応障害と合併症が標的となります。

具体的には、興奮などの随伴症状に対して抗精神病薬であるリスペリドンやハロペリドール、抑うつ状態・強迫症状あるいは反復症状に対してSSRI、多動や注意障害に対して塩酸メチルフェニデート、かんしゃく発作、衝動性、気分変調に対して抗てんかん薬であるカルバマゼピンなどが用いられます。

報道のあり方によって、要らぬ偏見を植え付けてしまう、といった危惧される方もいらっしゃるのでしょう。特に、障害になやむ方やそのご家族が心を痛めているのではないか、と思われます。こうした問題提起がなされた機会に、より多くの方が障害について関心を持っていただければ、と願っております。

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