読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
数年前から、時折あごの下が腫れます。痛みはありません。画像診断で、左あご下に5mm大の唾石が見つかりました。手術でとるべきか、様子をみるべきか迷っています。(熊本・56歳女性)

この相談に対して、NTT東日本関東病院・歯科口腔外科部長である斎藤健一先生は、以下のようにお答えになっています。
唾液を分泌する唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺からなる大唾液腺と小唾液腺からなります。ここに、唾液の成分のカルシウムが固まり結石が出来ると「唾石」という病名で呼ばれます。唾石のほとんどは、あごの下にある顎下腺にできます。

顎下腺に唾石が多い理由は、この腺の唾液が耳下腺や舌下腺の唾液に比べて、粘りが強いこと、唾液を口の中に出す管(導管)がやや長いことなどが考えられます。

唾石があると、とりわけ食事をした時に、分泌された唾液の流出が唾石によって妨げられるために、顎下腺の腫れや痛みなどが起こります。

唾石は、徐々に大きくなります。それに伴って腫れや痛みが増します。感染を起こす場合もあるので、顎下腺の腫れなどの症状が出たときには、治療を考えた方が良いと思います。

唾液腺導出管に石灰塊(これが唾石です)が形成された状態を、唾石症といいます。唾石は、導出管に侵入した異物・細菌などが核になって、これに炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの石灰が沈着して、形成されます。

大唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺に分けられますが、唾石は顎下腺に多く(約80%)、耳下腺は少ない(約15%)といわれています。大きくなり導出管を閉塞すると、摂食時に激痛(唾疝痛)、唾液腺の腫大を認めます。

食事をしているとき、突然の仙痛および顎下腺の腫脹がくるのが典型的です。結石により唾液の流れが悪くなるため、二次感染が起こり、顎下腺の腫脹や疼痛をきたすといわれています。ですが、発作を繰り返すと、この典型症状がしだいに軽減することが多いようです。

導出管内に結石がある場合、管内唾石といい、唾液腺内にある場合、腺内唾石といいます。その中間にある場合、移行部結石といいます。管内および移行部唾石の場合、双指診で口腔底のワルトン管に沿って唾石を発見できることが多いようです。腺内唾石の診断には、単純X線、下顎部パノラマ断層などで唾石を認めることがあります。

治療に関しては、斉藤先生は以下のようにお答えになっています。
治療は、尿路結石のように、薬で排出させたり、体外から衝撃波をあてて破砕したりすることはできません。手術によって、摘出する方法が標準的です。

手術は、口の中から唾石だけを取る方法と、あごの皮膚を切り開いて、顎下腺ごと取る方法があります。一般的には口の中から唾石だけを取る方法が、身体への影響は少なく、顔に傷も残らず、入院期間も短くて済みます。

とはいえ、どちらの方法も一長一短がありますので、主治医とよく相談して治療を受けることをお勧めします。

無症状の場合は経過観察でよいでしょうが、炎症を伴う場合は、抗菌薬の投与が必要となります。症状が続く場合では、外科的に唾石を摘出します。上記の通り、口腔内から唾液管を切開して摘出する方法と、顎下腺全体を摘出する方法とがあります。

手術の選択は、唾石の大きさ・場所などから決められます。さらに、顎下腺内に生じたり、繰り返し唾石を摘出するような場合は顎下腺全摘をします。1回ごとの感染に伴う腫脹は、抗菌薬や鎮痛薬の投与で対処します。

腫れや痛みなどがあった場合、口腔外科などを受診なさってはいかがでしょうか。

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