自宅で呼吸困難に陥った男性が、ステーキナイフ片手に自分で気管切開手術を決行、一命を取り留めた。

先週の夜間、自宅で寝ていたスティーブ・ワイルダー氏(55)は突然の呼吸困難で目が覚めた。「このままでは死んでしまう。救急車を呼んでも、それまでもちそうにない」……そう思ったワイルダー氏はキッチンにあったステーキナイフを手に取ると、喉に小さな穴を開けて気道を確保したという。

ワイルダー氏は数年前に咽喉癌を患い、気道が圧迫されて呼吸障害に悩まされた時期があるが、今回のケースについて「当時と同じ状況でした」と語る。

自ら気管切開手術を行ったワイルダー氏だったが、医師は「これによる人体への悪影響はないだろう」と話している。
(米男性、ステーキナイフで自ら気管切開手術)


気管切開術とは、前頸部で気管軟骨を切開し気管を開口することです。気管に至る進入経路と甲状腺との位置関係から、上気管切開術、中気管切開術、下気管切開術に分けられます。

上気管切開(甲状腺より上)の場合は、第2気管輪(輪状軟骨下約1cm)を目標に、下気管切開(甲状腺より下)の場合は、胸骨上縁から約1.5cmの第4、5気管輪を目標に気管切開孔を作ることを考えます。成人の場合は上気管切開、子供の場合は(できれば避けたいですが)、下気管切開を行うのが一般的です。

救急気管切開術は、上気道閉塞症状が強く時間的余裕のない場合に行われます。本当に緊急な場合は、十分な手術器具も麻酔もない状況下で実施することもあります。通常の気管切開部位(第2〜3気管軟骨部)以外に、輪状甲状靭帯を切開して、そこから気管切開チューブを挿入する方法もあり、これは所要時間が短いという利点があります。

適応となるのは、
‐綉て散杭や閉塞(外傷、炎症、腫瘍、異物など)
∩延性意識障害患者の気道確保と誤飲や誤嚥の予防
D拘間の人工呼吸管理
で抉蠅簗亀で戮砲茲衂儔鵑糞て擦竜朧や洗浄が必要な場合
テ頸部悪性腫瘍などの手術時

などです。上記のケースでも喉頭癌で気道圧迫されて呼吸障害を起こしたような状態であったということから、‐綉て散杭や閉塞 のような状態にあったのではないか、と考えられます。

具体的な方法については、以下のようになっています。
まず、頸部または肩にタオルなどを入れて、頸部が伸展するようにします。甲状腺部を中心に前頸部を広範囲に消毒し、甲状軟骨から胸骨上縁までが視野にあるようにして覆布をかけます。目標点を中心に局所浸潤麻酔を行います。

縦切開の場合は輪状軟骨から約3cm下方に、横切開の場合は輪状軟骨と胸骨上縁の中間点で約3cmの皮膚切開を行います。皮切したら、ペアン鉗子、コッフェル鉗子、筋鉤などで筋肉を正中線から左右に剥離し、第1もしくは第2気管輪に到達します。視野を主に筋鉤を用いて十分に広げます。

出血がないことを確認して、第2気管輪正中部で逆V字の頂点になる部位に絹糸を一針かけ、絹糸を引いたままの状態で開口部から気管切開用チューブを挿入します。挿入後は直ちに気管内の吸引を行い、引っ張っていた絹糸は皮下に縫合結紮します。周辺組織からの出血のないことを確認し、筋層縫合、皮膚縫合を行います。

大まかにはこの様な流れになっています。ただ、気管切開は気道確保の第一選択と考えず、経口または経鼻気管挿管で気道が確保できないかをまず考えます。もちろん、侵襲性も高く、術中には血管損傷(動脈、静脈)、神経損傷(反回神経)の恐れもあります。

上記のケースではこうした影響がなかったようですが、やはり一般の方が行うには難しいということもあると思われます。本当に緊急時以外は、できれば避けたほうが良い方策であると考えられます。

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