読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
43歳で、へバーデン結節と診断されました。水ぶくれのようなものもできました。指の変形がひどくなり、人前に出たくありません。手術で変形を目立たなくする方法はありますか。(50歳女性)

この相談に対して、川崎市立川崎病院副院長である堀内行雄先生は、以下のようにお答えになっています。
へバーデン結節は、手の指の第1関節(指先の方)の甲側に、コブのようなもの(結節)ができ、赤く腫れたり、関節が曲がったりする病気です。痛みを伴うことがあり、時に、水ぶくれのようなもの(粘液嚢腫)ができます。

水ぶくれのようなものは、初期には、針を刺して中からゼリー状物質を押し出し、3ヶ月ほどテープで軽く圧迫しておくと、ほとんどが治ります。再発を繰り返す場合は、その部分を切除し、欠損部を皮膚の移植などで補います。

上記のようにへバーデン結節とは、手指遠位指節間(DIP)関節の背側に硬い小結節を触れる疾患です。相談者のように40歳代以上の女性に好発し(ほとんど閉経後の女性に発症する)、成因として加齢や指先の過度な使用などが考えられています。全身の変形性関節症との関連も示唆されています。

初発症状としては、DIP関節(第1関節)の腫脹・痛みなどがあります。このように急性期にはDIP関節背側の発赤、腫脹、疼痛などの炎症所見を伴いますが、炎症所見が沈静化してから受診してくる患者さんが多いようです。やがてDIP関節全体の骨性膨隆を生じてきますが、伸展制限がみられても機能的な障害は少ないといわれています(一般的に、痛みがなければ特に治療の必要はないといわれています)。基本的には安静にすることにより症状は軽快します。

ですが、上記の相談者のように、見た目を気にされる方もいらっしゃり、手術を希望される場合もあります。そうした場合、以下のような方法があります。
コブが大きくなるとともに関節の軟骨がすり減ったり、軟骨の下の骨まで傷ついたりする場合があります。こうした関節の変形に対する手術は、大きく分けて二つあります。

一つは第1関節の甲側に大きなコブができ、関節が内(握る)側に曲がって気になる場合に、そのコブを削る手術です。コブがなくなっても指が完全に伸ばせるとは限りませんが、見た目を少しでも改善するのが狙いです。ただ、関節がゆるんでいる場合には、この手術は向きません。

関節のゆるみが大きく、指先が横に曲がって、握ると隣の指と重なったり、痛みが強かったりする場合には、関節を金属製のねじやピンで固定する手術をします。固定手術後は、痛みはなく指もまっすぐになり力も入りますが、第1関節は動かなくなります。

ただし、変形のみで関節の痛みが少なければ、あわてて手術する必要はないので、治療法については、じっくり考えて下さい。

保存療法が原則であり、疼痛が強いときには、指先の過度な使用を控え、消炎鎮痛剤の内服や塗布薬を使用します。粘液膿腫は、破れて感染を合併することがあり、壁の薄いものは嚢腫の摘出を行います(粘液嚢腫は、弾力絆創膏などで圧迫を加えると縮小化がみられる)。

こうした保存療法で疼痛が軽快せず、変形が高度の場合は、上記のような関節固定術が適応となります。ただ、やはり手術となれば合併症のリスクもあります。よく考えた上で、手術を受けられることが望まれます。

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