読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
透析を週2回受けていますが、透析の時の最後に、血圧が200ぐらいまで上がります。先日、透析後に眼底出血を起こしました。透析を続けるのが不安です。(76歳男性)

この相談に対して、日大板橋病院透析室室長である岡田一義先生は、以下のようにお答えになっています。
血圧は、血管内を流れる血液などの水分量と血管収縮の程度によって決まります。透析の場合、血液を体から出し入れするので血管内の水分量が変動し、それが血圧に影響します。

透析を開始して血液の一部が体外に出されると、血圧は下がっていきます。しかし、人体はこのとき、血管を収縮させて、一定の血圧を維持しようとします。

透析終了時には、血管が狭くなっている体内に、血液が戻るため、血圧は上がります。しかし、今度は血管が拡張して、大きな変動を防ごうとします。

ご質問者の場合は、このバランスがうまくとれていないために、透析終了時に、血圧が上昇すると考えられます。特に、血管が収縮する反応が強すぎるために、血圧の上昇が極端に表れるとみられます。

透析療法とは、血液を半透膜を用いて透析し、水分および溶質を除去して血液の浄化を図る方法です。急性腎不全や慢性腎不全、透析可能な薬物による中毒(医療用薬剤、農薬、工業薬品など)、急性肝不全などの治療として行われます。

大別して、血液を透析器(ダイアライザー)に導き浄化した後に体内に返血する血液透析(HD)と、透析液を腹腔内に注入し腹膜の半透膜機能を利用して透析を行う腹膜透析(PD)とがあります。

血液透析(HD)とは、カテーテルあるいは皮下の動静脈瘻(シャント)のいずれかにより、血液をダイアライザーに導入し、透析液と透析膜を介して、血液中の高窒素血症、水・電解質異常を是正する方法です。

シャント(血液路 blood access)とは、動脈と静脈を直接つなぎ合わせた部分をつくる必要があります。これは、動脈から血液を体外循環回路に導き、十分な血液量を得るためのものです。

透析中では、意識レベル、血圧や脈拍、呼吸状態などのバイタルサインに変化がないかどうかを定期的にチェックします。また頭痛、悪心、嘔吐、四肢しびれ感、全身倦怠感のような自覚症状や意識障害、けいれんの有無(不均衡症候群)にも注意を払います。

上記のように血圧の変動が起こる可能性もあり、循環系のチェックをする必要があるわけです。透析中の輸液・輸血量と除水量および体重変化、循環系の指標(血圧、脈拍、CVP、心拍出量とPCWP)などを併せてモニターすることが重要です。

対策としては、以下のようなものが考えられます。
対策としては、血管の収縮を抑えることで、血圧の上昇を防ぐタイプの降圧薬を、透析前に服用しておく方法があります。薬によって、効果が出てくるまでの時間が3〜6時間と異なりますので、透析の数時間前に服用することをお勧めします。

用法、用量については、担当の医師とよく相談してみて下さい。

24時間効果が持続する薬が多いので、家庭でも血圧を測定し、逆に血圧が低くなりすぎないように注意して下さい。

また、透析の回数を週3回に増やすと、1回の透析で出し入れする水分量が少なくなり、血圧が安定する可能性もあります。

降圧薬は高血圧症の治療に用いられ、高血圧領域にある血圧を正常範囲まで低下させる薬剤です。高血圧症による脳、心、腎などの臓器障害の発生と進展を予防することを目的としています。

末梢性降圧薬と中枢性降圧薬に大別され(中枢性降圧薬は眠気や、うつ状態などの有害反応のため、使用頻度は減少しています)ます。末梢作用性降圧薬は、大きく分けて血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬の3群があります。血管拡張作用により降圧作用を示す降圧薬には、作用機序の異なる多種の薬物があります(ACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、α1受容体遮断薬など)。

米国高血圧合同委員会(JNC)および世界保健機関(WHO)と国際高血圧学会(ISH)の治療指針が広く使われており、高血圧治療指針の多くは第一選択薬として利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、A脅容体拮抗薬、α1遮断薬、αβ遮断薬を挙げています(降圧薬としての利尿薬の使用は減少しています)。

こうした降圧薬の服用により、血圧を安定させることが考えられますが、その一方で低血圧になってしまうことも心配されます。定期的に血圧計測などを行うことも重要であると思われます。

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