ある特定のタイプの大腸(結腸)癌患者には、癌化学療法による利益がないばかりか、有害である可能性もあることが新しい研究で示された。

研究を率いた米メイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)生物統計学教授Daniel Sargent氏は、このようなタイプの大腸癌患者には化学療法を実施せず、外科手術のみ行うべきだと述べている。データによれば、このタイプの患者で外科手術を単独で受けた場合の5年生存率は93%であったが、化学療法を実施した場合、生存率が75%に低下したという。化学療法による毒性、医療費、不便さなどから免れ、かつ極めて良好なアウトカム(転帰)を得ることのできる患者群が存在するという。

5月30日からシカゴで開催される米国癌治療(臨床腫瘍)学会(ASCO)年次集会に先立ち、メディア向けに発表されたこの知見は、過去の研究結果を裏付けるものだと著者らは述べている。大腸癌の約15%は、DNA傷害の修復能を失ったDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)腫瘍と呼ばれるもので、ほかの大腸癌に比べて進行性が低い。2003年に米医学誌「New England Journal of Medicine」に掲載された同チームの研究で、このタイプの癌の患者には標準化学療法による利益が認められないことが示されていたが、臨床面での応用にはさらなる検証が必要とされていた。

Sargent氏によると、早期ステージの大腸癌患者には化学療法を実施することもあればしないこともあるという。「研究者は長い間、化学療法による利益がある患者とない患者を予測する方法がないかを研究してきた。しかし、臨床に取り入れることを推奨するためには、その正当性を立証する必要があった」と同氏は述べている。

今回の研究では、前回の研究に参加した米国、カナダ、フランスおよびイタリアの患者1,027人のデータを分析。このうち15%がdMMR腫瘍であった。「研究の目的は、ミスマッチ修復欠損をもつ患者には抗癌薬5-FU治療による利益がないことを裏付けることであり、われわれはまさにそうであることを突き止めた。この知見を臨床的に利用できることが立証されたと考えている」とSargent氏は述べている。このタイプの癌かどうか調べるための簡便な検査法がすでにあり、この知見は化学療法を検討するステージ2の患者に有用であると考えられている。
(化学療法が有害な大腸癌のタイプも)


大腸癌に対する化学療法の目的としては、
1)進行癌の手術後に再発予防を目的とした補助化学療法
2)根治目的の手術が不可能な進行癌または再発癌に対する生存期間の延長及びQOLの向上を目的とした化学療法

とがあります。

組織学的にリンパ節転移陽性例には、補助療法を行います。現在では、Stage靴侶訥牡(C, A, T, D, S)、直腸癌(Rs,Raのみ)治癒切除患者を対象として、JCOG 0205の臨床試験(5FU + l-LV[アイソボリン]と、UFT+経口LV[ロイコボリン]の第形蟷邯)が行われており、2011年11月に追跡終了予定となっています。同意を得られた場合には臨床試験、得られなかった場合は患者の好みによりどちらかを行っているところもあるようです。

一般には、リンパ節転移があるステージ郡の患者さんが術後補助化学療法の対象となり、手術後に5-FU/l-LV[アイソボリン]の6ヶ月投与が標準的に行われているようです。リンパ節転移のないStageI期、Stage挟の大腸癌について術後補助化学療法の有用性は明らかではないため、基本的には術後補助化学療法は行わず、無治療で経過観察をするようです。

根治的な手術が不可能な場合(切除不能進行・再発大腸癌など)は、化学療法の適応となります。UFT+経口LV+CPT-11を中心として、FOLFOX4(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)、FOLFOX6(5FU+l-ロイコボリン+l-オキザリプラチン)、FOLFIRI(アイソボリン+5-FU+イリノテカン)、5FU+LV(PRMI、de Gramont)、UFT+経口LV、UFTの選択肢があります。

こうした大腸癌の病期を決める検査としては、以下のようなものがあります。
早期発見のスクリーニングとして便潜血反応があります。腫瘍マーカーではCEAが上昇し、大腸癌全体の陽性率は40〜60%ですが、進行するにつれ高くなります。また肝転移、肺転移の指標となります。

内視鏡検査が行われ、生検により組織的診断可能であり、確定診断に有用です。大腸癌では病変が多発することも多く、併存する病変の発見に有用です。他にも、注腸X線検査(二重造影による全大腸の造影が必須)などが行われ、病変の存在部位、大きさ、性状をとらえ、治療方針(ポリペクトミーの適否)を決定するのに必須の検査となります。

腹部超音波検査は、肝転移やリンパ節転移の有無に有用であり、CT検査では肝転移やリンパ節転移の診断、隣接臓器への浸潤、直腸癌の再発、骨盤内進展の程度を知るのにも有用です。

これらの検査から、大腸癌の病期分類に従ってStageが決定されます。

上記では、良かれと思って化学療法を行っても、逆に害となってしまうという可能性がある、との指摘がされており、今後はDNA傷害の修復能を失ったDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)腫瘍を除外して化学療法を行う、といったことが重要となるようです。

【関連記事】
腫瘍にまつわるニュースまとめ

抗癌剤治療は、どう受けるべきか