読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
10ヶ月の娘が、小児科で「心臓に穴があいているかもしれない」と言われました。ただ、医師は「太っているから大丈夫」と笑っています。ハイハイがまだできません。不安です。(33歳母)

この相談に対して、日赤医療センター小児保健科部長である薗部友良先生は、以下のようにお答えになっています。
「心臓に穴」と聞かされ、ご心配ですね。診断の根拠は、心臓に雑音が聞こえたためだと思われますので、赤ちゃんの心雑音の質問としてお答えいたします。

実際に、一見健康な赤ちゃんが心雑音で受診する場合、多くは無害性心雑音(機能性心雑音)です。これは、雑音はあっても、血液を送り出す心臓の機能には全く異常がないものです。

雑音がする病気で考えられるのは、心臓の左右の心室を仕切る、心室中隔という部分に穴があいている心室中隔欠損です。生まれつきの心臓病の中で一番多いのですが、見つかる時期は、ほとんどが出生直後から1か月くらいまでです。

また、左右の心房の壁である心房中隔に穴があいている心房中隔欠損もあります。診断は、3歳ころにならないとつかない場合もあります。

ほかにも病気はありますが、問題になるのは、十分な血液を送り出せずに、
1)息苦しい
2)体重が増えない
3)唇の色が紫色(チアノーゼと呼ばれます)
――などの症状がある方です。心機能の状態によっては穴をふさぐ手術が必要になる場合もあります。

心室中隔欠損(VSD)は、左右心室間を仕切る心室中隔に穴(欠損)が開いている心奇形です。欠損孔の位置により4種に分類されます。

最も多いのは膜様部にある欠損孔で、自然閉鎖の傾向が強いです。次に多いのが肺動脈弁に近く、漏斗部にある欠損孔で、高率に大動脈弁閉鎖不全を起こします。このほかに筋性部欠損と心内膜床欠損型がありますが、稀です。

生後まもなく心雑音にて発見されることが多く、小欠損孔では自覚症状はありません。中欠損孔では反復性気道感染、息切れを認めることがあり、大欠損孔では乳児期から心不全、体重増加不良を認めます。

聴診では、胸骨左縁第3〜4肋間に最強点(右室流出路の肺動脈弁直下の欠損をもつタイプでは第2肋間)を有する粗い汎収縮期雑音を聴取し、しばしば振戦を触知します。左右短絡量が多い症例では、心尖部に群察拡張中期ランブルを聴取します(僧帽弁口を通過する血流増大を反映)。

診断としては、胸骨左縁の粗い汎収縮期雑音で本症を疑います。心エコー図により欠損孔、短絡血流を証明し、さらに病型、欠損孔の大きさと数、左-右短絡量、肺高血圧の有無を診断します。

心房中隔欠損症としては、以下のような説明ができると思われます。
心房中隔欠損症とは、心房中隔に欠損孔があり、左房と右房の間に交通がある先天性心疾患を指します。

広い意味では一次孔型心房中隔欠損症(心内膜床欠損症不完全型)と二次孔型心房中隔欠損症を含みますが、通常は狭義に用いて、二次孔型心房中隔欠損症のみを心房中隔欠損症と呼びます。欠損孔の部位により、二次孔欠損(70%)、静脈洞型(15%)、一次孔欠損(15%)に分類されます。

小児期の先天性心疾患の約10%、成人の先天性心疾患の約40%を占めます(成人の先天性心疾患の中では最も多い)。女性に多く男女比は 1:2 となっています。

肺静脈から左房へ戻った血液の大半が欠損孔から右房に短絡し(左-右シャント)、左房と右房の圧は等しくなります。左室から全身に送られる血液量は正常に保たれますが、右房→右室→肺動脈へと流れる血流量は正常の2倍ないし4倍に達します。そのため、右房、右室、肺動脈は拡大します。

自覚症状としては、小児期にはありませんが、20歳以降次第に現れてきて、40歳以上では、ほとんど必発となります。年齢的に女性では、2〜3人の出産を済ませている場合が多いです。

軽い症状としては、労作時の呼吸困難、疲労、動悸などを生じます。重症の場合には、うっ血性心不全、胸痛、頭痛、労作時失神などの症状を生じます。気管支炎、肺炎にかかりやすい、といった特徴もあります。

30歳以降では、心房細動などの上室性不整脈、三尖弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症(MR)、うっ血性心不全の合併頻度が高くなります。未治療の場合、50歳以降では対照群に比べて生存率は約25%以下になってしまいます。

右心系への血流量が増えるため、肺高血圧症が進行していきます。肺高血圧症が進行すると、右−左シャントとなります。そうなると全身を巡ってきた血液が再び全身に送られることになり、チアノーゼをきたすようになります。この状態をEisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群といいます。

上記のケースについて、薗部先生は以下のように仰っています。
娘さんは、体重も重いので、重症ではないと思われます。運動の発達には個人差が大きいので、10か月でハイハイしない赤ちゃんも結構おられます。

心配をしているより、子供の心臓検査のできる病院を紹介してもらい、エコー検査などを受けて下さい。まずは正しい診断を受けることが重要です。

やはり、しっかりとした検査を受け、診断をつけるといったことが必要である、と指摘されています。さしあたっては心エコー検査などを行うべきであると思われます。

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