以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

カラオケと酒、そして食べることが大好きな主婦、Y・Hさん(54)は、40歳を境に肥満がエスカレート。肥満解消のためには運動しかないと、腹筋やジョギングを始めました。

しかし、1週間ほど経った頃、いつもの階段をあがっただけでなぜか息が切れてしまったY・Hさん。すべては肥満のせいと思っていましたが、その後も新たな異変が彼女に襲いかかりました。具体的には、以下のような症状が現れ始めました。
1)息切れ
いつもの家の階段を上がっただけで、息切れが現れるようになりました。
2)疲れやすい
家事を行うだけで、ひどく疲れてしまうようになりました。そこで、肥満解消を兼ねてジョギングに精を出すようになりました。
3)横になると息苦しくなる
それまでは息苦しさを感じることはありませんでしたが、横になると息苦しさを感じるようになりました。
4)はげしい咳
ある夜、激しく咳き込むことがありました。
5)ピンク色のタンが出る
激しく咳き込み、手のひらを見ると泡沫状のピンク色の痰が出ていました。

こうした症状を不安に思い、Y・Hさんはようやく旦那さんに連れられて病院に運ばれることになりました。そこで心エコー検査が行われ、Y・Hさんに告げられた診断名は以下のようなものでした。
Y・Hさんの病名は、僧帽弁閉鎖不全症でした。

「僧帽弁」とは、左心房と左心室の間の左房室口に存在する弁です。血液の左心室から左心房への逆流を防止する機能があります。僧帽弁閉鎖不全症では、さまざまな原因によって僧帽弁の収縮期の閉鎖が不完全となり、左室から左房への血液の逆流をきたす疾患です。僧帽弁自体だけでなく、それに付着している腱索、乳頭筋などの異常によっても起こりえます。

僧帽弁を含む心臓の弁に何らかの異常があると考えられている人の数は、100万人以上にのぼる、と放送では言われていました。しかも近年、50才以降で急激に増加しているそうです。

以前ですと、リウマチ性が多く他の弁膜症と合併することが多かったですが、最近では非リウマチ性、特に僧帽弁逸脱症(MVP)によるものが増加しているそうです。そのほかに乳頭筋不全、乳頭筋断裂、腱索断裂(心筋梗塞に伴う)、弁輪石灰化(高齢者)によるものもあります。

Y・Hさんの場合は、肥満とそれに起因する高血圧が心臓に負担をかけ続けたと考えられます。肥満になると、脂肪が増えるため、より多くの血液を必要とします。すると心臓は大量の血液を全身に送ろうと、収縮のリズムを早め、結果、心臓の負担になります。

さらに慢性的な肥満は、血管の動脈硬化を進めるため、より強い力で収縮する必要があり、さらに高血圧の状態も負担の要因となります。こうして、長年に渡って心臓に負担をかけ続けた結果、僧帽弁には、血液の逆流が起きないように腱索と呼ばれるロープのようなものがついていますが、それが長年の血流の強い圧力で徐々に弱っていきました。さらに、過度の飲酒も問題でした。飲酒も度が過ぎると、高血圧の要因となります。

しかも、よかれと思って始めた運動が度を越してしまい、心臓はさらなるフル回転を強いられ、僧帽弁閉鎖不全症の引き金になってしまいました。そして、弱っていたY・Hさんの腱索は、ついに伸びきってしまいました。そして血液が逆流してしまい、全身へ送られる血液が不足し始めました。

結果、左心不全と呼ばれる状態に陥って、猛烈な咳とともに、肺に逆流した血液が混じりピンク色の痰が出た、というわけです。

検査所見としては、聴診上は心尖部の全収縮期雑音、恐司裂、群察∩蠡佚僧帽弁狭窄による拡張期ランブル(Carey-Coombs雑音)などが聴かれ、僧帽弁逸脱では収縮期クリックを聴取します。

胸部X線検査では左房の拡大、左室の拡大がみられ、特に急性の僧帽弁閉鎖不全症では肺うっ血所見などがみられます。心エコー・ドプラ検査も行われ、心エコー断層法で左房・左室拡大の程度、左室駆出率、左室の代償性肥厚の程度を評価できます。診断に最も有力なものはドプラ法で、カラードプラにより、直接逆流を証明することができます。

内科的治療としては、慢性の高度逆流があり症候性であれば利尿薬や血管拡張薬を用います。血管拡張薬は逆流量減少・心拍出量維持・肺うっ血の軽減に有効です。

心不全症状が薬物で改善しない場合、あるいは無症状でも高度の逆流があり(Sellersの分類慧抂幣紂Л慧戮任蓮∈庫爾左室とほぼ同じ濃さに造影される、逆流ジェットは認められない。古戮任蓮∈庫爾左室よりも濃く造影される)、左室が拡大傾向にあるものについては僧帽弁置換術、あるいは形成術を考慮します。

僧帽弁形成術は自己弁を温存する術式で、術後の抗凝固療法が不要、術後合併症も少ないといった利点があります。限局する僧帽弁逸脱は僧帽弁形成術のよい適応ですが、後尖逸脱のみならず、前尖逸脱でも限局性であれば適応となります。高度の弁組織障害がある場合などでは、僧帽弁置換術が選択されます。

高血圧や肥満など、日頃からどんな生活習慣が、心臓の負担になるのかをしっかり理解し、心臓に過度の負担をかけないことが重要であると思われます。

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