アメリカで、心臓発作を起こし病院に運ばれた女性が、脳死判定後17時間後に人工呼吸器を外したところ、突然生き返るというできごとが起こった。この女性はウェストバージニア州に住むビルマ・トーマスさん(59)。彼女は17日、心臓発作で突然倒れ、近くの病院に運ばれた。病院に到着したとき、すでに意識がなかったという。

医師たちは何とかしてビルマさんを救おうと懸命に処置。しかしビルマさんは病院に運ばれてから2回も心臓が停止した。脳の活動が停止し、血圧も心拍もなくなったことを確認した医師は、ビルマさんが亡くなったことを家族に告げたという。
家族の同意を得て、医師はビルマさんにつけられた生命維持装置を外した。さらに生前、臓器提供の意思を示していたビルマさんの身体から、臓器を摘出する準備を始めたという。家族もビルマさんに最後の別れをし、葬儀の準備に取り掛かった。

イギリス紙「デーリー・メール」は25日、ビルマさんの息子の次のような話を掲載している。「僕達はずっと病院で、母が意識を回復するよう祈っていたんだ。でも、母の心臓は止まってしまい、身体も次第に硬直していった。僕達家族も、牧師さんも、先生も、みんな人工呼吸器を外すことに同意したよ」。

奇跡はそのとき起こった。医師が呼吸器を外してから約10分後、看護士たちがビルマさんの肺に空気を送る管を取り外そうとしていたとき、ビルマさんは生き返ったという。
(脳死判定後17時間後に生き返った女性)


脳死とは、脳全体が不可逆的に機能を喪失した状態を指します。自発呼吸はなくなり、人工呼吸器によらなければ呼吸は維持できません。

換気が保たれれば、自律性の高い心臓はしばらくの間拍動を続けますが、1〜2週のうちにこれも停止し(脳死状態は慢性化することはなく、通常、脳機能停止から1〜5日以内に心機能も停止する)、死の三徴候(心停止・呼吸停止・瞳孔散大)に合致する状態に移行します。

このように、心拍動があり体温も保たれている状態となっていても、これまでに脳全体の不可逆的な機能喪失状態から、生還した例はありません。ですので、脳死とは「蘇生限界点point of no return」を超えた状態と言え、脳死=個体の死と考えられています。

一方で、「植物状態」は,脳幹にある呼吸、循環などの植物性機能の中枢は生存しながら、両側大脳皮質が広範囲に重篤な障害を受けた状態です。簡単に言ってしまえば、「大脳皮質の死」と言えると思われます。ただ、こちらの場合は精神活動は高度に障害されていても、呼吸は自力で維持されている状態です。つまり、蘇生限界点point of no returnはまだ越えていない状態です。

脳死状態では自発呼吸はなくなり、人工呼吸器によって呼吸維持をする必要があります。人工呼吸器とは、呼吸障害時、蘇生時、全身麻酔時に人工的に呼吸を行わせる装置のことを指します。胸郭外に陰圧をかけて肺を膨張させる体外式陰圧人工呼吸器と、気道内に陽圧を加えて肺を膨張させる陽圧式人工呼吸器があります。

現在はほとんどが陽圧式であり、通常は気管内挿管チューブを介して換気を行います。駆動源には電動式と圧縮空気によるものとがあり、吸気上限を換気量で制御する従量式と、気道内圧で制御する従圧式とがあります。換気モードには、人工呼吸器により完全に呼吸を調節する間欠的陽圧換気(IPPV)ないし持続的陽圧換気(CPPV)、そして自発呼吸を補助・支持する間欠的強制換気(IMV)、呼吸同期性間欠的強制換気(SIMV)、持続的気道陽圧法(CPAP)、圧支持換気(PSV)などがあります。

目的や適応としては、以下のようなものがあります。
人工呼吸器使用の目的は、適切な換気量を患者に与え、十分な酸素化(酸素の投与)と二酸化炭素の排泄を行うことにあります。また、このことによって、患者の呼吸仕事量を減らすことも目的としています。具体的な適応としては、
”垉則な呼吸(奇異呼吸、努力性呼吸、病的な呼吸)、強いチアノーゼ、強い呼吸困難
呼吸回数が1分間6回以下もしくは35回以上
D或脳紂胸部X線上での強い呼吸不全の徴候(湿性ラ音,浸潤陰影)
て位血ガス分析(室内空気下)でpH7.30以下、PaO250mmHg以下、PaCO250〜60mmHg以上
ィ渦鶸控の150ml以下(3〜4ml/kg以下)
ε慘惑抒萠500ml以下(10〜15ml/kg以下)
A-aDO2が純酸素(FIO21.0)で350mmHg以上
┘轡礇鵐販─QS/QT)が15%以上(FIO21.0で)

こうした項目に1つでも該当すれば、人工呼吸器使用の適応となります。

人工呼吸器を使用する場合、1回換気量、吸気時間、換気回数、気道内圧、酸素濃度、流量、トリガー(感度)、PEEPなど各種条件を設定する必要があります。たとえば、1回換気量(VT)ならば、成人には8〜10ml/kgを基本とし、換気(呼吸)回数は、成人ならば12〜15回/分、小児ならば15〜25回/分となっています。気道内圧は、5〜20cm H2O(最高35cmH2Oまで)となっています。

具体的には、まず自発呼吸がある場合、または弱かったりなかったりする場合によって、換気様式を変更します。自発呼吸がある場合は、部分的補助換気様式とし、自発呼吸が十分の場合はCPAPやBIPAPで様子を見たりします。自発呼吸が弱いか、ない場合、PCVやVCVを基本とし、可能ならばPRVCやPC-SIMVを考えます。

自発呼吸がある場合もない場合も、吸入酸素濃度(FIO2)は最初60%以上(FIO2 0.6以上)として、以後はPaO2を測定して漸減していきます。まずは20分後に動脈血ガス分析を行い、PaO2が90〜120mmHg、PaCO2が35〜45mmHgの範囲にあるかどうかを確認します。換気量が適切かどうかは、PaCO2もしくは呼気の二酸化炭素モニター(PETCO2)で判断します。

今年の3月にも、脳死を宣告されてから4ヶ月後、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、意識を取り戻した21歳男性のケースが報じられていました。こうしたケースがある以上、やはり人の死を判断する際にはしっかりとした判断基準の下、正しい手順で行う必要があるのだ、と再認識させられたニュースです。

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