「専門書も含め、あるだけ全部買ってきて」。6年前の5月31日、「乳がん告知を受けた」と夫に電話で報告した際、「本屋に寄って帰る」という彼に、私は強く訴えた。それだけ不安だったのだ。

乳がんとは、どんな病気で治療にはどんな選択肢があるのか。予後はどう推測されるのか。分からないということが怖かった。その夜から医学書を読みあさり、インターネットで調べる日々が続いた。生きるための希望を探す作業でもあった。

ただ、闘病記は敬遠していた。一度、ジャーナリストの故・千葉敦子さんの「乳ガンなんかに敗けられない」を読んだが、病気を受け止め「前進あるのみ」と立ち向かう千葉さんの強さに圧倒され、「涙に明け暮れている私は、なんて情けない人間なんだ」と落ち込んだ。乳房温存手術後に全摘手術が必要になり、すぐ局所再発が見つかるなど治療の選択に迫られ続け、医学書しか興味が持てなくなっていた。

しかし、3度目の手術後、再々発が怖くて、不安で押しつぶされそうになっていたころ、ふと「他の人はがんとどう向き合い、不安な気持ちとどう付き合っているのか」と知りたくなった。そんなことは医学書には書いていない。そこで、何冊かの闘病記を読み、「そんな風に考えたのか」「その人なりの生き方が一番なんだ」と感じ、少し落ち着いた。

このたび、私も闘病記「34歳でがんはないよね」(エビデンス社)を上梓した。一度は乳がんを見落とされ、それから3か月後の告知、3度の手術などを経て、このコラムを連載し始めるまでの出来事と心の揺れ、様々な人との出会いを詳細にルポし、タイトルの由来も前書きに記した。ある専門家は「先輩患者らがつづった闘病記は、医師や看護師の説明だけでは分からない貴重な“生き方情報”だ」と位置付ける。そんな一つの事例報告になればと願う。
(闘病記に「生き方」学ぶ)


『年間約35,000人の女性が乳癌に罹患しており、女性の20人に1人が乳癌に罹患する計算となる』『女性が罹る癌の中でトップ』『年々増加傾向にあり、年間死亡は約1万人で、罹患のピークが40−50歳代』といったことや『各ステージごとの5年生存率』『局所再発率』といった数字をいくら羅列されても、「じゃあ、自分はどうなるんだろうか…この不安、どうしたらいいのか」といったことは、医学書には書いてありません。

そのときに参考になるのが、やはり同病で悩まれたことのある患者さんが書かれている闘病記なのではないか、と思われます。病名を告知されて以降、一体どのような気持ちで治療を続けてこられたのか、そしてその不安をどのように乗り越えてきたのかなど、共感できたり、前向きな気持ちになれたりするのではないか、と思われます。

もちろん、ステージの違いや治療法の違いなどもあり、全てが参考になるとは言い難いと思われますが、「自分だけが病気と闘っているのではない」ということを知ることも、心の励みになるのではないか、と思います。

乳癌罹患者数は1970年の約3倍で、食事内容の変化(脂肪摂取量の増加や初経年齢の低年齢化などで)今後も増加し、2015年には年間約48000人の女性が乳癌に罹患すると予測されています。年々増加の一途をたどり、現在、年間約1万人が死亡しています。

何故、亡くなる人がこんなに増えているのかというと、その大きな原因の一つが、乳癌に対する認知度の低さがあります。女性の大敵である乳ガンですが、日本ではまだ身近な病ととらえていない女性が多く、それが死亡者数の増加につながっていると考えられています。

現に、乳癌検診を受ける方は、まだ多くないようです。多くの女性が乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいたため、との結果のようです。検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと日本乳癌学会の大規模調査で判明しています。

一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。

早期がんの発見には、マンモグラフィ検診が有効です。乳癌の死亡率を下げるには、集団検診の受診率を上げることが不可欠とされています。というのも、胸を触る自己診断で見つかる乳癌の大きさは平均約2cmで、自然に気づく場合は3cm以上が多いとのことです。

早期癌は、直径2cm以下とされています。ですが、発見時には43%が2.1〜2.5cmに達しており、発見時にリンパ節に転移していた人も、3分の1を占めています。リンパ節に転移しない乳癌の10年後の生存率は約9割と高いが、転移をしていると7割以下に落ちるといいます。

乳癌治療としては、以下のようなものがあります。
乳癌はホルモン療法や化学療法への感受性があり、全身病としての認識が確立しています。ですが、治療はやはり手術が基本で、病期靴泙任量9割は手術療法の適応となります。

術後には、全身に対する補助療法を行うのが標準的な治療法です。間質浸潤がない乳管内癌はリンパ節を含め転移はないため、手術だけで治癒できますが、エストロゲン受容体(ER)陽性のことが多く、ホルモン療法を付加するのが一般的です。遠隔転移がある場合は全身療法を行いますが、局所の疼痛や出血、壊死により日常生活に支障をきたすような場合は、手術を行うこともあります。

胸筋温存乳房切除術(非定型的乳房切除術および、乳房温存手術が主流となり、乳房温存手術が半数以上に行われています。乳房温存手術は、超音波検査やマンモグラフィー、CTやMRIで広範囲な乳管内進展巣のない腫瘍径3cm以下の腫瘍に対し、マージンを十分とった乳腺部分切除と腋窩リンパ節郭清を行った後、残存乳房に対する放射線治療(通常50グレイ)を付加することが原則となっています。さらに、センチネルリンパ節生検を行い、転移の有無を病理組織学的に検索し郭清を省略することも行われています。

進行乳癌では、根治が期待できる全身状態の良いものに対しては術後治療に準じた根治的治療を行います。乳癌の組織学的悪性度(HER2/neu 遺伝子)、ホルモン感受性を調べたうえで、抗癌剤や内分泌療法剤、抗体[トラスツズマブ(ハーセプチン)]を使った乳癌標的療法などを組み合わせて治療します。

さらに、最近では「ラジオ波熱凝固療法」といった治療法も行われています。「ラジオ波熱凝固療法」の原理としては、直接数mmの針を腫瘍に直接刺して、AMラジオと同じ波帯の電波(460-480 KHz)を照射し、60-70度の熱を加えて、癌細胞を焼く(正確には100度前後の熱で凝固させる)というもの。原理的には電気メスと同じです。周囲への浸潤を含めて、腫瘍径が2cm以下でリンパ節転移がみられない方が適応となります。

こうした治療法の多様化もあり、医学書により治療のことについて学んで活かすことも重要ですが、心の支えとなる本を読むことも、治療に際しては重要なことなのではないか、と思われます。

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