以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

友達との焼き肉パーティを年中行事のように開いていたN・Kさん(50)は、年々体重が増え続け、今や話題のメタボリック体型に。これはまずいとメタボ検診を受けたところ、血圧はちょっと高め、HDLコレステロールもやや悪く、メタボリックシンドロームと診断されてしまいました。

しかし、血糖値、中性脂肪ともに正常の範囲内だったため、安心してしまったN・Kさん。そんなある日、夕方の買い物に出かけようとした時、足がむくんで履きなれた靴が入らないことに気付きました。よくあることと特に気にも留めていなかったN・Kさんですが、気になる異変はその後も続いたのです。具体的には、以下のような症状が現れました。
1)足のむくみ
上記のように、足がむくんで靴が入らないようになってしまいました。
2)だるい
夕食後にあまりのだるさに、食器の片付けや洗い物ができませんでした。
3)多尿
4)頻尿
夜に多尿や頻尿がみられましたが、ご主人から「年のせいだろう。俺もトイレが近くて」といわれ、あまり気にしませんでした。
5)だるさが取れない
以前は少し休んでいれば、だるさがとれていました。ですが、次第にずっとだるさが続いて、恒例の焼肉パーティーを開くこともできませんでした。
6)朝から足がむくむ
7)むくみが消えない
足がむくむのは以前からありましたが、それが朝からみられ、しかもむくみが消えませんでした。

こうした症状が現れ、ようやく受診することになったN・Kさん。そこで告げられたのは以下のような病態でした。
N・Kさんは、(慢性)腎不全となっていました。
慢性腎不全とは、腎臓の機能が低下し、血中の老廃物が排泄できなくなる状態です。そもそも腎臓は、血液を濾過し、余分な老廃物や塩分を取り除くという、重要な役割を担っています。さらに、赤血球を作るホルモン、エリスロポエチンを作り、全身に酸素を行き渡らせたり、血圧を調整したりするなど、生命を維持する上で欠かすことのできない臓器です。

腎機能障害の進展に伴い、以下のような症状を呈するようになってきます。Ccrとは、クレアチニンクリアランスのことであり、腎臓の濾過機能をみる有用な指標です。基準値は91〜130mL/分となっています。この値が低下することで以下のような症状がみられるようになります。
/婬’集詐期(Ccr>50ml/分):臨床的には無症状である。
代償性腎不全期(30<Ccr<50ml/分):夜間尿、軽度の貧血、軽度高血圧を示す。
H鸞綵性腎不全期(10<Ccr<30ml/分):全身倦怠感、多尿、中等度の貧血、高血圧がみられる。
で毒症期(Ccr<10ml/分):浮腫、肺水腫、高度貧血、重症の高血圧がみられる。

N・Kさんの場合も当初、腎臓の機能は60%以下に低下していました。最近、この状態に新たな病名が付けられ、慢性腎臓病と呼ばれています。国民のほぼ1割、1,100万人の腎機能が60%以下に低下していると言われ、“新たな国民病”として注目されています。

慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)は、糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年に米国腎臓財団(national kidney foundation: NKF)で提唱された概念です。

定義としては、以下のいずれかのような状態が3ヶ月以上持続する人とされます。
1.以下によって規定される腎障害の存在
a)病理組織学的異常
b)腎障害を示唆する血液・尿異常、画像検査異常が確認される。
2.糸球体濾過値(GFR)が60ml/min以下であること

単に、腎機能が悪くなっている、ということを指すのではなく、糸球体濾過値が60%未満に低下すると、心筋梗塞などの心血管イベント発生の危険性が増すという結果が出ています。

糖尿病や高血圧、肥満、高脂血症などのメタボリックシンドロームは心臓病を引き起こす重要な原因となりますが、これらにより腎臓が侵され慢性腎臓病になると飛躍的にその危険性が高まると考えられます。

誰でも腎機能は年齢とともに低下していきますが、N・Kさんの場合は腎臓の機能を急激に低下させたもうひとつの要因があり、メタボリックシンドロームが大きな影響を与えていたと考えられます。実は、最近の調査で、メタボリックの人は、そうでない人と比べ、慢性腎臓病になる危険性が、2.2倍にのぼることが分かっているそうです。

メタボリックシンドロームになると、高血圧、高血糖などが原因で全身の血管が動脈硬化を起こします。もちろん腎臓の血管でも同じことが起こり、腎臓には糸球体といわれる血液をろ過する腎臓の血管が無数に存在しますが、この一つ一つが動脈硬化を起こすことで、濾過する能力が低下してしまいました。その結果、腎機能の低下が起こったと考えられます。

ついに腎機能は30%にまで低下し、「足のむくみ」が現れてきました。しかし、N・Kさんは、いつものむくみと勘違いし、腎機能の低下を見過ごしてしまいました。さらに病が進行し、今度は尿の量が多くなる「多尿」や、回数が増える「頻尿」、赤血球の不足による「だるさ」といった症状が現われました。ようやく病院を訪れた時点では、腎機能は15%以下と、もはや回復不能なレベルにまで達していました。

現在、N・Kさんは毎週3回、透析治療を続けています。「単に少し太りすぎなだけ」と思わず、上記のような症状が現れた場合、腎機能障害を疑って診察を受けるといったことも重要であると思われます。

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