以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

建設会社で働くY・Yさん(52)は、会社の健康診断で尿にたんぱくが出たため、再検査を受けたところ、初期の慢性腎臓病と告げられました。医師から食生活を改め、適度な運動もするよう指導され、少々落ち込み気味のY・Yさん。

しかし、インターネットで調べてみると、腎臓病の症状とされる“疲れ”や“むくみ”が自分にはなかったため、急に元気を取り戻しました。半年後には、慢性腎臓病のことなどすっかり忘れ、以前の生活に戻ってしまったY・Yさん。結果、急に胸の痛みを訴え、倒れてしまいました。

病院に救急搬送されましたが、10時間後にY・Yさんは亡くなってしまいました。診断名は心筋梗塞でした。

心筋梗塞とは、心臓が栄養としている冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。

冠動脈が閉塞する原因としては、やはり冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

心筋梗塞を引き起こす要因としては、喫煙や高コレステロール血症(特に高LDLコレステロール血症)、糖尿病や高血圧であるといわれています。メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞など心臓血管系の病気になる危険性が男性で約2.5倍、女性で約1.8倍になるとされています。

こうした要因の他に、以下のような関連性が指摘されています。
実は、心筋梗塞と慢性腎臓病が、深く関わっていることが指摘されています。九州大学が福岡県久山町で行った大規模な追跡調査の結果、慢性腎臓病の人は、そうでない人の2倍近い確率で、心筋梗塞を発症していたと分かりました。

慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)は、糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年に米国腎臓財団(national kidney foundation: NKF)で提唱された概念です。

そのメカニズムははっきりと分かっていませんが、腎臓の機能が低下すると、血液中に様々な老廃物が溜まり、血管の内皮細胞を傷つけていくと考えられます。結果、全身の血管では動脈硬化が進行してしまいます。そうなると、ますます腎臓の機能も低下し、動脈硬化も進むという悪循環になってしまいます。

そしてついには、心臓の冠状動脈で血栓が発生し、心筋梗塞を起こしてしまったと考えられます。心筋梗塞は、腎機能が50%を下回った時点で起きやすくなるとも言われています。腎臓病の症状が出るのは、腎機能が30%以下に低下してきたときであるといわれています。

つまり、腎機能の低下による症状が出始める前に心筋梗塞を起こしてしまうことがあるといわれています。アメリカの調査では、慢性腎臓病患者の4人に1人が、心筋梗塞などで死亡していることが報告されています。

腎機能低下を指摘されている場合、このように心筋梗塞のリスクが上がることが考えられます。そのため、「症状がでてないから」と慢心せず、しっかりと減塩などを心がけたライフスタイルの改善を行うことが重要となります。

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