以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

生鮮食品の消費期限は厳しくチェックし、生肉なども十分加熱するように心がけていたO・Yさん(54)。ここ数日、風邪で寝込んでいた彼女は、家族のために栄養のある手料理を作ろうと3日ぶりに台所に立ち、腕を振るいました。

久しぶりの手料理に家族も大満足でしたが、3日後、O・Yさんに以下のような症状が現れてきました。
1)発熱
風邪は治ったはず、と思っていましたが再び発熱してしまいました。またぶり返してしまったのか、と思いました。
2)吐き気
風邪を引いたときとは異なり、強い吐き気をおぼえるようになり、何度も嘔吐してしまいました。
3)下痢
吐き気を感じるようになった翌日、今度は下痢をしてしまいました。

こうした症状が現れ、「風邪がお腹にきたか」と思って、O・Yさんはついに病院に行くことになりました。ですが、そこで医師が告げた病名は彼女自身、予想もしていなかった以下のようなものでした。
O・Yさんの症状が起こっていたのは、カンピロバクターによる食中毒になっていたからです。

カンピロバクター感染症は、グラム陰性で極単毛を有するらせん状桿菌であるCampylobacteriaceae の一群により生じます。

この菌群には13菌種知られていますが、ヒトに重要なものは3菌種であるといわれています。最も多いのはCampylobacter jejuniによる、主として小児の腸炎で、年間を通じて発生します。他にも、Campylobacter coliも類似の腸炎や食中毒を引き起こすことで知られています。

カンピロバクターとは様々な動物の腸に棲みついている、いわゆる常在菌です。それが肉を食べるなど何らかの形で人体に入り、小腸や大腸に付着して増殖し、様々な食中毒症状を引き起こします。毎年400件以上、およそ2,000人が発症しています。

近年、最も多発している食中毒です。小児に多くみられ、感染後に2〜6日の潜伏期を経て発症します(小児下痢症の35〜40%を占めることもあります)。多くの食中毒菌は、数万個近くが体内に入らない限り、食中毒を発症しません。ですが、カンピロバクターは感染力が強く、わずか数百個で食中毒を発症してしまうのです。

主な臨床症状は発熱、腹痛、下痢です。下痢は最初は水様性ですが、次第に膿性となり血液の混入がみられるようになります。下痢の程度は一部を除けばさほど著明ではなく、通常1週間以内で症状の改善します。腸炎後、引き続いて急性の反応性関節炎がみられることもあります。

彼女は食中毒には十分気を付けていました。ですが、鶏のから揚げと野菜サラダを作ったときに問題がありました。

食中毒の原因となったカンピロバクターは、鶏肉に付着していました。その鶏肉を包丁で切り、下味をつけた後、菌が付着した手・包丁の刃・まな板をしっかり洗剤で洗いました。

ところが、この時、包丁の柄までは洗いませんでした。実は生の鶏肉に触れた後で包丁を握った時、カンピロバクターが、なんと包丁の柄にも付着してしまいました。そのため、手を洗い、再び包丁を握った時点で、あのカンピロバクターが再度手に付着しました。

そして切った生野菜を手で扱った瞬間、菌は野菜の表面へうつりました。つまりカンピロバクターは、鶏肉→手→包丁の柄→手→生野菜という経路をたどったわけです。

他の家族も食べましたが、O・Yさんは風邪が治ったばかりで、免疫機能がかなり落ちていました。この食中毒は、すぐに食中毒と分からないのも厄介なところで、症状が出るまでの潜伏期間が2日から5日と長く、それも発熱などから始まることが多いため、しばしば風邪と勘違いしてしまうこともあります。

カンピロバクターによる食中毒はさほど長期化せず、多くは自然治癒することから、特に抗菌薬療法を必要とはしないといわれています。ですが、症状の短期改善および排菌の短縮を望む場合には、マクロライド剤などの抗生物質を3〜5日間投与します。

気を付けているつもりでも、起こってしまう可能性のある食中毒。まな板や包丁などをしっかりと清潔に保つことが重要であると思われます。

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