以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

育ち盛りの子供を抱えたY・Eさん一家。一番のご馳走は何といっても焼肉。

父親のY・Eさんは、「焼肉奉行」として自分の箸で焼き肉を焼き、家族には触らせませんでした。その焼肉の晩から4日後、Y・Eさんはお腹を押さえ、のた打ち回ることになります。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)激しい腹痛
この食事の数日後に激しい腹痛が現れるようになりました。発熱はみられていませんでした。
2)下痢
まずは水様性の下痢が起こり、次第に血性の下痢便へと移行していきました。

こうした症状は、腸管出血性大腸菌O157食中毒によるものでした。

O157大腸菌による感染症は、腸管系感染症の原因菌の一種である腸管出血性大腸菌O157:H7あるいはO157:H-により引き起こされます。出血性大腸菌O157は腸管出血性大腸菌群の代表的なもので、毒素を産生します。

この毒素はサル腎臓由来のベロ細胞に毒性を示すことから、ベロ毒素とも呼ばれています。ベロ毒素は、大腸の粘膜内に取り込まれたのち、リボゾームを破壊し蛋白質の合成を阻害します。

蛋白欠乏状態となった細胞は死滅していくため、感染して2〜3日後に血便と激しい腹痛(出血性大腸炎)を引き起こします。また、血液中にもベロ毒素が取り込まれるため、血球や腎臓の尿細管細胞を破壊し、溶血性尿毒症症候群(急性腎不全・溶血性貧血)急性脳症なども起こることがあります。

O157は、一部のウシの腸管内常在菌として知られており、加熱不十分な牛肉などが原因となります。少数の菌量でも感染を起こし、ヒトからヒトへの感染がみられることが大きな特徴となっています。100個程度という極めて少数の菌で発症し感染症・食中毒をおこします。そのため感染者の便から容易に二次感染が起こります。

摂取後、2〜7日後に腹痛や水様性下痢の症状を呈し、次第に純粋な血性下痢便へと移行していきます。この間、発熱はほとんどみられません。

多くは特別な治療を施すことなく5〜10日間で治癒します。ですが、感染後数%の頻度で溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併し重篤な経過をとる場合があり、特に低年齢層では十分な監視が必要となっています。

溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、以下のようなものを指します。
溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、乳幼児期〜学童期の急性腎不全の重要原因疾患の1つといわれています。O-157をはじめとする腸管出血性大腸菌によるものは、溶血性尿毒症症候群の原因の90%以上を占め、腸管出血性大腸菌(VTEC)感染者の約1〜10%の症例に発症するといわれています。腎臓を主座とする糸球体内皮細胞傷害と、引き続く血栓性微小血管炎がその本態であると考えられています。

HUSは急性腎不全、血小板減少、細血管障害性溶血性貧血を3主徴とする症候群であり、型により症状、治療は異なります(感染性、薬物性、症候性、遺伝性に分かれる)。下痢あるいは発熱出現後4〜10日に発症します(前駆症状として、上気道炎,嘔吐,下痢,血便などがある)。

他にも、血小板減少による症状として点状出血斑や皮下出血斑、溶血性貧血による症状として蒼白、心悸亢進、全身倦怠感、黄疸などが生じます。急性腎不全による症状としては、ヘモグロビン尿(必発です)、乏尿・無尿、浮腫、高血圧、心不全、肺水腫、代謝性アシドーシスなどが起こります。

重篤な場合では、急性脳症による症状が起こり、痙攣や昏睡などが起こります。痙攣は多くは重積状態になり、痙攣を止め(ジアゼパムなどを用います)、呼吸管理などが必要となることがあります。

上記のケースでは、生肉をつまんだ箸で、そのまま焼いた肉を食べていた点が問題です。焼肉奉行にありがちな「ジカ箸」が、生肉から箸、そして口という「二次汚染」を招いてしまったと考えられます。

生肉を扱う時は、決して食べる時に使う箸を用いず、生肉専用の箸やトングを使うことが大切となっています。

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