読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
数年前、軽い不眠があって医師に「眠れない」と話したら「コンスタン」という精神安定剤を処方されました。ある晩、薬を飲まなかったら、眠れなくなりました。薬をやめられないのか不安です。(78歳男性)

この相談に対して、杏林大保健学部教授である田島治先生は、以下のようにお答えになっています。
コンスタンは、強い不安から日常生活に支障をきたす「パニック障害」の治療によく使われる薬です。国内だけでなく、世界中で広く使われています。

様々なストレスに伴う不安や不眠、心身症的な身体の症状の治療にもよく用いられます。一般名は「アルプラゾラム」と言い、「ソラナックス」という商品名でも発売されています。

お尋ねの症状は、3、4ヶ月から1年以上服用を続け、急にやめた時に出ることがあります。こうした症状は「退薬症状」と言います。薬の効果が急に切れたことに脳が反応して、不安や不眠、めまいや頭痛が起きたり、物音や光に過敏になったりします。症状は1、2週間続きます。

退薬症状とは、それまで常用していた精神作用物質の摂取を、中止または減量した際にみられる物質特異性の症候群を指します。不安、焦燥やせん妄、発汗、振戦、不眠などの身体症状がみられるようになります。

反跳現象(治療薬の反復摂取によって改善していた症状が、突然の中断によって服薬開始前よりさらに強く出現してくる現象)や、離脱症状を含みます。オピオイド類やバルビタール系、ベンゾジアゼピン系薬物などの中枢抑制薬の依存症では、反跳現象も離脱症状も出現してきます。

こうした症状の対処法としては、以下のようなものがあります。
コンスタンは通常、症状がよくなれば、錠剤を半分や4分の1などに減らし、1、2週間以上かけて徐々に飲む量を少なくしていきます。いきなりやめてしまってはいけません。

コンスタンは、すぐに効果が表れ、よく効く薬です。しかし、心理的に薬に依存してしまったり、服薬を急にやめてしまったりした場合にはこうした症状が出やすくなるので、注意が必要です。

症状が軽いのに安易に処方され、かつ、薬の危険や服薬をやめる時の注意事項の説明がないまま、長い間、処方され続けていたのであれば、問題です。なお、ご質問者の不眠は薬をやめた影響による一時的なものなので、ご安心ください。

アルプラゾラム(コンスタン)は、上記のように心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候、不安、緊張、抑うつ、睡眠障害などに対して適応となります。

上記のように、中止する場合には徐々に減量など慎重にする必要があります。こうした精神安定剤の他に、抗うつ薬の場合でも、減量・中止時には、抑うつ症状の増悪や、再燃の危険性・離脱症状出現の可能性があります。ですので、事前に減量時の危険性を十分説明し、患者や家族に対して理解を求めることが必要です。

慎重に漸減中止(段々と薬の量を減らしていく)を行うことが必要となります。こうした薬剤を服用されている方は、中止する際にはしっかりと医師に相談し、アドバイスをもらうべきであると思われます。

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