岩手・宮城内陸地震で約30人が避難している宮城県栗原市の文化施設「みちのく伝創館」で20日、新潟大や福井大などの医師らによるエコノミークラス症候群の予防検診が行われた。

医師や検査技師らが、高齢者を中心に足がむくんでいないか、普段体を動かしているかなど問診。静脈に血栓がないか調べる専門の機器を足にあて、健康状態を調べていた。

地震発生当日から避難所生活を送っている同市の新井たみ子さん(78)は診察を受けた後、「心配していたが何も問題はなくてよかった」とほっとした様子で話した。

水分などを十分にとれず、体をあまり動かせない避難所生活ではエコノミークラス症候群になりやすい。平成16年の新潟県中越地震では死者も出ている。
(エコノミー症候群の検診 栗原市の避難所で)


肺血栓塞栓症とは、血栓,その他の塞栓子が肺循環系に入り、肺動脈の閉塞を起こす病態を指します。このうち、肺組織の壊死を伴うものを肺梗塞といいます。

細かい話をすれば、「肺血栓症」は、肺動脈内腔に1次性に形成された血栓により閉塞された病態、「肺塞栓症」は、静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞された病態を指します。臨床的には肺塞栓症が大半であるといわれています。

塞栓物質として静脈系血栓、腫瘍、脂肪(骨折など)、羊水(自然分娩,帝王切開)、空気(外傷,カテーテルなど)、造影剤などが挙げられますが、頻度として下肢および骨盤の深部静脈血栓が80%と圧倒的に多いです。発症様式は、肺血管床を閉塞する血栓塞栓の大きさや患者の有する心肺予備能によりますが、全く無症状なものから発症とともに心停止に陥るものまでさまざまです。

頻度の高い症状としては、急に発症する呼吸困難(約80%)、多呼吸(約80%)、頻脈(約60%)があります。広範な塞栓の場合にみられる症状としては、不整脈(約30%)、狭心症様の胸部重苦感(約10%)、失神(約10%)、右心不全によるショック(10%以下)などがあります。肺梗塞・肺水腫を伴う場合に多い症状としては、胸膜炎様胸痛(約30%)、咳嗽(約40%)、発熱(約50%)、血痰(約10%)などがあります。

診断や治療としては、以下のように行います。
上記のような症状や身体所見、危険因子(Virchowの3徴:血流停滞、凝固能亢進、血管内皮障害)、発症状況(安静臥床解除後の歩行など)より本疾患を疑います。心電図や胸部X線、動脈血ガス検査、凝固線溶系マーカー(D-dimer)を他疾患との鑑別を行います。

鑑別すべき疾患としては、気胸、肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪、急性心筋梗塞、解離性大動脈瘤、心タンポナーデなどがあります。

動脈血ガス分析では、低炭酸ガス血症を伴う低酸素血症、呼吸性アルカローシス、A-aDo2の開大などの所見がみられます。心電図では、古典的にはSIQT轡僖拭璽鵝右軸偏位、右胸部誘導のT陰転、肺性Pなどの急性右心負荷、多くは非特異的ST-T変化、洞性頻脈などの所見がみられます。

胸部X線では、肺動脈影の拡大、右心影の拡大などがみられることもあります。造影CTや肺動脈造影で診断を確定でき、造影CTはほぼ必須であると考えられます。

予防としては、
1.長時間にわたって同じ姿勢を取らない。時々下肢を動かす。座っている間も、足を少しでも動かしたりする。
2.こまめに水分を補給する。

といったことが重要となります。

避難所生活で、ご不便なことも多いかと思われます。過去の教訓を生かし、肺血栓塞栓症などを予防して平穏な生活に戻れることを願っております。

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