飯島さんは2008年6月27日、自身のブログで、
「あ。ピロリ除菌終了しました。なんか、胃腸が元気で消化が良くなった気がする。みんなも、病気ははよ治そうね。と、(編注: 長く病気にかかっていた)私が言う」
と書き、ピロリ菌の治療が大部分完了したことを明かした。

飯島さんのピロリ菌治療をめぐっては、2月28日付けのブログで
「最近、検査でピロリ菌が見つかちゃいました飯島ピロリです。この2ヶ月ほど、軽いノイローゼで大変でした。精神疾病です。抗うつ剤を処方されたので凹みました。抗うつ剤なのに....」と、ノイローゼに悩まされたことをカミングアウトすると当時に、胃の中でピロリ菌が発見されたことを告白。

5月5日のブログには
「そんで、これから、ピロリのお薬飲まないとだよーーーーーーーーーー。嫌でほっといたらね、ピロリが愛珍の中で踊りまくっているんだって。ピロピロダンス!!! でも、ホントに早めに除菌しないとダメだよ」
とも書いており、きちんと薬を飲まないがために治療が滞っている様子だった。

この「ピロリ菌」、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といい、1983年にオーストラリアの研究者2人が初めて培養に成功した。胃の末端部分「幽門」で多く発見されることから、この部位を指す「ピロリ」という言葉が菌の名前にも用いられた。胃の中は強い酸性で、細菌は生きられないと長らく信じられてきたが、ピロリ菌は胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解。アンモニアはアルカリ性なので、胃酸を中和して生き延びていたのだ。ピロリ菌研究の業績が評価され、2人は05年にノーベル生理学医学賞を受賞している。

人間が体内にピロリ菌を持つようになる経緯については諸説あるが、便などを通じて感染するとの説が有力だ。子どもの頃の衛生環境が悪かった50代以上は大半が感染していると見られる一方、若い世代になるほど感染率は低い。

このピロリ菌の「駆除」が取りざたされるのは、ピロリ菌が胃かいようと密接な関係があるとされているからだ。例えばピロリ菌を発見した研究者のうちひとりは、自分でピロリ菌を飲んで急性胃炎が起こることを確かめたほか、胃かいようの患者の9割がピロリ菌に感染しているとされる。さらに、04年に厚生労働省の研究班が全国4万人を対象に行った調査では、全くピロリ菌に感染したことがない人に比べて、感染経験者は胃がんのリスクが10倍になることも報告されている。

このことから、胃かいようと十二指腸かいようの患者に限っては、ピロリ菌駆除は保険適用で行われている。具体的には、胃薬1種類と抗生物質2種類を1日2回、1週間にわたって服用する。除菌の成功率は7割〜8割程度だ。

もちろん、ピロリ菌が発見されたからといって、すぐに何らかの「実害」がある訳ではない。その一方で、胃がんの予防効果を期待して、自由診療でも治療費は実費で1万円程度だということもあり、除菌を希望する声も増えている。

ただし、この場合の除菌は、元々具体的な病気がなかった人に下痢や味覚異常などの副作用を与えるリスクを伴っており、医療現場では慎重な対応を迫られている。

一方、関係学会からは、ピロリ菌を持っていること自体を「感染症」として保険適用にするようにも求める声も上がっている。

除菌で将来の胃がんのリスクを減らすことが大事なのか、それとも薬物投与で起こる副作用のリスクを避けることの方が大事なのか、今後議論を呼びそうだ。
(飯島愛も治療完了「告白」  「ピロリ菌」除去なぜ必要か)


ピロリ菌ことヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、ヒトなどの胃に生息するらせん型の細菌です。1983年バリー・マーシャル(Barry J. Marshall)らが、自らの体で菌の存在を証明したことでも有名です。

ピロリ菌は幼児時に経口感染し、胃に数十年すみ続け、慢性胃炎を起こします。日本では40代以上の7割が感染しているといいます。日本の全人口の約50%が感染しているのではないかといわれ、年代が高い方が感染率も高いといわれています。そして、胃癌では最も重要な発がん因子であるとされています。

ヘリコバクター・ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されています。細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因となりうることが明らかになっている唯一の病原体です。

日本消化器病学会治験ガイドラインによる治療前後の診断基準では、少なくとも3種類の検査法を用い、培養法が陽性、あるいは迅速ウレアーゼ試験と鏡検法の両者が同時に陽性の場合、ヘリコバクター・ピロリ陽性と判定するようです(内視鏡下胃生検材料を用いる方法)。

培養法は、唯一の直接的証明法です。特異性に優れ、菌株の保存が可能、菌株のタイピングや抗菌薬の感受性試験検査が可能という特徴があります。

迅速ウレアーゼの原理としては、ピロリ菌はウレアーゼ活性を有し、尿素を分解してアンモニアを生成し、この試験は尿素を含む試薬に検体(生検組織)を加え、ウレアーゼにより生ずるアンモニアによるpHの上昇を指示薬の色調変化で目視判定します。

鏡検法では、ピロリ菌の存在診断と病理組織診断をあわせて施行できます。ですが、一方で病理医の経験により判定結果が異なったり、他のラセン菌からH.pyloriを鑑別するのにも限界があるといったことがあります。

内視鏡検査を施行しない方法のうち、尿素呼気試験は感度も特異度も高く、反復して行いうるし、除菌判定法として信頼性が高いという特徴があります。

治療としては、以下のようなものがあります。
一般的に、病院で行われている除菌治療は、抗生物質2剤と、一過性の胃酸過多による副作用を防止するためのプロトンポンプ阻害薬の併用が標準的です。

国内では、プロトンポンプ阻害薬(ランソプラゾールまたはオメプラゾールまたはラベプラゾール)+ クラリスロマイシン + アモキシシリンの3剤併用が健康保険の適用となっています(ただし保険適応は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍がある場合)。

ですが、最近ではクラリスロマイシン耐性菌株が増えてきてしまっているそうです。そこで除菌できていなかったら、メトロニダゾールに変えて再除菌するようです。副作用は、軟便や下痢、薬剤性皮疹などであり一般に軽微であるとされています。

除菌判定は治療薬剤の内服終了後6〜8週の時点で行います。少なくとも培養法、鏡検法、尿素呼気試験の3種類の検査法を用い、すべての検査が陰性であれば陰性とし、その症例を除菌成功例とします。さらに診断精度を上げるため、治療中止後6ヶ月、12ヶ月の時点で除菌判定を追加して行うことが望ましいといわれています。

尿素呼気テストなどの内視鏡による生検組織を必要としない検査もあり、手軽に行えます。慢性胃炎で悩まれている方は、一度、検査されてみてはいかがでしょうか。

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