イギリスのネイサン・ガードナーさんは慢性腎不全のため、臓器の移植手術が必要になりました。ネイサンさんには兄と妹がおり、医者は彼が助かるには腎臓の提供が必要と伝え、「君たちのどちらが手術に挑むかね?」と尋ねました。

すると二人はそれを決めるのにジャンケンをし始めたのです。
Manchester Evening News によると、グーチョキパー(paper, scissors, stone)のじゃんけんで、5回勝負をしたそうです。

兄のマヒューさんは、「俺はジャンケンはずるをして勝つので、ジャンケンする意味はないんだけどね」と言うように、ちゃっかりと妹を下したそうです。

では腎臓提供するのは妹の方かと思いきや、医者が言うには若い女性には将来的な妊娠に影響する可能性があるため、どうしてもという条件のみにしか移植手術は行われないそうなのです。ということでジャンケンに勝った(?)、兄のマヒューさんが提供者となりました。

手術はうまくいき、ネイサンさんは自分の兄を「ヒーロー」であると表現しています。今まで透析を必要としていましたが、これにより一変するとされています。

集中治療室でジャンケンをしていた二人を見つけた医師が、いったい何をしているのかを聞いたことからニュースになったそうです。医者が最初から若い女性は原則避けるべき、と言っておけば済んだ気もしますが…。
(イギリスの兄妹、じゃんけんで負けた方が命を助ける)


慢性腎不全とは、慢性に経過し、かつ不可逆的に進行する腎機能障害です。腎臓の機能が低下し、血中の老廃物が排泄できなくなる状態となります。

そもそも腎臓は、血液を濾過し、余分な老廃物や塩分を取り除く(代謝産物や毒物の排泄)という、重要な役割を担っています。また、体液が過剰になったりすることを防ぎ(体液の恒常性の維持)、赤血球を作るホルモン、エリスロポエチンを作り、全身に酸素を行き渡らせたり、血圧を調整したりする(内分泌器官、あるいは代謝器官としての働き)など、生命を維持する上で欠かすことのできない臓器です。

腎機能障害の進展に伴い、以下のような症状を呈するようになってきます。
ちなみに、Ccrとは、クレアチニンクリアランスのことであり、腎臓の濾過機能をみる有用な指標です。基準値は91〜130mL/分となっています。この値が低下することで以下のような症状がみられるようになります。
/婬’集詐期(Ccr>50ml/分):臨床的には無症状である。
代償性腎不全期(30<Ccr<50ml/分):夜間尿、軽度の貧血、軽度高血圧を示す。
H鸞綵性腎不全期(10<Ccr<30ml/分):全身倦怠感、多尿、中等度の貧血、高血圧がみられる。
で毒症期(Ccr<10ml/分):浮腫、肺水腫、高度貧血、重症の高血圧がみられる。

また、保存期腎不全といって、透析療法を必要とする末期腎不全に至る以前の時期と、透析導入を必要とする末期腎不全に分けることもあります。

上記のケースでは、腎移植を必要としており、末期腎不全状態にあったと考えられます。透析療法とは、以下のようなものを指します。
透析療法とは、血液を半透膜を用いて透析し、水分および溶質を除去して血液の浄化を図る方法です。急性腎不全や慢性腎不全、透析可能な薬物による中毒(医療用薬剤、農薬、工業薬品など)、急性肝不全などの治療として行われます。

大別して、血液を透析器(ダイアライザー)に導き浄化した後に体内に返血する血液透析(HD)と、透析液を腹腔内に注入し腹膜の半透膜機能を利用して透析を行う腹膜透析(PD)とがあります。

血液透析(HD)とは、カテーテルあるいは皮下の動静脈瘻(シャント)のいずれかにより、血液をダイアライザーに導入し、透析液と透析膜を介して、血液中の高窒素血症、水・電解質異常を是正する方法です。

腹膜透析(PD)に比べて、体内から除去したい物質を除く効率は良いですが、不均衡症候群(急激な血液透析により血液透析中あるいは直後に起こる一過性脳症で、頭痛、悪心、嘔吐、意識障害などの症状が出現する)といったものが生じることがあります。

シャント(血液路 blood access)とは、動脈と静脈を直接つなぎ合わせた部分をつくる必要があります。これは、動脈から血液を体外循環回路に導き、十分な血液量を得るためのものです。

腹膜透析(PD)とは、腹腔内に腹膜透析液を注入し、1〜数時間貯留した後、排出するという操作を繰り返す方法です。腹膜透析液の注入、排出には腹膜カテーテルを用います。そのため、シャントは不要となります。

メカニズムとしては、腹腔に貯留された腹膜透析液と腹膜に分布する毛細血管内血液との間で、溶質が濃度差による拡散現象(透析)で除去されます。透析効率は血液透析に比べてはるかに劣り、体液異常の改善に時間がかかります。ですが、それだけに循環系に及ぼす影響も少なく、不均衡症候群も起こりにくいという利点もあります。また血液路を必要とせず,抗凝固療法も不要であるという利点があります。

血液透析の場合、一般的には毎回、最低4時間を必要とします。さらに、腎機能が廃絶している場合は、週に3回程度、透析療法が必要となり、多くの時間を治療に用いなくてはならないという状況になります。

ちなみに、腎移植を行う場合、ドナーとレシピエント間の組織適合試験が行われます。これは、強い同種移植拒絶反応を起こす主要組織適合抗原(MHC抗原)の型を調べる試験で、血清学的試験と混合リンパ球反応(MLR)によって判定されます。また、ABO不適合移植では、赤血球型抗原に対する自然抗体(液性免疫)による激しい拒絶反応の懸念があり、できれば同じタイプの人が望ましいと考えられます。

まだ若いということもあり、できるならば腎移植を受けたいと望む気持ちも分かります。ジャンケンをした、というのは腎移植を受ける側からしてみれば少しショックかもしれませんが、結局はドナーとなってくれるというのだから、仲の良い兄妹だったのではないでしょうか。

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