体が思うように動かなくなる難病のパーキンソン病は、診断に時間がかかり、日常生活で患者が周囲から誤解を受けるなど、理解が進んでいないことが実態調査で分かった。発病の最大因子は「老化」といい、高齢化社会で患者はさらに増える可能性も。治療・介護態勢の充実を求める声が強まっている。

「体の震えがあるので、困るのは電車に乗ったとき。震えた手が近くの女性の体に触れてしまわないかと…。震える手には乗客の注目が集まる。『この手の震えは心の震えなんです』と説明しても、なかなか理解してもらえない」

東京都パーキンソン病友の会会長の清徳保雄さん(65)は、こう訴える。7月、順天堂大学と製薬会社の日本べーリンガーインゲルハイムが、全国パーキンソン病友の会の協力で行った患者・介護者実態調査の結果発表会に、パネリストとして出席した。

「私の場合は体がだるく、足を引きずり、長く座れなくなった。営業の仕事だったが、一度に大勢との名刺交換は手が震えてできなくなった。整骨院、整形外科、内科、心療内科と受診したが、原因不明。神経内科で診断されるまで5年かかった」

同じくパネリストの同会理事、松本好司さん(66)は、こう振り返る。
パーキンソン病は、体の強ばり▽震え▽すくみ足▽意思に関係ない体動−などの運動症状と、抑鬱(よくうつ)▽よだれ▽幻視▽においがしない▽不眠▽頻尿・便秘−など非運動症状がある。

中脳にある神経細胞が遺伝因子や外部からの衝撃などさまざまな原因で死んで少なくなり、神経伝達が不全になるもので、国内の患者は診断されただけで14万5000人に上る。作家の三浦綾子さん、米俳優のマイケル・J・フォックス氏、元ボクサーのモハメド・アリ氏らの発病が知られている。

しかし、診断に至っていない患者も少なくないとみられる。全国友の会の調査では、最初に受診した医療機関でパーキンソン病と診断された人は35%のみ。28%が2カ所目、17%が3カ所目、そして16%が4〜5カ所目でようやく診断されているからだ。

「専門医でないと、手の震えを診てアルコール依存症、足を引きずるのを診て脳梗塞ではないかと診断する場合が多い」と指摘するのは、実態調査結果を発表した同大医学部脳神経内科の服部信孝教授(49)。

パーキンソン病と診断されるまでに患者が受診した診療科は内科が5割、整形外科が4割に上るが、判明率は10〜3%と低い。逆に判明率が7割を超える神経内科を受診した人は4人のうち1人しかいない。

服部教授は「間違った診断で数年間もそのまま過ぎ、私のところに来て初めてパーキンソン病と分かる人が少なくない。それだけ医療現場でも理解が進んでいない」と打ち明ける。

今回の実態調査では、体の強ばり、震え、すくみ足など代表的運動症状が治療薬の内服でかなり改善し、抑鬱症状にもある程度効果があることが分かった。とはいえ、統計では発病は50歳以上で増え始め、60歳を超すと急激に増える。

「高齢化で患者は今後さらに増える可能性がある。パーキンソン病は薬で症状が改善しても、完治することはない。80歳まで生きるとすれば、20年も薬を飲み続けることになる」

実態調査では、家族など介護する側の不安は「患者の病状が今後どうなるかわからないこと」、患者側も「介護者に将来の不安を感じさせていること」がともに最多。さらに、介護側で「患者の体重を支えること」「トイレの手伝いで夜中に起こされる」、患者側で「精神的、肉体的苦しみを分かってもらえない」などの声も多い。

服部教授は「患者や介護者の不安、不満を一つ一つ改善し、介護・治療態勢を整えることが必要」と話している。
(パーキンソン病、進まぬ理解 治療・介護の充実求める声)


パーキンソン病とは、初老期に好発し、錐体外路系(自然に体のバランスをとるといった、人間が無意識に行っている運動を司っている)の障害を示す疾患です。病理学的には、中脳の黒質緻密層のドパミンニューロンが選択的に変性・脱落し、残存神経細胞にLewy(レビィ)小体が出現します。

臨床症状としては、
・安静時振戦
4〜6Hzの規則的なふるえで、パーキンソン病患者の約70%にみられます。振戦は安静時に観察されるのが特徴で、随意動作では抑制されます(動作中は抑制され,しばらく同じ姿勢を保っていると振戦が再現する)。手の振戦の場合、筋緊張に伴う手の姿勢(中手・指基節関節の屈曲と指節間関節の伸展)がもともとあると、振戦が指で丸薬をまるめるような動きにみえます(pill rolling tremorと呼ばれる)。
・筋固縮
他動的に患者の関節を伸展・屈曲して、筋を伸張するときに反射として生じる抵抗で、歯車様固縮(「ガクガクガク」と細かい断続的な抵抗として感じる)の場合が多いです。
・無動
動作の開始に時間がかかったり、開始した動作の速度が遅い現象をいいます。運動麻痺がないのに速い動作ができなかったり、指先の細かな動作の困難、交互反復動作の運動範囲が狭いほうに収れんしたり途中で止まってしまうことがあります。仮面様顔貌や小声、小書字も無動の現れである。そのほか、ボタン掛け、洗面、衣着脱などあらゆる日常生活動作が遅くなります。
・姿勢反射障害
立位の姿勢は前屈位となり、歩幅も小さくなります(小股歩行)。歩き出すと途中から歩調が速くなり、小走りになったり、前方や後方に軽く押されただけで、体勢を立て直せずに突進したり、倒れてしまいます。

などが4大症候と呼ばれます。
さらに自律神経症状(便秘、立ちくらみ、排尿障害)や精神症状(うつ状態、痴呆など)も加わる場合があります。

こうした臨床症状の重症度を簡便に表現する尺度として、Hoehn-Yahr重症度があります。パーキンソニズムの症状が一側にとどまる状態をI度、両側性となった状態をII度、さらに症状が進行し姿勢反射障害(突進現象など)が加わった状態をIII度、さらに症状が進行し日常生活に部分介助が必要な状態をIV度、日常生活すべてに介助が必要な状態をV度と記載します。

必要な治療としては、以下のようなものがあります。
パーキンソン病の治療において基本となるのは、脳内で欠乏したドパミンを補うためにドパミンを補充する、あるいはドパミンのレセプターを刺激する物質の投与となります。

ちなみに、ドパミン自体の血液脳関門(BBB)透過性は不良であるため、ドパミンを直接投与するのではなく、透過性の高いドパミン前駆体であるレボドパによる補充療法を行います。

実際には、初期の症例にはL-ドパによる補充療法や、ドパミンレセプター賦活薬(ブロモクリプチン、ベルゴリド、タリペキソール)、抗コリン薬などの薬物を 1〜2種類投与し、臨床症状の改善をはかります。

他の薬物としては、作用機序としてドパミン放出促進(塩酸アマンタジン)、ドパミン分解酵素阻害(デプレニール)、ノルアドレナリン補充(ノルアドレナリン前駆体)などがあります。

中等症以上の症例には、上記の薬物の併用を基本とします。合併する便秘症や起立性低血圧症、胃腸症状に対しては薬物を適宜投与します。また、外科的治療法として視床や淡蒼球に対する定位脳手術や電極刺激が行われる場合もあります。

こうした治療に際しては、患者さんおよびご家族の病気の理解が大切であり、服薬上の注意点も重要となります。たとえば、L-ドパを長期服用している患者さんが、急激に減量または中止した場合、高熱や意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック状態などの悪性症候群が現れる場合があり、予防が大切です。

また、Lドパの薬効時間が短縮して服薬時間と連動する形で生じる日内症状変動(wearing-off現象)やジスキネジアなどの運動合併症、精神症状(幻覚・妄想など)といった副作用なども起こりえます。

こうしたLドパ長期治療に伴う運動合併症(wearing-off現象やジスキネジアなど)の防止の立場から、ドパミン作動薬を用いた治療の導入や、治療早期からのLドパとドパミン作動薬の併用療法を推奨する意見も多くなっています。

三浦綾子さん、マイケル・J・フォックスさん、モハメド・アリさんらの発病で有名にはなったかと思われますが、それでも患者さんへの理解が進んでいないという現状が、上記では綴られています。ぜひとも、患者さんへのご理解を深めていただきたいと思われます。

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