読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
内視鏡検査で、胃から腸への部分に「腺腫」という腫瘍ができていることがわかりました。良性ですが、悪性に変化することもあると聞きました。どうしたらいいでしょう。(54歳女性)

この相談に対して、杏林大病院消化器内科教授である高橋信一先生は、以下のようにお答えになっています。
胃の壁が瘤のように盛り上がったものを腺腫と呼びます。いろいろな胃液を出す分泌腺細胞が、何らかの理由で増殖し、盛り上がってできるものです。痛みなどの自覚症状はなく、多くは検診などで偶然に見つかります。

ご相談にあるとおり、腺腫の中には悪性に変化するものがあります。大きなものは、腺腫の内側にすでにがんが隠れていることもあります。

そこで、定期的に胃の内視鏡検査を受けて、腺腫の形や大きさの変化を観察することが大切です。場合によっては、まち針の頭ほどの小さな胃粘膜を採取する「生検」を行い、病理診断をします。

腺腫が大きくなったり、表面が凸凹したり、赤くなったりといった変化が見られた場合は、がんの疑いが出てきます。

たとえ、病理診断の結果が良性でも、腺腫の内側にがんがあることもあります。腺腫が大きくなるなど、変化が見られた場合は、内視鏡を使って、腺腫を取り除く手術をします。

胃ポリープには、組織学的に過形成性ポリープ(腺窩上皮性、幽門腺性、胃底腺性)と胃腺腫に分けられます。

胃腺腫とは、胃の上皮性良性腫瘍で、しばしばポリープの形態をとります。ですが、ごく稀には陥凹性病変の形態をとることもある。高度な萎縮性胃炎を背景に発生するといわれています。

10%前後の例は経過中に癌化をきたすことに加え、同時性・異時性に他部位に胃癌を合併することが多いということを考えると、定期的な内視鏡検査が必要であるといえるでしょう。

腺腫の一部に癌を合併することがあり、この場合は腺腫内癌といいます。特に、丈の高い例、経過中に増大する例、20mmを超える例,組織で高度異型成分が認められる例などは癌化の可能性が高いため、積極的に内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)が行われます。

治療としては、以下のようなものがあります。
手術は通常、1週間程度の入院で済みます。切り取った跡は、粘膜がえぐられて「潰瘍」になりますが、8週間程度、薬を飲み続ければ治ります。

中には毎年、胃の内視鏡検査を受けるのが面倒だと言って、最初から切除を希望される方もいます。

ご不明の点がある場合は、主治医に相談し、納得のいくまで治療方針などについて詳しく話し合うことが大切です。

内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)とは、転移のない消化管表在癌に対する局所摘除手技です。内視鏡を使って、腺腫を取り除く手術です。

合併症としては、消化管の出血と穿孔が最も注意すべきものとして挙げられます。偶発症が起きた場合、止血鉗子・APCなどの内視鏡的止血術やクリップによる内視鏡的穿孔部閉鎖術などを行います。

こうした合併症が起こる可能性を念頭に置きながら、手術を受けられるかどうか、担当医と検討することが重要であると思われます。

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