以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

・1例目
10年前のある日、自宅1階で昼寝をしていたタクシー運転手のK・Tさん(70)。一度目を覚ました彼は、まだ寝たりない気がして2階の寝室へと向かった時、突然、脳梗塞に襲われました。具体的には、以下のような症状が現れていました。
1)右半身が動かない
突然、布団の上に倒れ込んでしまい、自分の身に何が起きたのか状況を把握できずにいました。身を起こそうとしてもなぜか右半身に全く力が入らず、起き上がることが出来ません。
2)うめき声しか出ない
とにかく1階でミシンをかけている妻を呼ぶしかないと思いますが、出てくるのはうめき声ばかりで、言葉を発することができませんでした。

K・Tさんは、動く左の手足で這いつくばるようにして、ふすまの方へ向かいました。何とかふすまに到達すると、思い切り叩いて気づかせようとしました。ですが、あいにくミシン掛けをしていた奥さんは気づくことができず、何度目かにしてようやく気づいてもらえました。

・2例目
物流関係の会社に勤めるS・Mさん(66)に悲劇が訪れたのは、今年5月のこと。いつものように休憩時間を終え、再び作業に戻ったその瞬間、S・Mさんは脳梗塞を発症したのです。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)右腕の感覚がなくなる
右腕の感覚がなくなり、つかんで持ち上げてもダラリと垂れ下がるばかりでした。
2)うめき声しか出ない
目の前にいる同僚に助けようとしても唸るような声が漏れるだけで、ふざけていると思われ、誰も真剣に受け取ってくれませんでした。
3)右足を引きずる
動きづらくなった右足を引きずり、ようやく同僚の前に到達したところ、意識を失って倒れてしまいました。

すぐさま病院へと運ばれたS・Mさん。こうして発症から2時間後、緊急治療が行われ、彼は無事生還を果たしました。

・3例目
妻と二人、夫婦水入らずで暮らしているK・Kさん(50)。その日、妻は友人の家で外泊することになっていたため、K・Kさんは久しぶりの一人の時間をのんびりと過ごしていました。夜中の3時過ぎ、尿意を催し、目を覚ましたK・Kさん。トイレに行こうとしたその時、脳梗塞を発症してしまいました。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)右肩がズッシリと重い
右肩がズッシリと重くなり、動かせなくなるという異様な感覚に襲われました。
2)右半身が完全にマヒ
とにかく立ち上がろうとしますが、右半身が完全にマヒして、一歩も動くことが出来ませんでした。
3)電話を掛けられない
自由の利く左手で救急車を呼ぶことにしましたが、何度試しても、電話がつながらず、焦れば焦るほど指がうまく動きません。実はこの時、K・Kさんは、脳梗塞による意識障害に陥っていたと考えられます。さらに、番号を押したのは、利き手でない左手であり、自分では正しく押していたつもりでも、実際には間違っていた可能性が高いと考えられます。

発信履歴によって妻にかけた電話は、無情にも留守番電話サービスに接続されます。この時間では妻が起きているはずもありませんでした。ですが、外泊先で奥さんは着信履歴に気づき、いぶかしがって電話をしてみると、「寒い…寒い…」とつぶやく声が聞こえてきました。夫のただならぬ様子に、奥さんはすぐさま救急車を向かわせました。こうして発症から6時間後の朝9時、緊急治療が施され、K・Kさんは文字通り九死に一生を得ました。

これらの症例にみられる脳梗塞とは、脳動脈閉塞などによる虚血により、脳組織が不可逆的な変化(壊死)を起こした状態を指します。

脳は虚血に最も弱い臓器の1つであり、血流に富んだ組織(約50ml/100g脳/分)です。脳代謝の面からみると、代謝が50%以下になると脳神経機能が障害され、15%以下になると梗塞に陥ってしまうと考えられています。

梗塞が起こる成因は、以下のように分類されます。
.▲謄蹇璽犒貔鮴脳梗塞
動脈硬化性の病変(アテローム)が大きくなり、その部分に血栓を形成し動脈閉塞を来したり、動脈硬化性病変部分で形成された血栓やアテロームの一部が、剥離してその動脈の末梢部分を閉塞したりといったことが考えられる。ほかに、血圧低下などを起こした際に、その動脈硬化部分より遠位部の血流障害を来す場合などがある。
⊃憾鏡脳塞栓
心疾患において心腔内に形成された血栓が脳動脈に達し、脳動脈の急性の閉塞を来すものである。
ラクナ梗塞
脳深部の穿通枝動脈の閉塞によって生じるもので、一般に脳細小動脈硬化が原因と考えられている。

梗塞によって、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。

麻痺では、以下のようなことが起こります。
多い症状は片麻痺、半身の感覚障害、構音障害、失語、半側空間無視などがあります。上記の症例では全て右半身麻痺がみられており、左大脳半球の梗塞が起こっていると考えられます。

片麻痺とは、運動の障害の一種であり、もっとも頻度の高い症状が麻痺です。脳梗塞では中大脳動脈の閉塞によって前頭葉の運動中枢が壊死するか、脳幹の梗塞で錐体路が壊死するかで発症することが多いようです。

多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が脱力または筋力低下におちいる片麻痺の形です。ただ、脳幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺を来すこともあります。

具体的な部位としては、一側の内包(皮質下から大脳皮質への入力線維と、大脳皮質から皮質下への出力線維が走る部分)、特にその後部は梗塞や出血で障害を受けやすく、ここが障害されることで反対側の手や足、体幹、下部顔面、舌などが侵されることがありますが、これを内包型片麻痺といいます。

内包以外でも、大脳皮質運動野、皮質下白質、大脳脚、橋底部、延髄腹側、などが障害されることで片麻痺が出現することがあります。閉塞血管としては、前大脳動脈(下肢に強い片麻痺)、中大脳動脈、椎骨・脳底動脈などの閉塞によって起こります。

片麻痺が起こった後、重要となるのがリハビリです。最近では脳梗塞発症後、すぐにリハビリを開始するところも増えてきてはいるようで、早期のリハビリにより機能回復が早まったり、廃用症候群を防ぐ役割もあります(もちろん、急性期の脳の合併症としての脳浮腫や内科的合併症には十分に配慮すべきですが)。

脳卒中においては、一般に上肢の機能的予後は不良で、実用性にまで回復する患者は約2割にとどまるといいますが、歩行に関しては7〜8割が最終的には何らかの形で可能となるそうです。

実質的なリハビリは、ベッド上での座位訓練、さらに座位耐久性訓練、寝返り訓練および起き上がり訓練などの基本訓練などとともに、起立、歩行訓練へと進めていきます。発症から4週までのリハアプローチにより、12週後の歩行獲得レベルの推定が可能であるといわれています。

上記のケースでは、発症後、どのように救助を待つかといったことが問題になっていました。特に独居のご高齢者の方は、日頃からどのように、誰に連絡をとることが重要か、などといったことを考えておくことも必要かと思われます。

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