ネパールで小腸を摘出し東北大学病院(仙台市青葉区)で治療を受けている同国の女児、アーバ・ドゥワディちゃん(8)が15日、同病院を退院した。今後は仙台市内の自宅で栄養分を静脈から体内に入れる治療などを続ける。

アーバちゃんは来日時に15キロしかなかった体重が約10キロ増加。この日は感謝の気持ちを込めて書いた手紙を医師や看護師、入院中にできた友達に手渡し、ふっくらした顔に笑みを浮かべ、しっかりした日本語で「ありがとうございました」とあいさつした。

昨夏に腸捻転を発症したアーバちゃんは、小腸のほぼすべてを摘出。現地医師に「治療できない」と宣告されたが、助けを求め同年9月に来日した。治療費や滞在費がないアーバちゃん一家のため医師らが基金を設立。これまでに2400万円を超える善意が集まっている。

しかし、現在必要な治療はネパールで行えず、帰国のめどはたっていない。両親は日本で就労できないため、今後も基金で生活せざるを得ない状況が続く。

治療を担当する和田基講師は「いろいろ模索しながら、なんとかネパールへ帰国できるよう、全力を尽くしたい」と話している。
(小腸摘出のネパール少女が退院 8歳のアーバちゃん)


腸捻転とは、腸管がその腸間膜を軸として時計方向にあるいは逆方向に回転するものです。発生部位はS状結腸が最も多く、そのほか小腸、回盲部にもみられることがあります。

S状結腸部に多く、小腸捻転症は稀といわれています。ですが、いったん発症したならば重篤で、低血圧やショック、頻脈などの症状を認めることもあります。

発症には、
・総腸間膜症のような腸間膜が過長で腸管の可動性が大きい状態
・瘢痕性収縮や癒着による腸管係蹄脚部の接近、あるいは癒着などにより腸の一部が固定された状態
・慢性便秘
・腸管の異常蠕動

などが関係するといわれているといわれています。

主として中年ないし高齢者に発生するといわれ、症状は(複雑性イレウスの一種であるので)、急激な腹痛にはじまり、腹満、嘔気、嘔吐などイレウス症状を呈します。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
必要な検査としては、まず腹部X線があります。小腸のループのはしご様の連なりが典型的な所見ですが、これは右側結腸の閉塞性病変でも起こり得ます。腸管の鏡面像は立位のX線で確認できる。膨満した腸管は上部空腸の閉塞では認められないことが多いです。

単純性イレウス(血行障害を伴わない物理的閉塞・狭窄による腸閉塞)の状態では、仰臥位で小腸拡張像、立位での鏡面像(ニボー)が認められます。絞扼性イレウス(血行障害を伴う物理的閉塞・狭窄による腸閉塞)では無ガスとなり見逃されやすいので注意が必要です。

特に、小腸捻転症では、X線所見では通常のイレウスでみられる小腸ガス像や、鏡面形成などが現れないものが多く、診断に苦慮する場合があるので注意が必要となります。

他にも、腹部エコーにて腸管内容物の性状と動き、腸管内腔の拡張、腸管壁の浮腫や壁構造の破壊、腹腔内貯留液の有無などを確認することは絞扼性イレウスの診断上有用です。腹部CTでは、閉塞部の位置、性状、壁外性の原因、腫瘍の有無、腹水の有無、腸間膜血流の確認などが可能になります。

治療は整復が基本で、必要により癒着剥離、腸切除が行われます。血行障害を伴わない単純性イレウスの場合は、絶飲食の上、経鼻胃管やイレウス管による胃・腸管の減圧を行い、腸閉塞では脱水を伴うため細胞外液を投与する必要があります。腎機能が正常であれば、適正尿量が得られるまで大量に負荷します。

上記のようなケースでは、絞扼性イレウスに陥っていると考えられ、腸切除、腸管吻合といった手術が必要になります。アーバちゃんの場合、小腸を全摘出する必要がありました。

小腸は、消化管の一部で消化と吸収を行います。胃と大腸の間にあり、十二指腸(約30cm)、空腸(約250cm)、回腸(約350cm)からなり、全長は6m以上に達します。肝臓からの胆汁や、膵臓からの酵素は十二指腸へ分泌され、消化反応の大部分はここで行われます。上記の通り、小腸を摘出した場合、患者は口から摂取した食物を消化・吸収できず栄養失調に陥ってしまいます。

人が経口摂取により生命を維持するのに必要な小腸は、小児では30cm、成人では50cm以上が必要とされています。これらより短い場合、十分な消化吸収を果たせず、栄養障害、発育障害により長期生存は困難とのことです。

アーバちゃんは命を繋ぐため、中心静脈栄養が必要となりました。栄養素を静脈から直接注入する方法を、経静脈栄養法といいます。経静脈栄養法には、末梢静脈栄養法と経中心静脈栄養法intravenous hyperalimentation(IVH)とがあります。

小腸の移植手術を当初は考えていたようですが、それも難しい状況にあるようです。無事、アーバちゃんのご家族が暮らせていけるよう、祈っております。

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